いつもどおりの日々に救いはこない
それからも、相変わらずいじめは続いた。なんども戦おうとしたけれど、僕にはそんな勇気がなかった。
いじめてくる人たちに抗えない、助けてくれない先生を恨めない。
そのかわりにどんどん自分が憎たらしくて仕方なくなってきた。
《僕が弱いから》
《僕が情けないから》
《僕が意気地なしだから》
自らを卑下する言葉はいつの間にか僕の心を殺してしまった。
そして、気づいた。
ーー僕が僕を殺せばいいんだ
ああ、どうしてこんなにも単純なことを思いつかなかったんだろう。
すべて解決するじゃないか。
僕のことが不快で、わざわざ痛めつける彼らも余計な手間が省けるだろう。
僕が死んでも世界が変わったりなんかしない。いや、むしろ良くなるんじゃないかと思うと、
今まで生きてきたことが、バカらしくなってきた。
コピー機からA4判の紙を一枚引っ張り出し、お気に入りのボールペンを取り出す。
窓から思い出したかのように、ぬるく湿った風が吹き渡り、やがて降りはじめた雨が雑音をかき消す。
さあ、僕の物語の最期を綴るとしよう。
『みなさんへ
生きていくって、本当に難しいことですね。
僕は、最近そのことを実感します。
僕が価値のある人間だったら違ったのかもしれませんが、残念ながら僕は無価値な人間だったようです。
誰か僕のことをわかってくれる、答えてくれる、そんな甘えがあったのかもしれないですね。
みんなに助けて欲しいって、そうお願いしたらきっと手を差し伸べてくれるでしょう。
でも、今さらどう接していいのか、わからないのです。
いつかわかり合える日が来るのでしょうか?
今の僕には、そんなこと、想像もできないのです。
こんな内容になってしまって、ごめんなさい。
けれど、こんなことをを言えたのは、これが最後の言葉になるからです。
もう、生きるのが本当に辛くなってしまいました。
僕が死んだって大丈夫でしょう。
誰も悲しまないのだから。
長い間お付き合いくださり、ありがとうございました
さようなら 』
ーーうん、最高のエンディングだ
窓の向こうは、すでにほんのりと明るくなっていた。