第四十一話 デルフ救出作戦!?
その頃、魔王城ではデルフがヴァンパイアロードに連れて行かれる所を見ていたオーガ達が騒ぎ立て、ガルディオンの耳にも入る事となりライオットの証言もあり、悪魔貴族の領域オーバーケイル深層、吸血貴邸への進軍の準備が進められていた。
「失態だ!!究極の魔刀の話で、デルフに監視を付けることを忘れていた。 まさか、本当にデルフ連れて行かれるとは……、糞が!!」
ガルディオンは苛立ち、玉座から立ち上がると玉座を蹴り飛ばし粉々にした。
「落ち着け、まさかヴァンパイアロードが小悪魔ごときを連れ去る為に魔王城まで来るとはワシも思わんかったわ。 しかし、ガルディオンお前は魔王になる前に一度ヴァンパイアロードに敗れている!イルガディスも最早使えんのであろう? どう、奴を倒すのじゃ?」
「ザナドゥ!お前も観ていただろう! デルフは小悪魔だが、特別だ!デルフの作る武器は何が違う!! そして武器は力を求める者を魅了するヴァンパイアロードが必ずデルフを必要とする事は分かっていた……俺が最上位達にイルガディスを見せたのは暗黒大陸統一の突破口をアレに見出したからだ……失敗だ!まさかヴァンパイアロードがこれ程までデルフを求めるとわ……。」
ガルディオンは壁に掛けられた、力を失ったイルガディスを見て肩を落とす。
その時、謁見の間の扉を叩く音が聞こえる。
「入れ!」
部屋へ入ったのはベリルとライオットだ。
「ベリル、腕は無事に生えた様だな? で、直ぐにでも行けそうか?」
「はっ!言われた通りに、幻影魔団3000騎、死霊騎士団7000騎、不死の軍勢500騎、そして私の部隊である暗黒騎士団800騎も含め、ガルシアの魔武器を扱えるだけの力を持つ者は全員、魔武器を装備させ待機させております。 何時でも進軍出来ます。」
ベリルが進軍の準備が整った事を報告する。
「何!魔王城の守りを固める精鋭、暗黒騎士団の悪魔達も動かすというのか!? この城は一体誰が守る!」
ザナドゥは驚きガルディオンに問う。
「仕方が無いだろう!! 悪魔貴族は純血の吸血鬼、こちらの不死の軍勢とは比べ物にならない力を持っている。 おそらく、数では勝る死霊騎士団も吸血の加護を食らえば役に立たたなくなるだろう。 幻影魔団の幻術も効くか分からん。 俺はザナドゥ、お前とヴァンパイアロードを相手取る予定だ。 他の者達で奴らを止めるには暗黒騎士団も動かすしかあるまい……。 魔王城は迷宮を任せているザイロンの弟だった牛頭族のザイアスを呼び、残った者達に守らせる!」
それを聞き、ザナドゥは大きな溜め息を吐く。
「ふぅー、やはりワシもヴァンパイアロードと闘うはめになるのか? 最悪、コレクションを全て失うかも知れんな……では、死霊騎士団の指揮はベリルに任せるかな?」
ザナドゥは少し嫌そう態度をとり、ベリルを見て出来るか?という視線を送る。
「畏まりました。では、私が死霊騎士団の指揮に尽力いたしましょう。」
「主君、吾が近くにいながら魔王の刀鍛冶を拐かされた失態、如何様な罰でもこの場で受け入れる覚悟であります。」
ライオットは膝間付き魔王を見上げる。
「今はそのような事はどうでもいい!! それよりも、千獣闘壁団の三獣士はこちらに向かわせているのか!!」
「はっ、指示を受け即座に!! 吾が最高の教え子である三獣士! 水魔のレオナ、刻土のレオド、炎駒のレオル、奴等だけであればもう魔王宮の外に着いて指示を待っていることでしょう。」
「ベリル!領地へ帰った魔軍将達へ再び援軍に戻るよう伝令は送ったか?」
「はい、既に魔獣に乗り中位悪魔達が向かっております。」
「そうか、ではついて来い!」
ガルディオンは壁に掛けられたイルガディスを手に取ると謁見の間を出る。 そして、城門に着くと見渡す限りに広がる1万は超える軍勢の前に出て行く。
ライオットは自身の部下、三獣士と話をしている。
「そこにいたか!お前達、お前達に授けたい物がある。」
ライオットが三獣士達に与えた物はガルシアの魔武器であった。
「師匠これは、いったい!? 武器を持てば慢心しスキが出来る己の肉体こそ最強の武器では?」 渡された爪を見て、ジャガーに似た猫人族のレオルが吠える。
「レオル、吾とてその考えは変わっておらん! 今から対峙する相手はお前達にとって確実に格上だ。 これはお前達の更なる成長を考えての事、慣れない武器ましてはガルシアの魔武器は強大故に持つ者を選ぶという、その武器に使われるな! その武器を使いこなせその鍛え上げた肉体で更なる高見に立て! この闘いでそれが出来なければ三獣士の名は棄てよ!」
「そういうことでしたか!さすがは先生この武器は例えるならば私達にとっての重り、重りを持った状態で強敵と対峙することで更なる成長促すという事ですね!!」
食い気味でライオットにすり寄り、話し出したのは鞭を渡された黒豹に似た猫人族のレオナだ。
「ん? まぁ、そうだレオナ言う通りこの闘いで武器を知り、更にその身を鍛え上げろ!」
「了解だ!!こういうのを一度使ってみたかったんだよ!吸血鬼ごとき、この俺様が刻んでやるよ!」
斧を渡された虎に似た猫人族のレオドが斧をブンブン振ってライオットに答える。
すると、ガルディオンの声が響き渡る。
「良く集まった! これは人魔大戦以上の総力戦だ!奴らの中に雑魚はいない! 我が軍の鍛冶士を命懸けで取り戻すぞ!!!」
『ウォー!!!!』
ガルディオンの言葉に振動する空気が肌を刺すほどの掛け声が響き渡る。
「待て!!」 その歓声を裂くほどの声でガルディオンが叫ぶ。
軍勢の目の前に黒い楕円形をしたリポートの扉が現れ、そこから執事姿の吸血鬼に担がれたデルフが出て来た。
「これは、いったい? えーと、皆さん、ただいま……です?」
『 ・ ・ ・ ・ ・ 』
デルフの目には一万超える軍団と魔軍将のライオット、ベリル、ルギナ、ウルズス、ヴィーナス、ザナドゥ、そして魔王ガルディオンが唖然として立ち尽くす姿が映り、何故か嫌な汗が流れる。
「これはこれは、皆様、お集まりになられてデルフ様をお出迎えとは本当にデルフ様はあい━━━━」
吸血鬼が話し出した後直ぐ、デルフの横を何かが掠めたと同時に爆発音する。 そこにはガルディオンがキレて吸血鬼を捕まえた光景があった。
「うん?影、加護か!!実体は館か!!!」
「ご察っしの通りで私はお嬢様の影であります。 しかし、いきなり吹きとばして捕らえに来るとは、かなりお怒りの御様子、その様な状態で聞いて頂けるかわかりませわが、お嬢様からの伝言を御伝えします。」
ガルディオンが抑え付けよとした、吸血鬼の肩の部分は黒い霧のような状態になり、倒れ込んだその状態のまま吸血鬼は話を進める。
「ガルディオン。 デルフは返すわ、少し話をしたかっただけなの。 貴方も無駄なことは止めてお家へ戻りなさい。 とのことです。 では、魔素切れそうなので私はこれで失礼します。」
伝言を伝えると吸血鬼はフワッと全身が闇に溶け消えて行った。
「デルフ!!! お前はいったい吸血貴邸でヴァンパイアロードと何を話した!!!」
「えっ!?えー、それは、あのぅ~。」
デルフはガルディオンにド叱られ、大まかな内容をガルディオンに説明した。
「何!!魔銃、最強の魔武器だと!?━━━━━デルフ!その魔銃とやらが完成したら、ヴァンパイアロードに渡す前にまず俺に見せろ!」
「えっ!?でも、出来たら直ぐに教えろと……」
「いいか!!必ず、俺の元へ持って来い!!!」
「はっ、はい!わかりました……」
「解散だ! 皆持ち場に戻れ!!」ガルディオンが叫ぶ。
「ふぅ~まぁ、ワシのコレクションを無駄にせずに済んで良かったわい。」ザナドゥが呟く。
「まっ、まぁ~こういう時もある! お前達、その魔武器は持って行っていい。 先に領地へ戻っていろ。」ライオットが三獣士に指示を出す。
「おっおい、ヴィーナス大丈夫か?」
何やらプルプル震えながら呟くヴィーナスを気遣うウルズス。
「う、嘘よ……本当に、インプが吸血貴邸へ……」
死霊騎士団以外の者達は皆が腑に落ちない様な顔をしつつもその場から徐々に散って行った。




