1話
僕は神山 悠希。県立慶明高等学校の1年生でごく普通の生徒である。家族は父が警察官で母が専業主婦。可愛い妹が一人いてみんなそれなりに幸せに暮らしている。友達もそれなりにいて学校生活も満足している。
そして現在放課後、僕は複数の人物に追い詰められている。
「悠希くん、私にするよね?」
「何を言う!! 悠希は私が相応しい」
「……寝言は寝て言って」
「あらあら、まあまあ」
その人物達が学校中のアイドルだったり、物静かな文学女子だったり、文武両道な風紀委員長だったり、おしとやかな生徒会長だったりがいた。なんでこうなってしまったのだろう。事の発端は靴箱に入っていた手紙からだと思う。
僕はいつものように登校して靴箱に靴をしまおうとしたら何か入ってあった。手に取ってみると手紙のようだ。僕は手紙が入っていた事に驚いていると後ろから手に持っていた手紙を盗られた。後ろを振り返ると親友の前川 文哉がいた。
「ヘイヘーイ。これはこれは、なにやら悠希にも春の訪れを教えてくれるお手紙ですかぁああ!! 」
「やめてよ、文哉。別にそうとは限らないだろ」
「なーに言ってんだよ。こんな可愛い封筒に入っているんだ。LOVEレターに決まってるだろぉ!!」
「そっ、そうかな?」
「良いから開けてみろよ」
文哉に言われるがまま封筒を開けた。そこには女性が書いたような可愛らしい文字が書かれていた。
『神山 悠希くんへ ずっと前からあなたのことが気になっていました。私と付き合ってくれませんか? 放課後の教室で待っています。その時返事を下さい』
それを読んだら文哉が僕の背中をバンバンと叩いてきた。
「おいおい良かったじゃねぇか、この野郎!! うらやましいじゃねぇか、この野郎!!」
「痛い痛い。止めてよ、文哉」
「勿論付き会うんだろ?」
「でも相手がだれか書いてなかったし…」
「馬鹿野郎!! そういうのは会ってからのお楽しみだろうが!!」
「あっ、はい。分かりました」
文哉に押し切られてしまい気を取り直して僕たちは教室に向かった。教室に入る途中に僕は本を借りていた事に気が付いて文哉とはそこで別れて僕は窓際に座っている女子生徒に話しかけた。
「おはよう、守山さん」
「…おはよう」
彼女は守山 鈴さん。僕のクラスメイトで図書委員をしていて僕の読書仲間でもある。彼女とは本の貸し借りをしていてお互いの本の感想を言い合う。
「…どうだった?」
「とっっても面白かったよ。主人公が人間ではなく化物になってしまいその葛藤を描いていて読んでるこっちもハラハラしながらみていたよ」
「…そう、良かったわ」
「守山さんはどうだった?」
「…ごめんなさい。もう少しかかるかも」
「あっ、ごめんね。ゆっくり読んでよ」
「…そうするわ」
僕は守山さんに本を返した際、手と手が触れてしまい守山さんは驚いたのか本を落としてしまった。
「も、守山さん、大丈夫!?」
「え、ええ。少し驚いただけ」
「なんかごめんね。はい、これ」
僕は本を渡しその場を後にして、一限目の授業の準備をし始めた。
*****
守山は神山が離れて行ったのを確認すると足早にトイレに駆け込んだ。そして個室に入り下着脱ぐと局部からの愛液が下着を濡らしていた。
「………んっ」
そして守山は持っていた替えの下着に取り換えた。
*****
授業が終わりお昼休みだ。午後からは体育で今日僕は日直なので準備しなければいけないので早めに着替えた。それから僕は購買部で昼食を買おうと急いで走っていたら後ろから
「こら悠希!! 廊下を走るな!!」
僕は注意されてしまった。恐る恐る振り返ると大谷 沙織が立っていた。彼女は風紀委員会委員長で文武両道で真面目で生徒の模範になるような人だ。彼女とは中学の陸上部の先輩でもあった。当時から自分にも他人にも厳しかったので風紀委員長はとても似合っている。
「沙織先輩……」
「以後気をつけろよ、悠希」
「あっ、はい。気をつけます」
僕はお辞儀をして足早にその場を後にして購買部に急いだ。──後ろから僕の事をジッとみる視線に気がつかずにいた。
購買部で昼食を買い中庭で食べる事にした。ここなら食べ終わってすぐに体育館に行けるからね。僕はパンを頬張っていたら誰かが隣に座り
「あら、悠希君ではありませんか。今お昼ですか?」
声のする方を見てみるとそこは西園寺 紫苑が座っていた。彼女はこの学校の生徒会長で良いとこのお嬢様でもある。おしとやかな性格だが生徒や先生からの信頼は厚い。
「こ、こんにちは。生徒会長」
「もう、二人っきりの時は『紫苑』って呼んでよぉ」
「こ、こんにちは、紫苑」
「うふふっ」
西園寺とは何度か生徒会の仕事を手伝ったぐらいの仲だが、何故かお昼休みに良く会うようになっていた。そして何故か名前を呼ぶように言われる。生徒会長なので少したじたじである。
「ところで悠希君。次の授業は体育ですか?」
「は、はい。今日は日直なので準備がありますから」
「あらあら、大変ですねぇ」
「いやいや、会長だって……」
「もう、『紫苑』!!」
「し、紫苑だっていつも学校の事を考えているじゃないですか。凄いことですよ」
「うふふっ。ならもっと頑張らないといけませんね」
「無理はしないで下さいね、紫苑」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑いその場を後にしていった。まるで嵐のような人だなと思いながらパンを食べ終え体育館に急いだ。
*****
神山と別れた後に西園寺はポケットからボイスレコーダーを取り出して再生をした。
『こ、こんにちは、紫苑』
『し、紫苑だって』
『無理はしないで下さいね、紫苑』
『紫苑』
「………うふふっ」
何度も何度もレコーダーを再生して西園寺は聞いていた。
*****
今日の授業はバスケだった。白熱したので汗がベトベトだ。というかもう動けない。そしていきなり文哉が僕の背中を叩いてきた。
「おいおーい、悠希。疲れているな」
「ちょっと痛いよ、文哉。無駄な体力使わせないでよ」
「何を言っているんだ、このボーイは。この後の授業が終わればお前の春がもう目の前にあるんだぞ」
「まぁ、そうだけども……」
「くぅー、なんでお前なんだよ。うらやましいぞ、コノヤロウ」
「痛い痛い止めてよ、文哉」
文哉に羽交い締めされて着替える時間が無くなったので仕方なくこのまま授業を受ける事にした。
授業が終わり遂に放課後になった。文哉は陸上部に入っていて僕は帰宅部だ。文哉は
別れ際に
「どんな娘か絶対教えろよ!! そしてぇええ、これから始まる青春を楽しめよぉおおお!!」
意味の分からない事を言っていたが無視しよう。今はさっさと制服に着替えようとしたら教室の扉が開いた。誰だろうと思い扉の方に目を向けるとそこに学校中のアイドルとも言われている柏倉 あやの姿が居た。彼女は僕の方を見るとニコッと笑ってくれた。僕はしどろもどろだった。
「えっ、えーっと。か、柏倉さん。ど、ど、どうしたの!? な、何かようでもあったのかな!?」
「ふふっ、キョドりすぎだよ、悠希くん」
「えっ!? ぼ、僕の名前知ってるの!?」
「知ってるも何も手紙にちゃんと悠希くんの名前書いてあったでしょ」
「て、手紙ってまさか!?」
「えへへ、手紙、受け取ってくれてたみたいだね」
僕は天にも登るような気持ちでいっぱいであった。まさか手紙の人物が学校のアイドルの柏倉 あやさんだったなんて夢にも思わなかった。
「か、か、柏倉さん」
「むぅー。あやでいいよ」
「あ、あやさん。な、なんで僕なんかが良かったの?」
「えーとねー、それはねぇ」
僕に近づいてきてそして抱きついてきた。あたふたしていたが彼女の甘い香りか鼻にくる。彼女は大きく鼻で息を吸っていた。
「……やっぱりこの『ニオイ』が好きだなぁ」
「……えっ、『ニオイ』!?」
自分のにおい嗅いでみた。体育であんだけ動いたんだからしかも体操服のままだ汗臭いのだろうか……
「ご、ごめん。汗臭かったよね」
「うんん。汗の『ニオイ』も良いね。より一層『ニオイ』が増してるよね。最高だね、悠希くん」
柏倉はずっと抱きついたまま、僕の臭いを嗅いでいた。怖くなってきたので彼女を一旦離して距離をとった。柏倉はキョトンとしていた。
「あ、あやさん。それってどういうことなの?」
「うーんとね。私は悠希くんの事は好きで一番好きなところが悠希くんの『体臭』なんだ」
「た、『体臭』?」
「私、体臭が好きなんだけど、でもなかなか好きな体臭に会わなくて。そんなとき偶然ぶつかった時に嗅いだのが悠希くんだったの!!」
確かに彼女とは1ヶ月前にぶつかってしまった記憶がある。あの時は柏倉 あや親衛隊に目をつけられ大変だったから覚えている。
「これはもはや運命的だと思うの!! 私の好きな『ニオイ』がこの学校にいたなんてね!!」
笑いながら言ってくる彼女が恐ろしく感じている。これが学校のアイドルなのか。よく分からない。彼女は一度咳払いをして
「ともかく、私と付き合ってよ。そしてゆくゆくは結婚も視野に考えましょう」
手を差し出してきてゆっくり近づいてくる柏倉。ヤバいと感じて僕はチラッと扉の方を見て開いているのを確認すると
「うぉおおおお!!」
駆け出してその場から逃げ出した。
「あぁっ、待ってよ、悠希くーん」
追いかけてくる柏倉だが、こちとら中学で陸上していたんだ。逃げ切れる。そんな考えもブランクには勝てなかった。仕方ないのでどこかに隠れようとした時曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「おわっ!?」
「………っ!?」
相手が尻餅をついていたので急いで手を差し伸べた。よく見るとその人物は守山だった。
「ごめん!! 大丈夫!?」
「……う、うん。平気」
すると廊下の向こうから
「おーい、悠希くーん」
柏倉の声がする。守山と手を繋いだまま引き連れて逃げ始めそして近くの空き教室に駆け込んだ。ここなら大丈夫だろうと安心していたら
「…あの手を……」
「あっ、ごめん!!」
守山に言われるまで手を繋ぎっぱなしだった。急いで僕は離そうとしたら強く握りしめてきた。僕は少し驚いていた。その手を彼女は自分の頬に近づけた。
「……実は。……わたし、神山くんのことが好きなの…」
「え、えぇ!?」
まさかの告白に僕は驚きを隠しきれていない。
「……前から好きだったの。あなたのことが…」
「そ、そうだったの!?」
「……同じ読書が好きなのも嬉しかった。……わたしの好みが一緒なのも嬉しかった」
「は、はぁ、どうも」
「……そして、何よりも……」
守山は僕の手を口に近づけそして僕の手を舐めはじめた。僕は呆気にとられて何がなんだか分からなかったが、我に返って手を離した。
「な、なにすんのさ!?」
「あぁ、神山くんはわたしの理想的な『手』だわ」
「『手』?」
「わたし読書の他にも絵画とか彫刻とかの鑑賞も好きなの。特にダビンチのモナリザがお気に入りなの。あの作品の両手を見たときわたしは身体の芯から震えて絶頂っちゃったの。ふふふっ、それ以来わたしは『手』に執着するようになったの。でもわたしの理想の『手』にはなかなか会えなかった。そんな時神山くんが現れたの。あなたが図書室で本を借りに差し出した時の手を見たとき、モナリザの時と同じように絶頂ってしまったの。ようやくわたしの理想の『手』に会えたって……」
僕は柏倉の時と同様に引いていた。そしてまた舐めようとしてきたので僕はパシッと彼女を叩いてしまった。
「きゃっ!!」
「あっ、ご、ごめん」
どんなことでも女性を叩いてしまったのだ。僕は一応だが謝ろうとしたら
「あぁああん。最高よ、神山くん。良いのよ、最も叩いて!!」
「えぇっ!?」
「わたしはその『手』ならどんな事でも受けるわ。そしてその後わたしを慰めてくれるなら私、嬉しい」
「ひぃっ!!」
僕は守山も怖くなりその場から逃げ出した。そしたら運悪く廊下には柏倉が居た。
「悠希くんみっけ」
「ひ、ひぃっ!?」
「ふふふっ、私の嗅覚を甘く見ないことね。もう悠希くんの『ニオイ』は既に覚えているから逃げても無駄だよ」
何その能力は!! なんか色々と諦めていたら守山が出てきた。何故かその手には手錠を持っていた。
「……待って、神山くん」
「も、守山さん……」
すると柏倉さんと守山さんの目が合ってしばらくすると二人は睨みあっていた。二人は僕に問いかけてきた。
「ねぇ、悠希くん。この人だれ?」
「……神山くんこの人は?」
「いや、えっと、こちらが柏倉 あやさんで、こっちが守山 鈴さんです」
「「そういうことじゃない!! この女は悠希くん/神山くんのなんなの!!」」
「えぇえええ!?」
僕にとってはお二人は異常者にしか見えないし怖い存在ですとは言えない。そんな事をよそに二人はいがみ合い言い争っていた。
「あんたなんなのよ!! 今日私は悠希くんに告白するのよ。邪魔しないでよ」
「……邪魔はアナタよ。わたしは前から彼を狙っていたの。パッと出てきた分際でやめて頂戴」
「何を!!」
「……やるっての?」
白熱しているとこをこそこそとその場を後にした。そしてそこから猛ダッシュをした。とりあえず一度教室に行き鞄を持ってそこから学校を出れば良いんだ。とても簡単な事だ。
しかし今日は運が悪い。何故か廊下が滑りやすくこけてしまい膝を擦りむいてしまった。血が止まらないし、仕方ないので丁度近くに保健室があるので消毒をしようと立ち寄った。中には風紀委員長の大谷 沙織が居た。
「さ、沙織先輩……」
「むっ、どうしのだ、悠希……って、膝から血が出ている出はないか!! 良いからこっちにこい!!」
沙織先輩に言われるがまま椅子に座った。先輩は消毒などの処理を済ませてくれた。そんな行動に少しだけ安堵していた。
「ふふっ」
「どうしたのだ、悠希。笑いだしたりして」
「いえ、沙織先輩には中学の時にも治療してもらったなぁと思いまして」
「……そうだな、そんなこともあったな」
沙織先輩は僕の足を見つめてそのまま僕の足をゆっくりと撫で始めた。
「えっ、さ、沙織先輩?」
「悠希、また陸上はやらないのか。お前なら記録を残せると思うぞ」
「そ、そうですかね。僕にはアレが限界だと思うのですが……」
沙織先輩は太ももからふくらはぎまでゆっくりと撫でていた。そろそろこそばゆくなってきたので沙織先輩に
「せ、先輩。そろそろくすぐったいのですが……」
すると先輩は自分の頬にガバッと僕の太ももにくっつけて頬ずりをしてきた。先輩のその行動に僕は驚いた。
「ちょっ、先輩!?」
「はぁ~。やっぱり悠希は良い『足』をしているなぁ」
「はぁ!? やっぱり!?」
「うむ。陸上部の時から悠希の『足』は素晴らしいと思っていたのだ。そして私はそれにいち早く気づいた一人だな」
沙織先輩はずっと僕の太ももを頬ずりしていて手はふくらはぎ辺りを撫でていた。
「せ、先輩。落ち着いてください。変ですよ!!」
「何をいう。私は冷静でしっかりと感触を味わっているんだぞ」
駄目だこの人、早くなんとかしないと。しかも鼻血も出ている。僕は先輩を無理やり引き剥がして保健室から逃げ出した。
「ま、待て!! 私の『足』!!」
そんな声も無視して廊下に出て逃げ出した。後ろからは沙織先輩以外も柏倉と守山の声も聞こえる。この先はもう生徒会室しかない。僕はなりふり構わず生徒会室の扉をノックした。
「はいは~い」
「せ、生徒会長開けてくれませんか!?」
「あらぁ、その声は悠希君かしら」
「は、はい!! そうです!! 悠希です!!」
「う~ん。どうしようかなぁ」
「ええっ!? お願いします!!」
「じゃあ、いつものように呼んでほしいなぁ」
「し、紫苑!! お願いします、開けて下さい!!」
「もっと、荒々しく言ってほしいなぁ」
「もう~!! ここを開けろ、紫苑!!」
「は~い!!」
西園寺はようやく扉を開けてくれた。そして鍵を閉めた。僕は少しホッとしていると西園寺が
「まあまあ、何だか大変でしたね。ほら座ってお茶でもどうですか?」
「あ、ありがとうございます」
僕は西園寺に言われるがまま椅子に腰掛けた。少し安心していたら後ろから西園寺がやってきて手早く両手に手錠で拘束さし、それから両足にも手錠で拘束された。
「えっ!?」
「うふふっ」
「か、会長?」
「もう、紫苑で良いわよ」
「し、紫苑。これはいったい?」
「こうでもしないと話を聞いてくれないかなって」
「いや、ちゃんと聞きますよ。なんですか? というか、コレを外して下さい」
「私ね……」
僕の話を聞いてくれない。こんな状況に焦っているが西園寺の話は続けられた。
「私ねぇ、あなたの『声』が好きなのよぉ」
「……『声』ですか?」
「そうなのよぉ。あなたの何とも言えないその声量と声質が私の耳をくすぐるのよぉ」
「は、はぁ?」
「いつもはあなたとの会話を録音しているのだけども……」
「ろ、録音!?」
「そうなのよ、ほら」
『無理しないで下さいね、紫苑』
西園寺の手にあるボイスレコーダーからお昼の会話の時の声がした。いつもそんな事をしていたのか。僕はゾッとした。
「それから悠希君の録音した声で音声合成を作ったんだけど。やっぱり本物が一番だと思ったのよ」
僕の頭を撫でながら
「これからは朝から晩まで私とお話しましょうねぇ」
ヤバいよこの人もサイコパスだよ。誰でもいいから助けてぇええ。その時生徒会室の扉が鈍い音がして開いた。そこに居たのは沙織先輩と柏倉と守山だ。
「あらあら、乱暴ねぇ、沙織」
「黙れ、紫苑。悠希は私のだ」
「ちょっと違うでしょ。悠希くんは私のだって言っているでしょ」
「……何を言っているの。神山くんはわたしのよ」
そして冒頭に戻る。今は四人が火花を散らしていた。僕は椅子に拘束されていて僕はそれをみている事しか出来ない。すると柏倉が僕の後ろから抱きつき頭のにおいを嗅ぎながら
「っていうか今日、私が悠希くんに告白しようとしてたんだよ、あんたら邪魔しないでよ」
次に守山が僕の右に座り込み僕の右手を握りしめて
「……あなたは1ヶ月前に会った程度でしょ? 私は彼が入学してから気になっていたのよ」
その次に先輩が正面に座り僕の両足を頬ずりをしながら
「それを言うなら私は中学の頃から狙っていたんだぞ」
そして西園寺が左に立ち耳を傾けていて
「ふふふっ、それよりも悠希君の意見が聞きたいな。悠希君は誰にする?」
「は、はぁ!?」
その言葉で四人はこちらを見つめていた。僕としてはこの状況を打破したいそこで
「と、とりあえず今日のところは帰りませんか?」
すると後ろに居た柏倉がギューッと抱きしめてきた。胸が当たっていますよ。
「えー、私じゃあ駄目なの?」
可愛く言ってきたがそれでもクンクンと嗅いでいるのが残念である。
「だ、誰にするなんて決められないよ」
僕はしどろもどろで言っていた。というか拒否というのは許されないのですね。そしたら西園寺が一つ提案してきた。
「なら、みんなで悠希君と付き合いましょう」
「はぁあ!?」
この人は何を言い出すんだ。四人と付き合う。訳が分からないよ。西園寺は続けた。
「一夫多妻でも良いじゃない。お互いが干渉しなければ悠希君を堪能出来ればいいし、それにそれぐらいの度量がないとね。一応ルールとかも決めておけば良いと思うのよ。どうかしら?」
三人は少し考えた後出した答えは
「分かった。それにする」
「……賛成」
「それじゃあ、まずはちゃんとルールを決めておこうか」
西園寺の提案に他の三人も賛成のようで僕の意見をよそにルールを作り始めた。僕の優柔不断が招いた結果がこれだよ。こうして僕は四人と付き合うこととなった。これまでの学校生活には戻れず新しい学校生活が始まる。
……これは文哉にはどう報告しようかな。