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「光り輝くステージの上で」

「やった! やりましたわアリア様ー!」


 万雷の拍手の中、真っ先に駆けつけて来てくれたのはロレッタ嬢だ。


「わたし、わたし信じておりました……信じて……本当に……ほんどうによがっだああー……」


 僕に抱きつくなり目からボロボロと涙を流し、あとは言葉にならない言葉をひたすらに発している。


「〆◇£¢§☆◎○! §★~◇&£¢≦! @▽%&¥¢〆≧!」


 ……いや本当にわけがわからないが、僕のことを祝福してくれるというその気持ちだけは十分伝わってきた。


「ありがとう、ロレッタ嬢」


 ロレッタ嬢の頭を撫でながら礼を述べているところへ、レザードがやって来た。


「やったな、信じていたぞ」


 ゆっくりと歩いて来たレザードは一見冷静そうに見えるが、手がそわそわと動いているところからしても、実は相当に嬉しいのだろうということが窺える。

 まあこいつの場合は第一王子という公的な立場があるし、あまり公衆の面前ではしゃぐわけにもいかないのだろうが。 


「さ、アリア嬢。堂々と胸を張りたまえ。皆の祝福に答えるのも勝者の務めだ」


「勝者の務め……」


 レザードに促されるまま、僕は観客席に向かって手を振った。


 すると、今までのそれに倍するような歓声が上がり、会場内に反響し、天井から振り落ちて来た。

 拍手や口笛、吹奏楽部による演奏の音も合わさって、もう耳がおかしくなりそうだ。


「……っ」 


 僕は一瞬、息を呑んだ。


 皆の輝く瞳、忙しなく開閉する口、大きく打ち合わされる手、それらがすべて僕に向けられている。

 発せられた音の波が、怒濤のように押し寄せてくる。

 ステージを揺らし、鼓膜を揺らし、皮膚にまでピリつく感覚がある。


 特段、僕が何かをしたわけではない。

 凄まじい技術を見せつけたわけでも、知識を披露したわけでもない。

 皆の印象に残るように振る舞い、衣装を身にまとってステージに立っただけ。

 にも関わらず……。


「どうして……こんなに……?」


 驚く僕の耳元で、レザードが囁いた。


「君が凜々しく、美しいからだ。君自身はそれをたいしたことではないと思っているのかもしれないが、とんでもない。多くの人間が望んでも得られない特別を、君は持っているんだ。人に抜きん出て特別であることは、時にこうして感動を呼ぶんだ」


「僕が……特別……?」


 そう言われても、はいそうですかとすぐには納得出来ない。

 だけど、嬉しさがあるのは事実だ。


 僕がここにいるだけで喜んでくれる人がいる、こうして感動してくれる人がいる。

 それは今まで感じたことの無い充足感を、僕に与えてくれた。


「おーおーおー、すっげえなこれは」


「当然でしょう。由緒ある王立学園の、女性としては最も栄誉ある称号ですもの」 


 そうこうするうちに、アレクとディアナが連れだってやって来た。


「やあ、君たちも来てくれたのか」


 ふたりは口々に祝福の言葉を述べると……。


「師匠の晴れ舞台だからな。ま、こんな場所より師匠には決闘場のほうが似合ってると思うがね」


「バカね。それじゃ台無しでしょう。あ、ごめんなさいねアリア様。本当にこいつ、第二王子とは思えないほどガサツなので……」


 いつものようにいがみ合いを始めるのを見ていると、なんだろうホッとするものがある。


「ありがとう。たしかに僕も、そっちのほうが似合うとは思うけどね」


 今し方覚えた感動はさておき、僕はお礼の言葉を返した。

 そしてふと、疑問に思った。

  

「……おかしいな、レイミアがいない」


 こういう事態に真っ先に駆けつけてくれそうな妹の姿が無い。

 たしか途中までは観客席後方のお父様たちの傍にいて、小さな旗みたいなのを振って応援してくれていたはずなのだが……。


「……ううむ、人が多すぎてちょっとここからでは探せないか……」


 立ち上がって拍手する人たちの中に埋もれてしまったのだろうかと、ちょっと残念に思っていると……。

 

「──あり得ませんわ!」


 鼓膜を震わせるほどの大きな声でそう叫んだのは、パーシアだ。

 茫然自失の状態から立ち直ったのだろう、髪の毛を逆立てながら僕をにらみつけて来る。

 

「この女……何か汚い手を使ったんでしょう! 買収とか色仕掛けとかそういう……! それとも取り巻きのコネを使って裏工作でもしたの!? じゃないとこんなのあり得ないわ! この卑怯者! 悪役令嬢! チーター!」


 さんざんに僕を罵倒するパーシア。


「おい、君。失礼じゃ無いか。そりゃあ負けたのは悔しいだろうが、淑女らしく勝者を讃えるべきで……」


「うるさい黙れ!」


 割って入ろうとしたレザードを肩で押しのけると、パーシアは身につけていた白い手袋を片方脱ぐいで、そのまま僕に向かって投げつけて来た。 

 

「君……本気か?」


 手袋を空中でキャッチした僕は、いよいよこの時が来たかと息を呑んだ。


「こんなこと、冗談で出来るわけないでしょ!」

 

 パーシアは叫ぶと、まっすぐに僕を指差してきた。


「アリア・デア・ストレイド! このわたしと決闘しなさい!」

おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!

西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!


さすがにパーシア、一筋縄ではいかない駄々っ子ね。


というわけで、ふたりの決闘の行方が気になる方は、下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いしますね!

ブクマや感想もお待ちしておりますわ!

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、パーシアさん自分こそ散々な汚い手や裏工作をして来たでしょう。言われる筋合いはないだと思う。
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