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デモンズ・スミス-魔王の刀鍛治-  作者: ウッチーG
第2章─究極魔刀編 ─
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第五十三話 辣腕と剛腕

 デモスミを読んでくれている方がみえましたら、諸々の工業用語は百話まで行ったら、『全話修正』、『前書き・後書きの活動報告への移動』とともに『解説』を入れようと思いますので、現在はふわっとしたイメージで流し読みして頂きたいと思いますm(__)m 2020年3月5日に後半部分少し追加しました。


「フフッフフフ、視なさいオーガ達!! この神々しく輝き、私の周りを舞う! にぃ、いやオリハルコンを!! もっと、もっと多く持って来るのです! さあ、私の魔素を! ウフフフ、ウフフフ……」


 倉庫に貯めてあったオリハルコンの切り粉を浮かして操るルギナ、その眼は血走っている様にも見える。


「アレはヤバいな! 俺もう、工房に戻ってもいいかな?」

「ああ、目がイッチャッてるぜ……こえぇよ……」


 っとイッカクとワンリキがぼやく。


 遠目で見れば舞い上がる金粉に月明かりが反射して幻想的に煌めく、その中心で優美に舞い踊る半透明な絶世の美女の姿に見えるだろう。


 しかし、間近で見ている彼らには、その姿は恐怖でしか無いらしい。


「あの~、オカシラ逃げてもいいかな? うん?」

「あっ!オカシラがいない!? はぁ!ランボーも!!いつの間に!?」

「くっそー、俺達置いて旦那の所に行ったにちげーねぇー」

「あの二人、つえ~のに抜け駆け何て汚ねぇ~よ~!」

「ズバリッ、私達も行くべきでしょ~!」

「…………いこう……」


 こっそり逃げた二人を追いかける為、駆け出そうとした残り6人のオーガ達だったがその視界を霧が包み込む。


「オーガ達、何処へ行くきなのかしら? そこから一歩でも動けば貴方達から魔素を引き剥がしますよ。ウフフッフフフ」


「「「「「ヒィイイイ~」」」」」


 霧が立ち込め月明かりが幻想的な景色を作るその場所で、オーガ達の悲鳴が木霊する。


 その時、こっそり逃げ出したオカシラとランボーにもオーガ達の悲痛な叫びが聞こえる。


「オカシラ……今の聞こえたか? アイツらだよ、な……」


「ランボー……アイツらの犠牲を無駄にするな! 奴らの分まで俺達がデルフの旦那から学ぶんだ!!」


 工房に着いた二人は何故か扉の前で立ち止まる。


「おい、ランボー感じるかこの異様な魔素を……」


「あぁオカシラ、中に入らなくてもわかる……頭がガンガンするぜ、ホントにアイツはこの中にいるのか?」


「間違いない、聞こえて来るこの金床を叩く様な音……」


「トンカン♪トンカン♪全く迷いが無い良いリズムだねぇ~♪ 面白いそうだな!何で中入らねぇ~の?っと」

「ああ、良い響きだってっ!?ドラゴニュートの旦那!って、えっ!?」


 オカシラとワンリキの間からひょっこり現れのはキハーダ、彼は現れて早々、喜色な顔で工房の扉を透かさず開ける。


 開いた扉から溢れ出す濃い魔素の流れに二人のオーガはたじろぎ、キハーダの顔からも一瞬笑顔が消えた様に見えた。


「何だ、あのデアデビルは? これ程の魔素が部屋から流れたってのに、こっちを振り向きもしねぇよ。 ハハハッ、何かムカつくな!」


 キハーダは黙々と紫色の魔素を放つ金属を鍛えるデアデビル、つまりはデルフに近づこうとする。


「まっ、待ってくれキハーダ様!! あれはデルフの旦那、そっとしておいてくれ!」

「そう、アイツは今まさに魔王様の魔刀を手掛けている最中、邪魔をするのは止めて頂きたい!!」


 魔素に堪えながら二人はキハーダにしがみつき、歩みを止めようとする。


「ハァ? アレがあのインプだと? 冗談キツいぜ、それによーこんな騒いでんのにまだ振り向きもしない……舐めてるよねぇ~アイツ!!」


「踏ん張れ! ランボー!!絶対邪魔をさせるな!!」

「ああ、そんな事わかってらァ、オカシラ!!」


「おいおい、オーガ共いい加減にしないと殺しちゃうよ? キモいからそのむさ苦しい腕を放せや!」


 キハーダが動こうとするも、その馬鹿力で食い下がる二人に彼は苛立ちが隠せなくなる。


 そんな事など、気にも留めずデルフはひたすらアダマンタイトの大・小の鎚を使い熱して鍛え汚れ(スラグ)を落としては、熱し鍛えてを繰り返す。


 コォーコォーと音を立て、送風装置である足踏み式の吹差吹子(ふきさしふいご)から注がれる魔素を帯びた風は炉のサラマンダーを活気付かせる。 そしてそれは、中腰で対座するデルフに容赦なく熱として襲いかかる。 


 (よし、良いぞいい感じだ! 魔王様の鱗をベースとして溶かして他の素材を混ぜ鍛えた金属そう名付けるならば『アスモダイン』、魔王の中の魔王という意味の『アスモダイン』には不純物、余分な元素はいらない。 そう炭素すら必要無いんだ、つまり吸炭すらさせない! サラマンダーさんには無理をさせるけど、あえて不完全燃焼状態を作らず炭素一切を排除した地肌は、へし折り鍛え上げた層に浮き出す純粋な魔素の輝き最高の美しさが生まれる筈。 鍛え殺ししては終わりだ、小鎚と大鎚の使い方は師匠に叩き込まれた、集中は切らさないこの腕が動かなくなろうと最後まで一気に仕上げて行くぞ!)


 デルフの頭では動作と同時に魔刀の構造が組み上って行く。


「何て事だ!今まで俺達が手伝ってやっと作成出来ていたあのサイズの刀を、こうも軽々と持ち上げるとは……いや、それだけでは無い! 火を使う作業において勘と経験は当然の事ながら、しかし一瞬の判断ミスが失敗へと繋がる中、そこへ大鎚の振り下ろしの強弱、角度がこれまた繊細かつ豪快で的確!! 小鎚にいたっては角が当たらない様に面で的確に形どっている!何ていう手際の良さだ! 聞くにアレは魔王様の素材との事、なんという度胸!!」


 全力でキハーダの行く手を阻むオカシラは、デルフの流れる様な作業に興奮が治まらない。


「あぁオカシラ、替えのきかねぇこの場面、俺であれば鎚を振り下ろすその一刀一刀に躊躇が生まれるだろうぜ……全く、今なら理解出来る流石だぜガルシアさん、貴方の弟子(インプ)はよ。」


 ランボーもオカシラの言葉に同意する。


「カァー、うるせぇーなオーガ!魔王様の素材だと!?なに言ってんだオマエら? あー、訳がわからねぇよ! そして、オッサンオーガ!!てめぇどんなボリュームで声を出してんだフォルテッシモを越えてんぞ!頭がガンガンしやがる。」


 身動きの取れないキハーダはオーガの二人を殴り暴れていたが、オカシラの大声量に耳を抑え頭を抱える。

        

            ・

            ・

            ・

            ・


「ハァハァ、やっと力付きやがったか……ふぅーもう朝だ、オーガにしたら粘ったね、もしかして君達キングだったりして? あー、もう気絶して声も出せねぇーよな、ハハハッ よし、それじゃ、挨拶と行きますか?」


 疲れて肩を揺らし呼吸を整えながら、仕切り直してデルフの元へ向かおうとするキハーダ。


「出来た……」ふっと呟やいたデルフの言葉を耳にした、キハーダの背筋がゾッとする。


 その工房がいや、この空間が重たく沈む様な錯覚にキハーダは立ち止まり、額から嫌な汗が流れ出す。


 すると、目に入ったデアデビルの手に握られた紫色の太刀それはまるで魔王の翼そのものの様に見えた。次の瞬間、煌々と灯っていたサラマンダーは姿を消し、朝である筈なのに部屋は灯りを失う。


「光りを奪っ、た!イヤこれは魔素を━━━不味い!?」


 キハーダは何かを察知して、床に転がるオーガ共を拾い上げる。


「ヤバい!ヤバいぜ!風音操作魔法(リエアードコンダクター)、緊急離脱!『ソニックムーヴ』!!」


 凄まじい衝撃波に乗って、工房の壁を貫きキハーダ達は外へと吹き飛んだ。


 キハーダ達がその場から離れてから、1、2秒後に工房から紫色の閃光と熱波が放たれた。


 工房は掻き消えて、そこには縮んだデルフがちょこんと立っていた、その足元には魔王の魔刀が転がっている。


(どうしよう……これは一体、この魔刀は……ボク、魔王様に殺されるかも)


「『極位天魔刀・ガルディオン』」━━━━━━━



 爆風に乗って叩きつけられた痛みでオカシラとランボーが眼を覚ます。


「いてぇ……はっ、()ぇ!?……ガルシアさんの鍛造工房が無くなっちまった……」


 ランボーは目の当たりにした光景に、怒りを通り越して崩れ落ちている。


「おっおい!デルフの旦那無事なのかい?」


 オカシラは傷を負った頭をかかえながら、きょどきょどしながら立ちつくすデルフに駆け寄り声をかける。


「ええ、僕は大丈夫ですが……」辺りを見渡し涙ぐむデルフ。


「大丈夫なものか!一体、何やったんだ!? お前は魔刀を作ってなんじゃねぇのか!鍛造工房が跡形も無く吹き飛んでいるのに何でてめぇは無傷何だ!!!」


 『大丈夫』の言葉を耳にしたランボーが、物凄い勢いでデルフに迫ると肩を持ちブンブンと前後へ振り回す。


「はっはは、こいつはスゲーや……コレが魔王様の魔剣の呪詛(カースド)か!インプ!!」


 緑青の鎧に付いた埃を払いながらキハーダがデルフに問う。


「いい、いや、ち、ちがう、うと思い、まふ。」


 ブンブン揺すられ涙を振り撒きながら、デルフが答え出した所でランボーも話しを聞く為、揺するのを止めた。


「どういう事だ?」


「爆発が起こる前に確かに『食い過ぎたぁー』と聞こえたのでゲップではないかと……えっ?あっ、はい!すみません!ゲップでは無くオナラだそうです……」


 デルフは話しの途中でチラッと、地面に転がる魔刀を見ると言葉を訂正する。


「「「……()?」」」


 魔刀が屁をこいたという、ワケのわからない返答に三人ともポカンとしている。


「ええ、ゲップでは無いと怒られました……」


「武器がおこ、っいや、はははっ、そいつはスゲーや! アレが()だってか♪そんでもってソレはあのデアデビルだったお前が作ったのか?」


「ええ、工房が一棟(ひとむね)無くなってしまいましたが……」


「ははっ!建物一軒位なにさ、まだ、沢山あるじゃねぇか? それにそんなものガルディオンさんに言えばポンっと建ちまうさ! オレは剣と刀が何が違うか何てわからねぇ、オレにとって武器は種類が変わろうとただの武器だ……だがな、オレでもスゲーかダセーかの区別はつく!お前の作るモノは確かにスゲー!超スゲー!!なぁ、インプ!いやデルフ君さぁ~、楽器とか作れるかい♪」 


「えっ、う~ん楽器はちょっと~師匠の書庫にも文献が無かったので作り方がわからないから……うん、今無理ですね!」


「お!?キッパリ言うねぇ~ちょっとビックリしたぜ!死にてぇの、ははっ♪ でもソレってさぁ~楽器の作り方とか教われば作れるって事でいいのかい? まぁ、欲を言えば弦楽器か管楽器いいだけど、音が出れば何でもいいだよ!竜人ってのは歌い!踊り!音楽を奏でるんだ!」


「えっ、あっ、はい可能ですが、構造や仕組みと機能を理解して図面があれば形にはなると思いますが楽器にはあまり興味が無いので、どんな音が鳴れば正解かわからないと思います。 もしくは実物を持って来て貰えればソレを分解して厚みや素材の重さや硬さ、粘り強さ調べて素材を集めれば、近い物を作れる可能性はあります。 ですが、それでも完成は50%にも満たないでしょう。 師匠の機械を使用すれば金属コーティング等の鍍金(メッキ)や表面加工は出来ますが、接着剤や塗料等のコーティング材はありませんし作り方もわかりません、製作する為の環境あっこれは工房とかではなく製造過程での温度や湿度も影響して来るって事です。 ボクは金属加工ならどの分野でも自信はありますが木材や裁縫となると完全な素人、キハーダ様の期待する楽器が作れるとは思いません。」


「あー、何言ってのかさっぱりで途中何度か、ぶん殴ってやろうかと思ったが、理解が出来る所を繋げると、つまりだ! オレが楽器を作れる奴を連れて来る、次いでに最高級の楽器も持って来てぶっ壊す! ぶっ壊した楽器と同じ、イヤ!それよりも上等な素材を集める。 そして金属を中心としている管楽器なら作れる!そう言う事だな!!よし、親友(アミーゴ)頼んだぜ♪」


「ええ!?何か違うような気がしますが、あっはい分かりました……」


「おいおい、そんなポンポン依頼を受けて大丈夫かい旦那?ルギナ様にライオット様それにザイアス様の武器もまだ出来て無いのにどうすんだい?」


 オカシラがやれやれという感じで話に入る。


「話しに水を差すんじゃねぇよオッサンオーガ!まっ、しかし順番待ちなら仕方ねぇか? だが、武器を作り終えたら直ぐに楽器を手掛けくれ!良い楽器が出来上がったらオレも含め龍谷の村(シャンドラ)演奏者(ソリスト)達にも楽器を仕立てて貰うぜ! 勿論!相応の対価は支払う素材集めだろうが、何だろうが構わねぇ! よし!!じゃあ、さっそくドワーフ辺りで腕利きの管楽器職人を見つけてくるぜ♪」


 キハーダはバサッと折り畳まれた翼を広げて、砂埃を巻き上げながら飛び去った。


 デルフとガルシアは飛び去ったキハーダを見つめ何だったのだろうと首を傾げている。

 気持ち悪い位に静かだったランボーは難しい顔をしたまま魔刀を見つめていた。 



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