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22 穿つ弾

「二丁使うなっ。片方だけにしろっ」


 左手に持っていたチェルノボーグ。黒い銃を脇に置いて。


 撃つ

 撃つ

 撃つ――


「何のために一丁だけにしろって言ったと思ってんだ。片手で撃ったら外すだろうがっ。両手で支えろっ」


 グリップを両手で握り。


 撃つ

 撃つ

 撃つ――


 そして銃口を上に向けてそこを口で吹く仕草。


「フッ……」


「おい、日向。かっこつけてるとこ悪いんだが、さっきまでと全く同じように外してるぞ。もっとこっちに来て撃てよ」


 快斗と鍔迫り合いのように拳で竹刀を押している巨人。そこから三、四歩離れた位置まで近づいて。


 撃つ

 撃つ

 撃つ――


「なあ、日向……お前わざと外してないよな」


「ああ、最後のだけはわざとだ」


「なんでだよっ」


「快斗の反応が面白くてつい。それに結構余裕そうだし」


「ついってお前な……」


「すまんすまん。次はちゃんと決めるから」


「ほんと頼むぜ……」


 快斗は疲れたような声で答える。それに合わせて日向は脇を締め、銃を真っすぐ正面に構えた。

 人外が活動するときのエネルギーを供給しているのは脳に当たる場所か心臓に当たる場所。中二病時代の日向の考察ではこうであった。そして、今の日向にそれを確かめる手段は無い。そのために昔の自分の頭を信じて行動するしかない。日向にとって中二時代の自分を信じないといけないというのは頭の痛い話であったが。

 だから、照準は巨人の胸の中央。人であれば心臓のある場所。頭が無いということで、狙う場所はここ一点に絞られた。 


 ゆっくりと息を吸い込み、そして吐き出しそこで止める。

 的を見据え、世界に自分と銃と相手の巨人しかいないように感じるほど極度の集中状態に陥ったところで、日向は引き金を絞った。


 瞬間、快斗の目の前で後ろに大きくのけぞる巨人。

 日向は腕を跳ね上げる強い反動を何とか抑え、続く二発目を撃つ。

 一発目はこらえた巨人もこれには耐えきれず倒れこんだ。

 そこへ、三発目、四発目、五発目と弾倉に装填しておいた魔力弾全弾を叩き込む。

ズドン、ズドンと白い拳銃、ベロボーグから吐き出された銃弾が巨人の胸を貫き――


「やったか?」


「日向、フラグだからやめろ」


 ついに顔のない巨人はその動きを止めた。

 静寂の教室に響く日向と快斗の安堵のため息。


「はあ、こんなに集中したのはいつぶりだろうな」


 そのまま日向は床に座り込む。快斗はその横に立ち、少々乱れた息を整えていた。どうやら巨人の相手ではなく日向へのツッコミが原因らしい。


「結界のおかげで俺らは致命傷でも即座に死なないとはいえ、命のやり取りに近いことやってたんだからな。いつぶりってか初めてだろ」


「そりゃそうだな。こんな事頻繁にあってたまるか」


「最もだ。けどじっちゃんが言ってた感じからするとそう甘くないらしいぜ。なんかここら辺は魔力流脈がどうとかでこんな人外がよく発生するって――っ」


 苦笑いを浮かべていた快斗が急に目を見開いたかと思うと、竹刀を上段に振り上げ……


 日向が気づいたときにはその竹刀が頭上へと迫っていた。

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