第三十六話 真なる魔刀の作成方法
ガルディオンは謁見の間の玉座に座りデルフに声をかける。その横にはもう既にベリルが立っている。
「デルフ、小悪魔のお前がまさかこれほど、魔剣を打つことか出来るとは思ってもいなかったぞ。」
「いっ、いえ、そんな事は……」
「お前のおかげだ!我が魔王軍が人間共を根絶やしにする日も近い、褒美をつかわすぞ、何でも好きな物を言うがよい。」
「いえ、魔王様!私は日々、剣を打つことをお許しいただいているだけで満足しております。」
さぞかし溜まりに溜まっていたのであろう。魔王の横に立っていたベリルが業を煮やしたかのようにデルフに言い放つ。
「この場にいることすら赦されざる小悪魔風情が魔王様の申し出を蹴るなど無礼者!!」
その言葉にデルフはヤバいという顔をして眼を瞑り顔をしかめる。
「まあ待て、ベリル……前にも言った筈だが、デルフはネームド此処に居ても何ら問題は無い、それはお前の考えで、俺の意思ではないな。」
そう魔王が言うと側近の上級悪魔のベリルが急かさずひれ伏し自らの腕を魔王の前に差し出した。
すると、魔王は慕っているであろう側近であるベリルの腕を躊躇なく宙へと素手で切り飛ばした!
うっすらと眼を開けていくデルフに魔王は何事も無かったかのように話を続ける、ベリルは明らかにデルフを殺すような眼で睨んでいる。
「それでは、デルフ!望みは何もないと?」
デルフには深く思い悩んでいたことがあったが、言っていいのかどうかと考え込んでいた。
「欲しい物は無いですが、あるとするなら一つだけ魔王様にお願いがぁ……」
「何だ?言ってみろ聞いてやる。」
デルフはとても言いずらそうにし、ずっと睨みを効かせるベリルの方をチラチラ眼をやった。
魔王はそれに気が付き、ほんの少し笑い言い放つ。
「ベリル、ルギナ、お前たちはもういい下がれ。」
すると、魔王の背後からフワッと現れたのが上位霊体のルギナだった。 透けてはいるが、その美しい女の容姿は魔族だけでは無く人間をも惑わす美貌を兼ね備えている。
「ル、ルギナ様も入らしたのですか!?」突然現れた、もう一人の魔軍将にビビるデルフ。
現れたルギナと、デルフから眼を離そうとしないベリルは同時にひれ伏し答えた。
「ハッ、仰せのままに!」即座にデルフを横切り、二人は謁見の間を出ていった。
「さぁ、デルフ!その望み聴かせてみろ。」
「はっ、はい!では、僭越ながら魔王様はイルガディスを御持ちいただいていますよね?」
「うむ、この『金剛哭刀イルガディス』見事に一撃で国一つ掻き消してくれたぞ!ハッハハァ~」
「それなのですが……」
「何だ?言ってみろ。」
「その~、イルガディスはもう使えないかと……。」
「何だと!どっ、どういう事だ!折れずに今この手にあるではないか!!」
「ハイ……目では視にくいですが、束に少しではありますがひびが入っております。 その束のひびから少しずつ魔素が抜けていたらしく最早、イルガディスの声が聞こえません。 イルガディスを含め、ヴォルガディスもまた、亡くなった魔軍将の方々、その装備やガルシア様の魔武器達の思いが込められていました。これからも折れ砕ける際に聞こえる武器の叫び聞き続けることは私には耐えられません。」
「もう俺の武器を造れんと言うのか!? いや、それは駄目だ!あれはオレの唯一のたの……、じゃなくて一振りで折れるのはお前の作る剣が脆いせいであろう!!(まぁ~、他の魔武器では振るう前に砕けてしまうのだが……)」
「一つだけ、一つだけですが、方法が有るかと……」
「本当か!何だ!?言ってみろ!」
「怖れながら魔王様!魔王様ご自身の素材だけで魔刀を造れば、恐らく完全な決して折れることも砕けることもひびすらも入ることの無い究極の魔刀が出来るかと……」
「何!?俺の素材だと!……究極の魔刀か━━━」
デルフは殺される覚悟で、今考えうる最善で最強の魔刀の作成方法を進言する。 デルフが、あの声をまた聞く位なら死んだ方が楽かも知れないと思ったことも事実。
「おい、デルフ……その究極の魔刀には俺のどの部位が必要だ?」
目を瞑り、頭を垂らしたまま答える。
「可能な限り全ての部位を……」
「何!?全てだと……っうぅぅ~、デルフ!!!━━━━少し考えさせろ。 その間にスカーレットヘルの武器でも作っていろ。アイツは本当にお前を拐いに来るだろからな!」
「はっ!はい!わぁ、わかりました!」
ビビって立ち上がり、ゆっくりと謁見の間から出て行こうとする。
「ちょっと、待て!デルフ、お前はもしや『ラプラスの箱』の話を知っているのか?」
「ラプラスの箱?何ですかそれは?」
「いや、知らないのなら良い行け!」
デルフは言われるがままに外へでて、そのまま工房へ向かった。




