第五十二話 動き出した者達(2)
ふぅー、やっと書けた(形になったー)(^-^) まあ、他にも動いている人達もいますが、この話でデルフに戻ろうと思います。 いつも通り、ミスが多いので修正しましたm(__)m
~リーディア法国領の名もない開拓村~
小さな掘っ立て小屋の教会の外で、一人の神父が村の子供達に神書を読み聞かせている。
「これは珍しいお客様だ。話の続きはまた今度にしましょう! さぁ、シスターからお菓子をもらって来なさい。」
年老いたシスターが子供達を連れて行こうとすると、村の神父の前に法国の神官が現れた。 神父は顔を上げて神官の姿を視るなり、村の神父は神書をパタンと閉じ、「えぇ~デイ神父様もっと遊んでぇ~」っとせがむ子供達をその場から温かい微笑みで上手く受け流し優しく手を振る。
「探しましたよ……今はデイ・バーノ神父でしたか? 教会から言伝てを預かっております。」
「その声は確か君はサティス君でしたね? フゥ、書面では無く……伝言ですか? ここでは話難くそうなので場所を変えるとしますか?」
っと言うと、神父は切り株の椅子から立ち上がり、ゆっくりと村の外れまで歩いて行く。
少し驚いた仕草をすると、神官は魔力の根源色とされる緑色の祭服の縁取りに銀の刺繍が施されたフードを脱ぎ、バーノ神父の後を追った。
この間、お互い一言も話しをする事も無く、法国の神官は村の外れにある墓地近くに着くなり、バーノ神父に刺すような鋭い視線を送る。
「視線が痛いですね。 あぁエヴァーいやキャンティーですか? それとも、ノインかエルメニア? んっ、違いましたか? では、レベッ━━━━」
元聖騎士レベッカ・ルーシャンの名が出る前にサティス神官の怒号が墓場に響く。
「貴様の様な悪魔が!その汚らわしい口で彼女達の名を呼ぶ事は許さない!!」
直後、サティスは『トランスポッド』を構えた。
「何を言っているのですか? 私が悪魔それは逆ですよ? 彼女達やリスト、ロラン、ハルメンも私の行いを粛清する等という事を言い出したのですよサティス君、神の勅命を受けた私に剣を向ける事こそ悪……イヤ、この話は要りませんね……そんな悪魔達の為に法皇に救われた命を無駄にするとは……サティス・ベルヴェイ聖騎士、残念です。」
「馬鹿にするな、何が神の勅命であるものかァ!! 貴様のした事は只の惨殺でしかない!!」
「私が君を悪魔達を馬鹿にしている? それは少し違うな、全ては表裏一体、私は一度たりとも君も含め彼らを馬鹿にする発言はしていない、私が起こした行動を見て君がもし馬鹿にしたとそう思うのなら、それは君、自身が私を只の人殺しと馬鹿にしているのだよ。」
すると、サティスは構えたトランスポッドから武器を呼び出す。
「戯れ言をッ!」
空に一線の光が飛び、サティスの目の前で光が止まり聖剣が地面にゆっくりと突き刺さる。
「両手剣とは、私の速さは知っているでしょう?」
「知っているさ! 精霊を操る精霊使い、そして何よりその手に握られている見えざる武器も……」
ハァっとため息をつくなり、バーノの身体が光に包まれ姿が消える。
「精霊によるリポートか!! だが!貴様の狙う場所は決まっている!」
サティスは地面に突き刺さる大剣を抜き額を覆い隠す様に守ると、見えざるバーノの武器を確かに受け止める。
「さあ、貴様の神器とやらがどれほどの禍々しい姿をしているのか?見せて貰うぞ! 『引き剥がせ!ファルシオン!!』」
サティスの持つ聖剣ファルシオンの浄化の光が、バーノの持つ武器のヴェールを剥がして行く。
「そうですか、貴方には永劫見ることの出来ない、私の神器を警戒してそんな大剣を……愚かな。」
そう呟くと、バーノの武器が神々しく輝き辺りを覆い尽くす。
「何だ!目がァ!!」
その光がサティスの眼を焼き視界を奪う。
「ハァー全く、見えぬモノを無理矢理見ようとするから失明なるのですよサティス君、共に神に仕えた身せめて苦しまずにと思ったのですが……うん、まがい物ごとまとめて貫きますか。『汝、火の精として立ちはだかる者をその熱を持って熔化せよ、アグニッシュ・アブソード』」
サティスは僅かに瞼を開き確かに受け止めた何かとファルシオンが接触している所が赤々と溶けだすのを感じている。
「不味い!!ばっ馬鹿な聖剣が溶け、なっ足が地面に!! にげっ、クソッォオオ! イーデン・エアハート!赦さんぞぉっあがぁあああー」
サティスの足はいつの間にか地面にめり込み逃げる事が叶わぬまま、その眉間を何かに貫かれた。
「私はこう思っている肯定する事こそ慈悲なのだと、君は顔を隠し私の前に現れた時点で自分の行いを否定していたのだよ……君を許そうサティス・ベルヴェイ。」
イーデン・エアハート、聖騎士長であった彼は自らの神の勅命にそぐわぬ者は全て悪魔として、眉間を貫き惨殺を繰り返した事で、未だに捕まらない殺人鬼『イカれた串刺し狂』として世に知られていたが、ある日を境にデイ・バーノと名乗り身を潜めていた。
イーデンはサティスの亡骸を物色して、封筒を取り出すと中には手紙が入っていた。
「やはりありましたか。なるほど、聖女の捜索依頼ですか……」
~フィルムバーグ共和国、アーキナイト商会本部~
「どう言うことだ!! グランゼールについでインデルバルまで、たった一夜で滅んだだと!! 糞が!金庫のグランゼ貨幣はもう無価値に等しい! 金属への売却も済んでいないというのにパーチ、直ぐにインデグラスを買い集めろ!!!とくに貴重な『インデル・ブルー』を優先にな!」
『インデル・ブルー』とは基本的に翡翠色をしたインデグラスだが、僅かな熱の入り具合によって青くなったモノの事を言う。 狙って作ることはとても難しいので青色のインデグラス『インデル・ブルー』は最高級品とされている。
「畏まりました!直ぐに手を回します。では『交渉の方法は問わず』っと伝えておきましょか?」
「ああ、やり方は各々に任せるとも言っておけ、しかし足元を見られるな!決してしくじるなとも……それと天才には発想力、エリートには行動力、指揮官には判断力と決断力が求められる。言いたい事はわかるな?」
「はい、それら4つの力を持ってこそアーキナイト商会の傘下である事を許される、しかと全団体と本部の幹部達に通達して参ります。」
アーキナイト商会の幹部パーチ・パチ・クラッカーが部屋から出ようする。
「ああ、待て忘れていたリストーラ商会のヴァイン・リストーラとネルシュ商会のネルディン・トゥーブーシュには期待していると伝えくれ。」
「強欲と貪欲……欲商の御二人、畏まりました。」
「それと、私はこれからW・Wの最新モデルを売り込みにクロムヴェル卿の所へ行って来る。」
「おお、ラーハ様に融資に宣伝とあの御方には本当に感謝するかぎりですな。 それでは、私も皆に通達した後イベントで稼ぐとしますか? ハハハッ」
「頼んだぞ、このままではいくつ団体が潰れるかわからない……マイナスになっていい!いや、最早マイナスだ!投資して巻き返すぞ!!」
一礼すると、パーチは部屋を後にした。
「はぁ、アイリス! お前は一体何をしていた?」
「クゥーククッ、魔王軍の鍛冶士オーガのガルシアがあんなモノ作れる何てアタシは知らないわよ。 フィン、何でそんな話し方してるの?」
パーチが出て行った後、呼ばれて別の小さな扉から現れた女型の小悪魔がクスクスとアーキナイトを小馬鹿にしながら話し始める。
「ワイかて、あないな喋り方しとったら疲れるわ、せやかてこない、なまっとたら幹部やら他の者に舐められてまう。」
「クククゥッ、確かにカッコは付かないわね。」
「それよか、何やその口の聞き方はァ! 」
「悪かったなァ、しゃーないやろ悪戯っちゅうもんはどうにもならへん! ワイの性格はクククゥ」
「真似すな!アホか!直そォ思っとらん時点でスキル何てもん関係あらへんわ!!」
「まあまあ、そー怒らないで、アタシの性格がどうであれ、使い魔の契約には逆らえないのは知っているでしょ?」
「ドアホォ!! 怒らしとるのはオマエや! まぁ、使い魔の契約がある限りオマエはワイの物やからな。」
「あら?いつからアタシがアナタのモノになったのかしら?」
「ハァ、レティクラタの服は僅かに残った鱗を、フリージアの髪止めはオマエの角を隠す効果がある。 それに加えて、ルテスケンスの靴には脚力強化がグラジオラスの手袋には腕力強化が、イクシアのピアスは魔素の感知阻害、サフランのバックの中には替えの魔晶石を詰めてあるんや! これだけの装備を揃えてやっているんわ普通じゃ使えん!小悪魔オマエの強化の為やァ! それにや!通常銀色の刺繍をあしらうところを無理を言って金色の刺繍に変えて作らせた。 せやけど、怪しまれんよォ~わざわざ白をベースに! 全ては魔素の少ないインプであるオマエが魔素欠乏症にならない様にだ!!」
「あら、良くもまぁそれだけ早口で怒鳴りながら舌を噛まないわね? 要は私という小さくて可愛い子を着飾りたいだけよねぇ。 ドワーフの奥さんがアナタの事を待ってるんでなくて? ロリコンさん。」
「んなっ!?、ワイはちっこい者が好きなだけや!ロリコンゆな!!」
「それをロリコンって言うんじゃないかしら? まぁ良いわ、それじゃアタシは行くわね。 それから、スコッポリアとウィッチアを連れて行くけどいいかしら?」
「ん? ああ、あの使えないインプ共か、奴らなら好きに使え! オマエと話すとホンマ疲れるわ!」
怒鳴り散らしてクタクタになったフィンラルを見てククっと、小さく笑ってアイリスは部屋を出た。
「ハァー、暗黒大陸の情報をアイリスが何も知らん?……ホンマに何がどうなっているんや……」




