「初めての告白」
「ふうー……」
女医さんが帰った後、僕は改めてベッドに横になった。
見事な細工のされた天蓋を下から見上げながら、呆然とつぶやいた。
「けっこうグイグイ来る人だったな……」
昨日僕に起こったことを、それ以前の人間関係までも含めて根掘り葉掘り訊ねられた。
一瞬黙秘しようかとも思ったけど、症状が緩和出来るというのを信じて話してみた。
もちろん相手が相手だから、特定はされぬように気を使ったけど……。
「でもたしかに、少しは軽くなったかな……」
僕はそっと胸に手を当てた。
ずきずきとやまなかった痛みが、かなり薄くなっている。
熱も下がり、もう普通に歩き回っても良さそうだ。
「はあー……良かった」
初めての経験だった。
熱を出したり、正体不明の痛みに悩まされたり、それを皆に心配されたり。
初めて……。
初めて……。
「初めて……言われた……」
僕はそっとつぶやいた。
事の発端となったのはあいつ。レザードだ。
昨日、アレクとの決闘に勝ったあの男は僕に向かってこう言ったのだ。
──なあ、アリア嬢。今後、俺がさらに強くなって、もし君に勝てるようなことがあったなら。なあ、その時は……俺と、結婚してくれないか。
「結婚とか……真顔であんな……。もちろん冗談なんだろうけど……あ、そうか。そうだ、冗談なんだ。あいつ、他の女にも同じことを言ってるんだ。まったく、チャラい奴め。相手が信じたらどうするんだ」
しまった。
あまりそのことを考えないようにと言われていたのに、考えてしまった。
そして、一度考え出すと止まらなくて……。
「相手が僕だったから良かったようなものの、普通の女子なら失神しかねないところだぞ? 一国の王子に愛されて、お姫様になって……そういうのって、たぶん皆の夢なんだろう? ホントに、まったく……」
カッと顔が熱くなり──
「まあもちろん、僕には効かないけどな。なにせ僕だし。そういうのとは無縁に生きてきて……たぶんこれからも関係無くて……。ロレッタ嬢やベスや、レイミアが成長して大人になって結婚していくのを傍で見送るだけで……。最終的にはひとりになって……この家でお婆ちゃんになって……それで……それで全然良くて……」
──ズキンと胸が痛んだ。
今までで最大級の痛みが、ズキンズキンと連続して走った。
レザードの顔が、一瞬脳裏に浮かんだ。
第一印象は、尊大でいけ好かない男──
実際に接してみるとわかる、純粋でひたむきな男──
女性との浮名は数あれど、特定の相手はいなくて──
「…………っ!!!?」
あり得ない想像に、思わず息を呑んだ。
「バカ言うな、冗談に決まってる……。そんなこと、あり得ない……」
何度も何度も、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「レザードが僕とだなんて……そんなこと……。あるわけがないだろう……」
唇を噛んで、僕はひたすら痛みに耐えていた。
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
あらあら、けっこうレザードのことを気にしてるみたいだけど……?
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