プロローグ
木造建ての大きな建物ーーー冒険者ギルド。
受付前、初心者冒険者の少年と女性のギルド職員が何やら騒々しく話し合っていた。
「ミッシェルさん、ダンジョンに行きたいんです!」
「クルトさん、何度も言いますがダメ。危険なんですよ。死んでしまいます」
俺の告白に、ミッシェルは小さな子を叱るような口調で返す。
決意の固かった俺はこの冒険者登録をした頃から相談してもらっているヒューマンのギルド職員に食い下がる。
「でも俺、小さい頃からダンジョンが憧れてて……」
「……危険の少なくて報酬も良い依頼を優先して斡旋しますから。経験を積んでもっと強くなってからじゃないとダンジョンへは勧められません」
「……わかりました。すみません」
肩を落としてギルドの扉を出る俺の背中を、困ったようにミッシェルさんは眺めていた。
ーーー
森に出た。
依頼対象であるゴブリンを狩る為だ。
ゴブリンはFランクの冒険者がよく狩りに出る弱い魔物だ。
「ゴギャ!」
「はっ! おりゃ! ………うっ。やぁっ!」
現れたゴブリン一体にしばらく手こずった末、俺はゴブリンの倒した。
「ふぅー、これだけやっても剣術スキルが上がらない……。いつか魔法スキルも覚えよう…」
俺は死体から魔石と討伐証明部位の牙、素材を剥ぎ取り背中に背負ったリュックに入れていく。
魔物の体内にはこの魔力の篭もった魔石がある。
ギルドの換金所に行けば、魔石と素材が高く売れる。依頼の報酬料とこれらの素材や魔石によるお金を合わせた額が冒険者の収入源だ。
しばらくゴブリン狩りにを続けようと森の奥は向かうと。
「………? ーーーダンジョンが産まれてる⁉︎」
ダンジョンは魔力の多い場所に現れる。
人は「ダンジョンが産まれる」と表現する。
突如、空間が歪み、ダンジョン特有の禍々しい巨大な扉が出現した。
「これは……」
ごくり。
唾を飲みながら、辺りをきょろきょろと見回して人がいないことを確かめて。
「危険なら、すぐ出ればいいんだ」
俺は勢いよくダンジョンの扉を開いた。