「強くなる理由」
「……必要な戦い、だと?」
「ああ」
問い返す僕に、レザードは真剣な表情で答えた。
「決闘というのは、互いの誇りを賭けて行われるものだ。勝てばすべてを得て、負ければすべてを失う」
「その通りだ。だが、今回のこれは公正ではない。見ろ、周りはすべて敵。君の力が存分に発揮出来るような状況では……」
「知っている。それでもなお、だ」
肩に触れて止めようとした僕の手を、レザードは振り払った。
「それでも俺は負けない。そのために今までやって来たんだ」
「今まで……」
その言葉の意味するところを知っている。
レザードは、来る日も来る日も僕と戦闘訓練を行って来た。
普通の人間なら一時間ともたずに逃げ出すような軍隊顔負けの訓練を、打ち身擦り傷を友として。
第一王子として強くなるなめに。
いずれ王国を背負って立つ身として、皆の見本となるように。
だが、それだけでもなかったのだ。
すぐ後ろに迫っている義弟との、避けようがない直接対決のためにも。
「その上でなお聞こう。なあアリア嬢、君にそこまで心配されるほどに、俺は弱いのか?」
「……」
レザードは強くなった。
僕には及ばないにしても、他の同世代の人間と戦って負けるとは思えない。
アレクの実力のほどは知らないが、体育の時間に見た限りではおそらく……。
「ダメですよアリア様。殿方同士のプライドを賭けた戦いを、レディが邪魔しては」
僕とレザードの会話に割り込んで来たのは、誰あろうパーシアだ。
「ささ、わたしたちはこちらで見ていましょう。ふたりの自由意思を尊重してあげなくては」
僕の手を引き、グイグイ、グイグイ。
その表情には隠し切れない愉悦が浮かんでいる。
「むむむ……」
さてどうしようと、僕は悩んだ。
取り巻きを叩き潰すこと自体は簡単だが、問題はこのパーシアだ。
今こうして手を触れていても、その身のこなしが尋常でないことはわかる。
見た目とは裏腹の、高度な戦闘訓練を受けただろうことが容易に想像できる。
排除しようとするならばそれなりの覚悟が必要になる。これだけの人の、しかもパーシア派の目の前で、さすがにそれはまずい。
だが、もしこの戦いでレザードが負けてしまったら……。
ゲーム知識を有するパーシアにつけ込まれ、心を奪われたら……。
「アリア嬢」
悩んでいるところへ、レザードが声をかけてきた。
澄み切ったサファイアブルーの瞳で僕を見つめ──
「俺を信じろ」
短く、力強く断言した。
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
レザード、男の意地。
な回ね。
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