第四十六話 変種(ヴァリアント)
明けましておめでとうございます! 新年最初の投稿です休みボケで誤字だらけかもしれませんが理解して頂けたら幸いですm(__)m
次はベリルの視点の話にして見ようと思ったので、最後の方に文章を足しましたm(__)m
「躱かせぇーデルフゥウウウ!!!」
「えっ!?」
魔王の渾身の叫びはデルフの耳にも届き、振り返るがそこにはもう回避不可能なまでに近づき剣を振るわんとするベリルの姿が映る。
「ベリル様!?」
次の瞬間、ベリルのフランベルジュがデルフに斬り込まれる。 ボフッその音は前にも聞き覚えのある音、音がしたその先を見て魔王は驚く。
「デルフ!? デル、フが縮んだ……小悪魔に戻ったのか!斬られたのか、いや!!しかし!クラスダウンには早すぎる。」
ベリルの剣はデルフに向かって確実に斬り込まれたが、しかし本来の過程であるなら起こる筈が無いクラスダウン、そう斬られて直ぐにデルフの身体は元の小悪魔の姿に戻っていた。
━━━━劣化、この現象は悪魔種にのみ表れる特殊な現象であり、また機能を停止した悪魔がクラスダウンした場合は一度、塵と化してから数日かけて別の悪魔へと生まれ変わる。━━━━
「糞がぁっ!逃がすかぁあああ」
キレたベリルには、もうデルフの姿など目に入っていない、自らの加護により感知した敵の存在そのモノを溶かし尽くすまで剣を振り続ける、最早ベリルは知的で有能な魔王の側近では無く、本能がままに剣を振う魔王軍最強の狂戦士だ。 その剣が縮んだ悪魔を再び斬り付け様と剣筋を変えて襲う。
「逃がす?そうか!デルフはまだ!? アイツを止めるには仕方がないか……(ラークの魔法、音速で飛ばす水圧の極大魔法をイーメジ)」
何かに気がついたガルディオンは暴走したベリルを一撃で止める為にリファルザーを構築するが、魔素が集められるより先にベリルの剣はデルフを目前にして、ぴったりと止まり剣熱は徐々に冷めて行く。
『打ち消せ霊盾』
デルフの後ろから手を伸ばし、すぅーっと現れたのは、透けてはいるがその美貌が存在感を主張する魔軍将が一人そう。
「ルギナ、良くやった!! 邪霊属性上位魔法!!夜行」
魔王は移動速度を上げた転送魔法の上位魔法を使用して、尚もルギナの魔素を蒸発させる結界ごと斬り伏せ様するベリルの側まで瞬間移動をし渾身の力でベリルの顔面をぶん殴った。
ベリルは謁見の間の扉まで吹き飛び動きを止める。
「ルギナ!お前には後で褒美使わす。」
「いえ、私はザナドゥ様からの命により、彼を止める為に魔王様の側近として遣わされていたので、責務を果たしたまでにございます。」
頭を垂れ片膝を付き伏して弁明する、その所作全てが美しいルギナをおいて、即デルフを抱え上げる魔王ガルディオンその千切れた筈の左腕はもう既に生え替わっている、良く見ると左目の回りには血が付いているが目は開いており、尻尾も生え、翼にも毟り取った羽根が生え揃っている。
「無事か!?デルフ!」
「うぅ、何が……わあぁ!?ベリル様が!フランベルジュに斬られる!! あれ、斬られていない……うわぁ魔王様!?」
混乱して、魔王の腕の中で一瞬暴れたデルフ。
「おぉ!!やはりデルフ、お前のままか! がしかし小悪魔に戻ってしまった……」
クラスダウンした様に見えたデルフであったが、元の記憶を宿したままだった。 ガルディオンは大人しくなったデルフを腕から降ろし頭を抱える。
「魔王様!!そのこれを見て下さい!!!」
「デルフ!!今、俺はお前をクラスアップさせる次の手段を考えなければならんのだ!!! 少し黙っていろ!!」
デルフの記憶が、究極魔刀への道が消えたわけでは無いがデルフが小悪魔に戻ってはどうすることも出来ないと考えを巡らせるガルディオンに取って、デルフの無邪気に叫ぶ声は鬱陶しくて仕方がなかった。
「えっ?でっでも魔王様!!これを━━━」
「五月蝿いと言っているのが聴こえんのかぁ!!! はぁ、えっ?」
ガルディオンが目にしたモノそれは、デルフがガルディオンが抉り取った眼球を拾い上げている姿だった。
「おおおお、お前ぇえ!俺の素材を持てるのか!?」
「はっはい、ふっと素材が傷む前に何か容器に保存しなければ、と思い咄嗟に手が出てしまったのですが、普通に触れることが出来ました!一体、私には何が起こったのでしょう?」
「ふっ……フッハハハーそうか!変種だったか!! デルフ!お前は本当に俺の想像を超えて来る。」
「ぼっ僕が変種!?あのフルスパーダ様やウルズス様と同じ変種……」
変種とは、過去に存在が確認されていない種族のことをいい、また生まれた時点で魔族、魔物、魔獣は皆自分が何者であるか把握して生まれてくる。 希少種や亜種と呼ば者達も自らの種族は理解しているがその概念から外れた本当の意味で新しい種族とされる。
「それで、名前はどうする?」
「名前ですか? デルフのままで大丈夫です♪」
魔王の問いに、デルフは両手ですくい上げた眼球をとても大事そうに持ちながら満面の笑みで答えた。
「そうではない!種族名のことだ、フルスパーダならデュラハンと同種であるが剣に取り憑いた前例が無いため変種『ソードエビル』と名乗っている。 見た目が完全に変わらないウルズスは頑なに『ライカンスロープ』を主張しているが、『同族殺し』と恐れられていたアイツの加護【猛毒汗腺】は、種族加護でなければ吸血鬼同様、【不死】の加護を持つウルズスの身体は生きながらに腐敗し崩れ、その場で魔素が散って行くのを待つのみの植物状態であっただろう。皆も知っての通り間違い無く変種だ。」
「僕は……何も変わった感じは無いのですが……これからも小悪魔で大丈夫でしょうか?」
キョロキョロと自分の身体を見渡して、心配そうに答えた。
「うん?変わったじゃないか!お前のその角、確かにわずかだか禍まがっているぞ。 まあ、お前が小悪魔と名乗りたければそれでいいが……」
何故か、ちょっとつまらなそうな感じで魔王は言った。
「では、変種小悪魔のデルフ早く究極魔刀を作れ、俺も心臓の傷穴以外は治ったからスカーレットヘルに魔銃を届けてやるとするか。」
ガルディオンは身体を動きを確認して円テーブルの上に置いていた魔銃を手に取ると、ニヤニヤと嬉しそうにほくそ笑む。
「ハイ、分かりました! 素材を運ぶ為に何か入れ物貸して頂けると助かります。」
デルフも遂に夢にまで見た最強の刀を作ることが出来ると破顔する。




