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「その光景に、僕はとても腹が立った」

 さてどうしようと、僕は思った。

 時間的にはそろそろ戻らなければならない頃合だが、このまま降りて行けばロレッタ嬢と鉢合わせすることになる。

 ヒーロウ公爵に挨拶した際に紹介されたので、まるっきり他人というわけではないのだが、気軽に話ができる間柄とまではいかない。

 コミュ障の僕としては少々キツい。



 しかも……。



「ふふ……ふふふふふ。ヴァレスティ様ったら今回も素敵……。悪漢たちを退治して、さらわれそうになったヒロインを救い、『だから言ったろう。僕の傍から離れるなって』なんてため息交じりでいかにもめんどくさそうにおっしゃって……それでいて実はヒロインにベタぼれっていうのがもう最っ高に尊くて……っ」


 きゃーっ、とばかりに本を抱きしめ身を震わせるロレッタ嬢は、感極まったようにひとりごとを繰り返している。 


「ああここ、あとで寝る前にもう一回読み直そうっ。疲労したヴァレスティ様が転んだ拍子にヒロインの上に覆いかぶさるところっ。荒い吐息と熱い体温を感じたヒロインが完全に意識ししちゃって全身を真っ赤に染めるところっ。もしこんな風にされたらわたしだったら……わたしだったらっ、きゃーっ」



 その……なんと言うか……出て行きづらい……。


 

 ──ロレッタはね、アリアルート以外だと面白いコなのよ。読書好きで夢女子で……ああ、夢女子ってわかんない? ともかくものすごい感情移入の強い読み方をするコなの。

 ロレッタの場合は男装の麗人ヴァレスティっていう女傑に救われ愛されるヒロインに自分を見立てているの。そのせいか、プレイヤーの操作するキャラを百合的に愛することが多くて……。

 特に面白いのがパーシアルートの時かな。パーシアを愛するあまりロレッタはパーシアの着ていた服に顔を埋めてくんかくんか……。



 チクリとした頭の痛みと共に、ロレッタ嬢の情報を思い出した。

 専門用語が多すぎて、けっきょく夢女子というのが何かはわからなかったが、あまり刺激しないほうがいい状況だということだけはひしひしと伝わってくる。

 

「かと言って、いつまでもここにいるのもなあ……」


 さてどうしたものかと悩んでいると……。

 

「あら、ロレッタ。あんたこんなとこにいたの」


「わたしたちが頑張ってお客様に愛嬌を振りまいてる間、こんなところでのんびり読書? 三女ってのはいいご身分ねえ」


 冷たい声を発したのはロレッタ嬢とは腹違いの姉である長女キャサリンと次女メアリーだ。

 哀れロレッタ嬢は、いかにも嫌味ったらしい口調でいじめられ始める。


「あ、あの、ごめんなさいキャサリンお姉様、メアリーお姉様。わたし本当にこういう催しが苦手で……。人前に出るとアガっちゃって……」


 ……わかる。


「ダンスだって踊れないし、お話だって上手く出来ないし、空気を悪くするだけだし、むしろわたしなんかいないほうが上手く回るのかなって思っちゃって……」


 ……よくわかる。


「わたしなんてお姉様たちに比べたら本当にお子様で、壁の花にすらなれないし、だったらこうして目の届かないところにいた方が……」


 ……とてもとても、よくわかる。


「へええー……。だってさ、キャサリンお姉様。今の聞いた?」


「ええ、しっかりとね。その上で言わせてもらうわ」


 キャサリンはロレッタ嬢の髪の毛を掴むと、思い切り引っ張った。

 

「痛い痛い痛いっ、お姉様、許してっ」


「うるさい、あんたが悪いのよ。いつもいつも自分のことばっかりっ」


 ロレッタ嬢が泣いて謝っても、ふたりは許そうとしない。

 

「ごめんなさいごめんなさいっ、本当に痛いのっ」


「得意不得意なんか関係ないのよ。あんたはただそこにいればそれでいいのよっ。そうしたら少しはわたしたちの苦労も減るんだからっ」


「わかりましたごめんなさいっ、わかりましたから……っ」


「いいえ、わかってないわ。自分勝手でわがままで、本当にいけ好かないやつっ。めかけの娘がっ、あんたみたいなのと同じ家系だなんて思われるの本っ当に嫌っ」

 

 様子を見ていたメアリーは、床に落ちた本を思い切り踏んづけた。

 

「やめてっ、メアリーお姉様っ、わたし、いいコになりますからそれだけはっ」


 ロレッタ嬢が悲しむのが楽しいのだろう、メアリーはにやにやと笑いながら本を踏みにじる。


 ……。

 …………。

 ………………。


 誓って言うが、ロレッタ嬢に愛着は無い。

 ゲーム内でも何度もアリアの前に立ちはだかり、そのつどキツい言葉を投げかけられた。

 追放、処刑、およそ友好的とは言い難いその手の言葉を、何度も何度も叩きつけられた。

 今日にしたって、ここまでろくに話すらしていない。


 だが、なぜだろう──その光景に、僕はとても腹が立った。

おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!

西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!


最近寒くなってきたけど、皆様風邪をひかないようにね?

暖かいものを食べて、あるいは読んで、体の内側をぽかぽかさせるように。

わたしも皆様の心と体の栄養を願って書き続けるわ。


さて、そんな作品の主人公たるアリアの今後が気になる方は、下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いしますね!

ブクマや感想もお待ちしておりますわ!


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