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5 美夏と克己

 翌日の二限。

 必修の英語で一緒になるはずだったのに、教室に達弘の姿は見当たらなかった。

 大教室だから見逃したのかもと周囲を見回す。


「美夏ぁ。達弘見なかった?」


 遅刻ギリギリに滑り込んだのだろう美夏は、戸口からすぐの席に座っていた。


「あ〜そういや見てないね。あの真面目くんが珍しい。前列にいなかった?」


 美夏は私の問いに手を打ち、克己に視線を送る。


「俺一限の倫理でも達弘と一緒だけど、あいつ来てなかったぜ。講義一回授業料いくらとか計算するようなやつなのに、どうしたんだろうな。昨日別に普通だっただろ?」

「うん。解散も早かったしね」

「別に休むとも何とも言ってなかったよな」


 昨晩コンビニから出てきた美夏たちは、ツマミと酒をたくさん買い込んでいた。

 せっかくだから片付けの後、サークルボックスで飲もうと思ったらしい。


 私は門限があるから片付けしたら帰らなきゃ、と飲むのを断った。

 あんなことを言ってきた達弘と少人数で飲むなんて絶対無理だったし、達弘や克己と違って実家暮らしだから門限もある。


「ねえ、達弘のことなんだけどさ。昨日なんか気になることはなかった?」


 あれから三人で飲んだんだとしたら、明るいサークルボックスで至近距離だ。

 美夏や克己も達弘の首のジッパーを見ているかもしれない。


「へ? だから別に普通だったんだって。ねぇ」


 美夏は心当たりなどないというように首をかしげた。


「俺は有希の方が気になってたけどな。スッゲー慌てて帰ってったから。遅くまで付き合わせたせいで実家でトラブッてたらわりぃなとかさ」

「それは達弘も言ってたね。大丈夫だったの?」


 昨日は頭の中がいっぱいいっぱいだったし一刻も早く一人になりたくて、さも焦ったような感じで別れた。

 ゆるく門限はあるとはいえ、実際うちはそれほど口うるさい家ではない。


「全然。事前に遅くなるって言ってなかったから帰っただけで、そんな厳しい家じゃない……って美夏は知ってるでしょ。幼馴染なんだから。でもごめん、余計な心配かけたね」

「そっか。ならいいけど。で、有希は達弘の何が気になってんの。あるんでしょ? 気になることが」


 美夏が大きな瞳でこちらを覗き込む。

 綺麗なアーモンドアイ。

 上目遣いになるとくるりとカールしたまつげがまぶたに触れそうだ。


「笑わないでね? 実は私、見たんだ。達弘の首の後ろに銀色のジッパーが付いてるのを」

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