「なんでもありなら」
「ああー……疲れた。肩こった」
「ええー? そーお? レイミアは楽しかったけどなあーっ」
「そりゃ君はな……言うならおやつ付きのアトラクションを楽しんだようなものだし……」
精神的疲労で肩こりを生じた僕と、まだまだ元気いっぱいのレイミア。
さて帰ろうとパーシア家を出て曲がり角を曲がった瞬間、なんと当の本人に出くわした。
「……あなた、どうしてここにいるのよっ」
買い物帰りなのだろう、籐製のかごを肘に掛け簡素な服装に身を包んだパーシアが、普段の天真爛漫な少女というイメージからは想像もつかない剣幕で僕に詰め寄ってきた。
そしてすぐに、ある可能性に気づいたのだろう、ハッとした表情になった。
「まさか、お母様に何かしたんじゃないでしょうね……っ?」
突然の展開についていけないレイミアが、「え? え? どうしたの?」と困惑しながら僕とパーシアを交互に見つめている。
「人が留守にしている隙を突いて……まさか……っ?」
「……ふん、自分の家族のこととなると、そんな表情も出来るのだな」
パーシアの恐れを、僕は鼻で笑った。
「はあっ? おかしなこと言って誤魔化さないで、きちんと答えなさいよっ!」
「安心しろ。何もしていない。ただ紅茶とお菓子をご馳走になっただけだ」
「そんなこと信じられるわけないでしょう! だいたいあなた、人の家へ何の用があって……っ」
「信じるも信じないも勝手だが、元はと言えば……」
「ダメだよ! ダメ! ケンカはダーメ!」
僕らのただならぬ様子に気づいたレイミアが、険しい顔で割って入ってきた。
とにかく距離を離そうと、僕をぐいぐい押して来た。
「……っ」
パーシアはレイミアの膝や掌の絆創膏を見ると、さっと顔を青ざめさせた。
「……ふん、なんの用かはわかったようだな」
「し、知らないわっ。わたしはちょっと脅かしたら面白いかもねって言っただけで、何もそこまでしろだなんて……っ」
焦りのあまりだろういらぬことを白状しかけたパーシアは、ハッと口をつぐんだ。
「ふん、語るに落ちるとはこのことだな」
なるほどなるほど、やったのはあくまで取り巻きであり、しかも別に指示はしていないと?
だが、そんなことは関係ない。
レイミアが傷ついたのは事実であり、それがパーシアの責任であることに違いはない。
「おい、パーシア」
レイミアを引きずるように歩くと、僕はパーシアの耳元で囁いた。
「この場はレイミアに免じて見逃してやる。だが、二度はないぞ。もし今後、君か君の仲間がレイミアを傷つけるようなことがあったならば、その時は容赦しない。僕がこの手で殺してやる」
「な、なんですってっ!?」
僕の言葉に、パーシアは真っ青になって飛び退いた。
ま、当然だろう。
パーシアの中にいるのが何者かは知らないが、面と向かって殺すと脅されたことなどないだろうからな。
「お姉さまっ、お姉さまっ、もう行こうっ!」
僕らの関係を修復不可能と見たのだろう、レイミアが僕の手をぐいぐい引っ張ってパーシアから引き離そうとした。
「パーシア」
別れ際に、僕はもう一度だけ念を押した。
「間違うなよ? 君の前世が何者で、どの程度このゲーム事情に精通しているかは知らないが、何でもありになったら、けっきょく勝つのは僕なんだからな?」
「アリア……あなたはいったい……?」
「んもうーっ、ダメだったらーっ!」
んぎぎぎぎとばかりに手を引くレイミアに連れられて、僕はその場を後にした。
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
あらまあ、実に殺し屋らしい啖呵を切ったアリアだけど……。
大丈夫かしら? レイミアの前でそんなこと言って?
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