表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/93

「初登校」

「ほらほらお姉さま、学園だよっ! ひゃああぁーっ、でっかいねーっ!?」


 正門前で馬車から降りたレイミアが、王立学園の巨大さに目をまん丸くして驚いている。


「……君は本当に、人生楽しそうでいいよな」


「うんっ、楽しいよっ! お姉さまと一緒にこんなおっきな学園に通えて、もう最っ高っ!」


「……まあ、君にとっては巨大な遊戯施設みたいなものなんだろうがな」


 王立学園はヴァリアント王家出資で、6歳から16歳までのフェザーン近郊に住まう裕福な家庭の子供たちが通う教育施設だ。

 敷地は東京ドーム換算にして6個分もあり、中には複数の球技場・格技場・魔法訓練施設に乗馬施設に、なんとダンスホールやオペラハウスまで存在する。


 幼少の頃から礼儀作法を学んで来ただけに生徒たちの多くは気品があり礼儀正しく、僕のように野育ちで学の無い人間には敷居が高い。

 しかも僕の場合は前任者……というか、元のアリアがいかにも悪役令嬢然とした振る舞いをしていたというディスアドバンテージがあるのでなおさらやりづらい。


 軽蔑の眼差し、嫌悪に憎悪。

 圧倒的な場違い感に胃を痛めていると……。

 

「アリア嬢、待っていたぞ」


「アリア様、ご機嫌よう」


 正門前で立ち尽くしている僕を見つけたのだろう、レザードとロレッタ嬢が笑顔を浮かべてやって来た。


「やあ、おはようふたりとも……って、え……?」


 合流すると、ふたりはいきなり僕の肘を捕まえた。


「ど、どうしたんだふたりとも?」


「君が逃げないようにだよ、アリア嬢」


「そうそう、普段はあんなに凛々しいのに、こういったことに関してはてんで弱気なんですから、アリア様は」


「それはそうだが、しかしこの体勢は……」


「これも君が、俺たちの側にいるというアピールなんだ。大人しくしろ」


「そうそう、わたしたちの大切なお友達なのだと、皆さんに見せつけてやらなくてはっ」


「わーっ。お姉さま、犯罪がバレて捕まった犯人みたいっ。楽しそーっ」


 さすがは探偵志願(?)。

 レイミアは目を輝かせて僕のあとを追って来る。


「次レイミアも、レイミアもやるーっ」


「あら、ダメですよレイミアさん。この手を離したらアリア様が逃げてしまいます」


「ごっこ遊びじゃないんだが……まあいい。レイミアにはあとでやってやるから、今は大人しくしていろ」


「はあああーいっ」


 素直に返事をしたレイミアは肩掛けカバンからペンとメモ帳を取り出すと、記者の真似なのだろうインタビューをしてきた。


「犯人のアリアお姉さま、今のお気持ちはどうですか? 楽しいんですかっ? どれぐらい楽しいーんですかっ?」


「いや全然楽しくはないが……というかさすがに恥ずかしいので今すぐ離して欲しいんだが……」


「犯行の原因は掃除がしたかったからですか? それにしても屋敷中のホウキを盗むのはやりすぎでしたねえーっ」


「僕の罪は窃盗なのか……」


 わあきゃあと騒ぎながら僕らは歩みを進め、正面玄関まで連なるサクラ色のアーチをくぐっていく。

 足元には玉砂利が敷かれ、一歩進むごとに小気味よい音が耳に響く。


 入学式と新学年を兼ねているため、辺りには小さな子供や親御さんの姿が目立つ。

 学園側のスタッフの数もいつもより多いし、春休み期間中の出来事を話す生徒たちの輪がそこここにあって、実にかしましい。

 


 そんな中──



 ──まあ、ご覧になって。あれってレザード殿下とロレッタ嬢と……。

 ──真ん中にいるのってアリア男爵令嬢でしょ? なんであの三人が一緒に……。

 ──はあ? 第一王子と公爵令嬢を付き従えてるとか、無敵じゃん。


 僕らの姿は、嫌でも目立った。


 ──アリア様って黒い噂があったけど……。

 ──あの人、性格悪いもんね。うちのお母様は不良って言ってた。絶対つき合うなって。

 ──そういや知ってる? 蛮族の姫君の噂……。


 レザードとロレッタ嬢の庇護下に、あろうことかこの僕がいる。

 そのインパクトは強く、多くの人間の嫉妬心を刺激したようだった。


「どいつもこいつも家格や噂に流されて、アリア嬢の本質を見ていない……実にくだらん奴らだ」


 レザードは表面上は笑っているが、目だけが笑っていない。


「本当ですわ。アリア様はこんなに凛々しくお美しく、正義の心に満ち溢れたお方だというのに」


 ロレッタ嬢もまた、どす黒い笑顔を浮かべている。


「いいか? 初撃で決着をつけるぞ、ロレッタ嬢」


「ええ、もちろんです。アリア様にはわたしたちがついている、それを全校中に知らしめましょう」


 ふたりは瞳に決意の炎を燃やしながら、僕の肘を掴む手に力を込めた。


「うーん、助かるよ……と言ったらいいのかなあ?」


 それはそれで今後の学園生活のハードルが上がりそうだがと考えていると……。


「みんなお姉さまを見てるね。もしかしてお姉さま人気? ブーム到来っ? やったねお姉さまっ」


 レイミアだけがきゃっきゃっと、僕に邪気の無い笑顔を向けてきた。

おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!

西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!


さて第三章に突入よ!

三人のおかげで無事新たな生活に溶け込めそうなアリアだけど……?


さて、そんなアリアの今後が気になる方は、下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いしますね!

ブクマや感想もお待ちしておりますわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ