第三十五話 生誕の地
辺りは暗くて、フワフワ浮いてゆっくりと流れて行く感覚ほんのりと温かくとても居心地の良い所に彼はいる。
時折、眩しく光るモノが隣を通り過ぎる。
「アレは何、とても綺麗だ……キレイって何だっけ?」
『すごいね、君はここに居て意識があるのかい?』
「だれ?」
『ボクかい?それとも君がかい?』
彼はその問いの意味が分からないがボッーとする頭の中、何処にいるのかも分からないが、すごく心地よい声で語りかけて来る者の問いに答える。
「ボクは……」
『うん~そうだなぁ~君はぁ~、そうだ! 君はインプ!小悪魔だよ。』
「インプ?ボクは……、えっ、誰だい?ボクに何を?」
『おっ!どうやら君は向こうから、呼ばれたようだ……君はとても面白いね。 特別な君に一つヒントを教えて上げるよ。 下位よりも劣る君たち小悪魔は善くも悪くも種を蒔く、彼処に君が生まれる意味は種を蒔くこと、じゃあ頑張ってね!』
「ボクが『生まれる意味』?━─━━━━」
『行っちゃった、他の子の種の芽生えは遅いけど、彼の種は早そうだ。』
彼は暗く、居心地良いあの場所から、寒く辺りには人やドラゴンなどの魔獣や様々な魔族の死骸が転がり腐敗臭が漂う場所へと生み落とされる。
広大なその平原を彼は一人行く宛もなく歩き続ける。
「ここは何処だろう? イタッ!」
彼は何かに躓き倒れ込む。
「これは、何だろう? わぁーすごい何だろうこの感覚は?」
彼は躓いた物を手に取り眺める、彼の心には言葉に出来無いほどの感動が込み上げる。 そう、それはまるで全てを魅了し圧倒する美しい絵画に出逢った時の様に。
「彼処にもある、あっ!あっちにも!」
見渡す限りに転がる、彼を魅了して止まないソレに囲まれ過ごすこと数日間、次第に変化が訪れる。
「うん?何だい?、主の元へ連れて行って欲しい?━━━いいけど、君はこの死骸から、君の主が分かるのかい?━━━そうなのか?近くに行けば分かるのか━━━」
次第に彼には幾つかのソレの気持ちが伝わる様になる、っと、彼はソレらの望みを叶えて回る日々を過ごす事にした。
「この人がそうかい?━━━━そうか!良かったね。」
彼のしている事は他から見れば、かなりの異質、そうそれを見ていた者が彼に話かけた。
「何か拾い物が有るかとさ迷うて見れば、小悪魔!お前はその聖剣を片手に一人で何を呟いておる?」
「えっ、あなたは━━━━━」
* * * *
「おい!デルフ、起きろ!おい起きろ!殴るぞ!」
それは遠い昔の記憶、ザナドゥと出会った時のデルフがこの地に誕生した時の記憶だった。
「はぁ! 魔王様!?ボクは一体?」
「俺のリポートの魔力に当てられて、意識が飛んだようだな!着いたぞ! 素材はオーガキングに工房へ運ばせている。 話がある付いてこい!」
「えっ、ああ、はい!」
デルフはスタスタと歩いて行くガルディオンの後を追いかけて、謁見の間に入って行った。




