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デモンズ・スミス-魔王の刀鍛治-  作者: ウッチーG
第2章─究極魔刀編 ─
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第五十一話 スタンリー・ダングス(オマケ)


 ━━━━人魔大戦後、スタンリー追憶━━━━


「何をいっている!考え直せお前はあの戦いで多くの民を救ったのだ。」


「申し訳ありません、リングス団長……俺はもう騎士団にはいられない。 民を救ったのは魔軍将と対峙したリングス団長、貴方と竜の軍勢を薙ぎ倒したキルガーロン団長だ。 俺はただ為す術無く仲間を見殺しにした。将来この国を背負って立つ加護(スキル)を持った優秀な騎士達は死に、加護(スキル)を持たないこの俺が生き残った……、加護(スキル)を持たずに安易に戦場に立ったせいです。 鍛え抜いたこの肉体があれば加護(スキル)という才能にも太刀打ち出来ると驕っていたあの時の俺を殴りたい……」


 そう言うと、スタンリーは両手で顔を覆い、その場で蹲った。


「何をいっている。確かに多くの兵が、俺の部下が死んだ……、それ以上にお前は味方を守り抜いたではないか! お前自身瀕死状態だった。 そして、何よりそこに転がる盾の傷を見ればわかる。 お前は最善を尽くしたその上で生き残ったのだ!」


「……すみません、俺の考えは変わることはないですよ。」



           ~10年後~



 グランゼール城下町の酒場、無精髭を生やし王国騎士団にいた頃とはまるで別人ようなスタンリーが酒を飲み酔っ払っていた。


「あっ!なんだと!席が空いてねぇだ!何舐めたこと抜かしてやがる!!こっちは依頼を終えて早く酒が飲みたいんだよ!!」


 辺りを見渡した柄の悪い冒険者達はスタンリーを視界に入れると、なにやらニヤニヤしながら近寄って来た。


「テーブル席が空いてねぇんだわ、そこどけよオッサン。 もう十分飲んだんだろ、っと!」


 若いチンピラ冒険者に椅子から引きずり落とされ、床に倒れ割れたグラスで額から血が流れる。


「おいおい、アストマンやり過ぎだぜハハハッ」


「こいつの加護(スキル)はスゲーぞ! ボコボコにされたくなかったら、オッサンさっさと帰って傷でも治しな!! それ消毒はしてやるよ。」


(スキル持ちか……)


 チンピラ達は酔いつぶれて、額の傷など気になることもなく倒れ込むスタンリーに、テーブルの上に残っていた酒を頭の上からかけ、ケラケラと笑っている。


「リングス殿に伺って訪ねてみたのだが酷い有り様だな、ダングス君。」


「あぁ!!てめぇこのオッサンの知り合いかちょうどいいぜ! そこの酔っ払って床ペロしてる目障りなオッサンを早く外に連れてけや!」


「おい、止めろアストマン!!そいつは王国騎士だ、下手に手を出せば俺達までしょっぴかれるぜ。」


「ハァ、何言ってやがる騎士が恐くて冒険者が勤まるか!」と息巻いているチンピラを仲間達が諭している中、自分に会いに来たという騎士の顔を見てスタンリーの酔いが冷め、次第に冷や汗がジワッと吹き出して来る。


「あっ、貴方は!? 何故このような場所に……キルガーロン様。」


「キッ、キルガーロン!?何て言った!オッサンいっ今、キルガーロンとか……ヒッ!ヒイィィィー」


 チンピラの1人が騎士のヘルムの中を覗き込んだ瞬間、ノックバックして腰を抜かし悲鳴を上げ倒れ込む。


「ホッ本物だぁ!?すみませんすみません、私は何にも関係ありません、悪いのこのアストマンとかいう奴です。こんな汚いオッサンと知り合いだとは!?すみませんすみません……」


「てってめぇ、なっ、何言ってやがるキルガーロン? まさかその騎士があのガネル・キルガーロン? そんな事ある筈がねぇ!! こんな街酒場に、わざわざこんな汚ねぇオッサンを訪ねに王国騎士団の総統が来る筈がねぇだろうが!?」


 騎士はゆっくりとヘルムを脱ぎ、「外に馬車を待たせてある、騒がしくなったので場所を移動しよう。」っとスタンリーに手を差し出した。


 チンピラはその場で固まり青ざめた顔をしているが、キルガーロンはチンピラ達を眼中に入れてもいない。


 店の外でも何だ何だとちょっとした騒ぎになっている、キルガーロンが出て来た時の大歓声は彼の人気を表している。


 大罪人を捕まえに来たとか、スタンリーが違法薬物の売人や犯罪ギルドのボスだとか色々な噂が飛び交っている中、キルガーロンとスタンリーを乗せた馬車が酒場を後にする。


「これは、どういう事ですか……何故、総統である貴方が私などに……」


「それはな━━━━━っと言う訳だ。」


「はぁ……ってイヤイヤ冗談は止めて下さい!そんな事俺に出来る筈が!」


「私がこの鎧(・・・)を身に纏っている時に冗談を言うと思うのかね?」


「いっ、イヤ、ですが…………わかりました、お請けします……」


「そうか、そうかでは頼んだぞ!スタンリー君、君が必要だと思う装備は言うといい必ず全て揃えよう!! ローレリア皇女殿下の護衛心してかかってくれたまえ!ははっは!」


          ・

          ・

          ・


~フィルムバーグ、冒険者組合本部~


「スタンリー・ダングスだ。よろしく頼む。」


「ウィルザードだ。」


「レイソル・カーティスだ、よろしく。」


 おいおい、どうなってるんですか!?キルガーロン様!! 噂の魔剣士(・・・)死神(・・)レイソル、これは何かの冗談か? 単独行動で片っ端から魔族を殲滅している化け物、魔剣を扱う事から本当は魔族ではないか?っと噂される異端児に、組んだパーティーは全て全滅し、必ず一人だけ生き残るという噂の嫌われ者レイソル・カーティス。そして……


「ローレリアです。」


「んっ!?(キルガーロン様の話しでは身分を隠すということじゃなかったか? 駆け出しのソーサラーという事なのに装備はW・W製の上物……極めつけは純白で統一している事、王国のカラーを御召しになられているという事は殿下の方針が変わったのか?)」


「ローレリア?どっかで聞いたこと……」レイソルが呟くと、「きっ、気のせいですよ!私はただ(・・)のローレリアです。」っと、はぐらかすが更に怪しさ増しただけだ。


 おいおい、まさか、あの知略家であるグランゼ王の姫君が身分を隠すのに偽名も服装も何も考えておられないとは……はぁ~本当に何の冗談だろう。まさか、問題児達の子守りをさせられるとは……


 それから、俺は直ぐにサポートに徹した。 直ぐ強襲をかけようとするウィルにタンク、レンジャー、ヒーラーのいるパーティーの基本陣形を教え、レイソルの加護(スキル)、『危険予知』に変化が無いか逐一確認をして決して深追いをさせない様に気を配る。そして、噂に違わぬ魔法の才能を持つが一般市民の常識を知らないローレリア姫の正体がバレない様フォローに回る日々。


 暗黒大陸から出てきた地竜の討伐の時もそうだ、ウィルは噂以上に強いアイツは一人でも大丈夫だろうが、ウィルもゴリ押しの戦闘スタイルよりも陣形を組んで互いにカバーし合う闘い方の方が楽に立ち回れる事を理解して来た様だ。 はぁ、他の冒険者との共闘もこれなら大丈夫だろう。


 グランゼ王から神聖剣をウィルが受け取ってからの、農村を襲うライカンスロープの殲滅作戦も上手く行った。 なにやら、最近ヤンキーみたいな冒険者が何故かガンを飛ばして来ている様だが、気にしないでおこう。


 そんな功績を讃え主要各国が集まる『城惶十二天王国協議会(レムルロニオーレ)』で、ウィルザードの勇者認定が決定した。

 だが、今も俺のやるべき事は変わらない。そう俺のやるべき事は今後も変わる事は無いんだ━━━━。



「早くいけぇえええー!!!」


 そうだ、これが俺達の戦い方だろ!レイソルのプリディクションが見せたヴィジョンから俺がローレリアを護れるポジションへと移動し、レイソルは残党の処理をしつつ、頃合いを見てローレリアの障壁に入る。 ウィルの動きを最大限に生かす戦闘……だが、常に考えていたんだ……それでも太刀打ち出来無い相手が来た時にはどうするべきか━━━


 スタンリーは左手に持っていた重槍ベビーランスを投げ棄て、腰当てに付いていた保管ストックしてある特定の装備を転送魔法(リポート)で呼び出す魔法道具(マジックアイテム)『トランスポッド』を使い、巨大なタワーシールドもう1つ呼び出した。


 そのタワーシールドは神聖属性の光のオーラを放ち、2つのタワーシールドを地面にめり込ませて魔王が放った斬戟を受け止めようとする。


「1秒いや、少しでも長く!あの炎を食い止めてやる!!」


 力を感じる!俺の頭に流れるこのイメージ、そうかこれが!!


「守る事こそ俺の人生(スキル)か……仲間(あいつら)を守り抜くイメージを!魂を燃やせ!『魂浄の騎士盾(キャバリア・リ・ヒート)』気張れや!スタンリー!!!」


 四方を取囲み王国全域を覆う様に放たれた黒炎は1分いや数秒だったもしれない、だが確かに盾を構えたスタンリーに吸い寄せられた、しかし盾が熔けきると同時にその炎の動きも元の流れに沿って全てを溶かし蒸発させて行く。


 しかし、それでもその数秒が彼らを逃がすのには十分だった。

 


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