「守られるということの不思議さ」
ガノンが去ると、お父様はへなへなとその場に座り込んだ。
心臓に手を当て、ハアと大きく息を吐いた。
「ああー、怖かった。やっぱり慣れないことはするもんじゃないねえ」
人が良くて、ケンカどころか誰かと言い合いになったことすらないお父様だ。
ああして面と向かって啖呵を切るなんて、おそらく初めての経験だったのだろう。
顔は青ざめ、今もなお膝が震えている。
「どうしてお父様が? 僕が対応したのに……」
そんなに怖いならなぜ自ら矢面に立ったのかと、率直に疑問を口にすると……。
「そりゃあ父親だからね。娘にばかり大変な思いはさせられないでしょ。ましてやあんな暴力的な男の相手、させられるわけがない」
「……家長としての務め、というわけですか?」
「まあ、そういうことになるかな」
お父様は娘を守り、外敵を追い払ったのだ。
ストレイド男爵家の家長として、立派に自らの務めを果たしたのだ。
「……なるほど、ご立派でした」
誰かに守られるということの不思議さに心を乱されながらも、僕は平静を装った。
「はは、そうかい? そう言ってもらえると嬉しいね」
お父様は笑顔を浮かべると、差し伸べた僕の手につかまり立ち上がった。
「しかしすごいね、アリア。君はどこであんな知識を?」
「……本、そして街歩きで色々な人や品を見たことによる成果です」
まさかゲーム知識ですとは言えまい。
「へえ、さすがはエイナの血だね、そっくりだ」
するとお父様は、目を丸くして驚いた。
「彼女も元は町娘でさ、明るくてお喋りで、色んな人との交流が深かった。そのおかげで、こういうことには鼻が利いたからさ。そのつど見抜いて、僕に教えてくれたんだ。最終的には『こうゆーのはわたしに任せてっ、得意だからっ』なんて言っちゃってさ。腕まくりなんかして、いつも隣にいてくれてたんだ。ひさしぶりに思い出したよ」
嬉しそうに微笑みながら、お父様はエイナお母様の話をした。
いかに明るい人間だったか、いかにお節介焼きな人間だったか。
『………………』
僕とレイミアは、不思議な感慨を胸に抱きながらその話を聞いていた。
ヘラお母様と再婚してから、お父様が昔の話をすることは滅多になかったから。
「改めてありがとう、アリア。僕はどうもこういうのに甘すぎてね。これからももし困ったことがあったら、そのつど君に相談させてもらってもいいかな?」
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
アリアはここまで自力で生きてきたの。
だから人を頼ったり、守られたりすることに違和感があるの。
人間として当たり前のことであっても、彼女にとっては違うのよ。
そんなアリアの活躍が見たい方は、下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いしますね!
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