「応援」
たしかにロレッタ嬢は勉強が出来る娘だ。
多少高度な内容であっても授業には余裕でついていくし、成績は入学時から学年5位を下回ったことがない。
「わたしには本しか友達がいませでしたからね……。勉強は必然、得意になるわけですよ……。ふふ、ふふふふ……」とは、悲しき本人談。
ディアナも学年上位ではあるものの、直接対決ならばロレッタ嬢に分があるだろう。
そういう意味では決闘でダメを押すという判断も間違ってはいない。
「わたしが勝って、ディアナを推薦人の座から引きずり下ろし、パーシア派にとどめを刺すの。そうすればわたしは胸を張ってアリア様に……」
ぶつぶつ、ぶつぶつ。
例によって例の如くのつぶやきモードに入ったロレッタ嬢に一抹の不安を感じつつも、僕に出来ることは応援しかないのだった。
「しかし応援といってもなあ……いったい何をどうしたらいいものか……」
そもそも友達だって、こちらの世界へ来るまではいなかった僕だ。
話すあるいは普通に日常を過ごすといった以外のつき合い方は、ちょっとレベルが高すぎる。
「応援……応援ねえ……」
イメージとしては学ランを着た応援団とか、ポンポンを持ったチアガールとか……なんて、さすがにそんなことが僕に出来るわけもないし……。
うんうんと悩む僕にアドバイスをくれたのは、その道では定評のあるレイミア氏だ。
「応援? そんなの簡単だよっ。ロレッタの隣でがんばれーっって言えばいいのっ。そしたらきっと、ロレッタもぐわーんってなって、うおおおーってなって、やる気出るよっ」
ぐわーん、とかうおおおーっとかいうのはよくわからないが、そういうものらしい。
ならばとばかりに、僕は実践することにした。
休み時間に学園の図書館で勉強に励むロレッタ嬢の耳元で──
「が、頑張れー……」と、ボソリと。
「…………っ!!!?」
ロレッタ嬢は弾かれたように僕の方を見たかと思うと、次の瞬間ブバッと大量の鮮血を鼻から噴き出した。
「ちょ、え……は、鼻血……っ?」
あまりのことに驚いた僕が、慌ててハンカチで鼻血を拭ってやると、顔を真っ赤に上気させたロレッタ嬢が「えへへへへー……あじがどうございまずうううー……おかげでやる気が出まじだあああー……」と夢見心地な様子でつぶやいた。
「う、うん。力になれたのなら良かったが……本当に大丈夫か?」
とろとろに蕩けた表情ながらもペンを持つロレッタ嬢の手は高速で動き、複雑な数式をノートに書いていく。
「これでディアナなんか一蹴でずうううー……」
「おう……うん。と、ともかく良かった」
秋季テストに向けての追い込み期間を、僕らはそんな風に過ごしていた。
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
ディアナとの決闘へ向けて励むロレッタ。
な回ね。
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