創作ファンタジーまとめ
魔物王子と生贄姫
とあるA国とB国の境にある洞窟には魔物が住んでいると有名だった。そこに生贄としてA国の末姫がお付き者数人を洞窟の前に放置された。人を食うと恐れられている洞窟の魔物は亡国の皇子で、兄が神の祠を壊した咎で一族ともども魔物になる呪いをかけられていた。皇子以外の一族は自暴自棄になり、他の国を壊して退治されて死に絶えたが、王子は魔物になっても心優しく、洞窟でひっそりと暮らしていただけだった。
今までの生贄は自力でどこかに逃げて行ったが、目の前にいるのは十にも満たぬ幼姫と年老いた家来が数人。森を抜けて出奔する力はなさそうだった。魔物は哀れに思い、少し大きくなるまで面倒をみることにした。姫もお付きの者も魔物を恐れず、心を開いてくれたこともあり、家族のような関係を築いていった。皇子の呪いは「どんな姿になっても愛してくれる者にキスされれば解ける」ものだった。
美しく成長した姫が兄のように慕っていた魔物を一人の異性を意識してキスをした時、魔物は元の美しい皇子の姿に戻ることができた。姫も皇子も喜んだが、二人を祝福してくれたであろうお付きの者達は老衰で既に失くなっていて、戻れる国はないのでそのまま洞窟で暮らす事にした。
姫には少し年の離れた姉姫が居たのだが、風の噂で「魔物が人に戻った。とても美しい青年だった」というのを耳に入れ、B国に嫁いでいたが愛人にしようと妹を殺して皇子を手に入れようとした。部下に命じて妹を何のためらいもなく蜂の巣にして、姉姫は洞窟に入り、失禁した。噂の美しい青年はおらず、姉の前には怒り狂う魔物がこちらを睨み付けていた。呪いは「元に戻れるのは愛した者が生きている間だけ」という条件付きだったのだ。
魔物は姉姫を踏みつぶすと、妻を蜂の巣にした家来を焼き殺し、妻の亡骸を食べ、妻の故郷であるA国も姉姫が嫁いだB国も完膚なきまでに滅ぼして、二度と洞窟から出て来る事はなかったという。今でも洞窟から魔物のような風ともとれるような哀しい声が聞こえてくるのだと、必ず洞窟がある森の前を通らなければいけないC国の商人はD国の人間に語っている。
呪われ高校生の初恋
金持ちでイケメンというクラスカースト高位だったDKは、肝試しで祠を壊してしまった罰で醜い化け物に見える(自分は元の顔に見える)と言う呪いを受けてしまう。友人も後輩も先輩も教師も彼女も実の家族も格下だと思っていた他人からも化け物と排斥され、夜以外は郊外で引き籠る生活に零落する。
「あの…〇〇君だよね」
でもDKを人間と認識できる人間が一人だけいた。顔はわかるが名前が覚束ないクラスメイトのJKだった。顔も家も能力も平均レベルの、前の自分では歯牙にもかけない地味なJKだったが、本来の自分を見てくれる存在に荒んでいた精神が少しずつ人の感情を取り戻していく。化け物になったDKの見かけは絵が下手な人が描いたビッグフットみたいな感じ。
JKが買ってきた雑誌をもらったり、テイクアウトしたファーストフードを人気のない場所で食べたり、大きな足と力を活かして日帰りデートしたり、DKの姿とセ●クスしない以外はいたって普通のリア充な学生カップル生活を謳歌していた。ある日、祠にいた神様(邪神?)が「お前があるいはお前を心の底から愛している人を犠牲にするならその呪いを解いてやる」と言われる。
今のDKにとって大切な人はJKただ一人。でも最初の時ならいざしらず、JKを喪ってまで元の姿に戻りたくはない。別にこのままでも構わないとDKは思っていたのだが、JKがその条件が知ってしまう。〇〇くんに元の生活をさせてあげたいとJKはあっさりと自身を神様に捧げてしまった。ただ家族やDKを悲しませたくないと自分の記憶を消してほしいという条件を付けて。
DKの呪いは解けて元の姿に戻り、以前の人間らしい生活に戻ることができた。JKが居ない以外は、全て今まで通り。彼女が居ない、こんなハリボテな世界に生きるくらいなら、化け物のままでよかったと嘆くDK。
家を出たDKはJKと過ごした郊外で一人浮浪者のような生活を続けている。
JKはDKを監視していた神様に気に入られて眷属となるか、あるいは別の世界の優しい家族の元に転生している。
訳アリのイケメンと平凡女子
どこにでもいる、顔も成績も平凡なJKは「イケメンから告白される」という少女漫画のような展開を経験する。舞い上がるままにOKしてしまい、家に帰って正気に戻った。どうして、罰ゲームだろうか、取り巻きにいじめられるかも、そう悶々としつ学校に行くが、友人に絶交されることも、取り巻きに呼び出しを受けることもない、いつもの学生生活が待っていた。
私物が隠される事も水をかけられることも悪口を言われることもなく、イケメンとイチャイチャできる毎日に(私こんなに幸せでいいのかな)とちょっと不安になりながらも、彼氏と放課後デートするJKであった。JKの視点からは彼氏は漫画の世界から飛び出してきたようなイケメンに見えるが、JKのような一部を除く人間からはイケメンはおぞましい化け物に見えている。
だから周りも妬みを抱くどころかあんな化け物に好かれるとか可哀想、生贄じゃんと哀れに思われている。JKのいう取り巻きは別に彼氏がイケメンにみえるわけではなく、彼氏の家がちょっと危ない意味の金持ちの息子で、家族からあの家からは支援を受けているからなるべくご機嫌を取っておけと言われているから従っているだけ。もちろん彼氏を心の底から慕って付き従っているタイプもいる。
彼氏の家は代々「友愛、親愛、恋愛問わず心の底から慕う相手以外には化け物にしか見えない」という鉢かづきみたいな加護がついている。父親も息子である父親と一部の人間以外には獣っぽい化け物にしか見えない。母親は子宝に恵まれない父親が金で雇って孕ませたのだが、産んだ子が化け物にしか見えず発狂して首を吊った。
父親と屋敷の者は息子を大事に育てていたので、母親の実家が怒鳴り込んでくるまでは自分が一部の人間には化け物と認識されることはしらなかった。家族に愛されつつも若干鬱屈した生活を送っていたが、愛しの彼女をゲットできたのでストレスフリー。父親も息子が嫁を自力でゲットして来てコロンビアしている。JKの家は一般家庭だが、実は母親もそういう加護持ち。