第十八話 弟子って一体何?
「なっ!何言ってるんすか!俺らは小悪魔何かの弟子になる気はないっすよ!」一人のオーガが言うと、皆がそうだ!そうだ!頷く。
「そっ、そうですよね! ボク何かが、でっ、弟子を取るなんて……」デルフはオーガ達の反応にちょっと安心する。
「お前達も薄々気がついていただろが! このまま、たたらの踏み続けても鍛治屋に成れない、それどころか元々ゴブリンの仕事だった、このたたら場で一生を終える事になる!! 俺は御免だ!ガルシアさんも出て行った。 こいつの言った通り、どんなに!どんなに小悪魔の弟子に成ることが惨めだろうが馬鹿にされようが、それが鍛治屋に成る今唯一の方法であるのなら俺はそれを掴み損なうことはもうしない!! お前達はどう何だ!ここで一生終えるのか? こいつの弟子になって一流の鍛治屋としてオーガの集落の奴ら見返したいと思わねぇのか?」オーガの頭の言葉に皆がざわつく。
「おっ、俺は弟子に成る!! そのために村を出たんだ!」オーガの一人が叫ぶ。すると他のオーガ達も声を上げる。
「俺だって!! ずっと、たたら踏んで終わる気はねぇ!」
「この仕事も慣れやりがいも出て来たが、俺は鍛治士になりたい! まだ、成れるって言うなら弟子に成ってやる!!」
そんな中、腕を組んでずっと黙り込むオーガがいた。 そう、デルフを投げ飛ばしたアイツだ。
「お前は一番ガルシアさんの事を慕っていたから、ガルシアさんを追い出した、小悪魔を許すことが出来ねぇのは分かる。 強制はしない……だが、お前がこれからどうしたいかは、お前自身で決めろ。」オーガの頭が、黙り俯くオーガに言った。
何かどんどん勝手に弟子が増えていく、その状況にどうして良いのか分からないデルフはキョロキョロしながら狼狽える。
「実は小悪魔が弟子になったという噂を聞いた時、俺はどうしても我慢できずにガルシアさんに、どういう訳か聞きにいったんだ……」
* * * *
~3年前、オーガの頭の回想~
「ガルシアさん!何故です!! 俺達は弟子にしてくれなかったのに何故、小悪魔を弟子にしたんだ!」ガルシアに問い迫る。
「んっ?何に言ってるんだ? 俺は今も弟子何か取ってねぇぞ? それにしても相変わらず、お前の声はでけぇな!」ガルシアは何の事だと、オーガを軽くあしらう。
「ガルシアさん、嘘つかねぇでくれ!! ゴブリン共が小悪魔に剣を打たせていたって!!」
「そうか!小悪魔!アイツのことか、確かに剣を打ちかたを俺が教えりゃアイツは弟子か!! ガッハッハッ」
ガルシアの笑いにオーガは顔を真っ赤にして怒る。
「ふざけねぇでくれ!!! ガルシアさん何故!小悪魔何か弟子にした?理由を教えてくれよ!」
「いや、ふざけてなんか無いんだがな? 俺は本当に小悪魔を弟子にした覚えは無いんだよ。 最初にアイツがここへ来た理由は俺の作った刀を見るためだった。 それがよー、ほら、まあー、相手は小悪魔だろ! 俺は有無を言わさずにアイツをボコボコにしちまったんだ。ガッハッハッ」
「それがどうしたってんだよ! 小悪魔がいたらボコボコにするのは当たり前の事だろ!!」
「俺もその時はそれが正しいと思っていた……ただ、小悪魔はボコボコにしたその日から毎日、俺の工房を訪れるようになりやがった!だから俺も毎日ボコボコにした! 最初の10日間位は小悪魔が俺の工房をイタズラする前に追い払っているつもりだった。 それもずっと続けば恐怖でしかない!ヤバいんだよ!とりあえず小悪魔は、俺はアイツを恐れてから殴るたび、どんどん体調が悪くなってきて、ちょうどアイツがここへ来てから1ヶ月位か? 俺は考えた小悪魔は最初から俺の打った刀を見に来たって、そんじゃ見せてやればいいじゃねぇかって……」
「ただ剣を見に来ただけの小悪魔を弟子にしたって言うのか!!」
「まだ、話しは終わってねぇよ! アイツはとりあえず何にしても決して折れないそれどころが、俺の心を折っていつの間にかアイツはここで俺の打った剣を見ることが当たり前になった。 しかし、アイツはそんなもんじゃ止まらない来る度、来る度、俺の話た事を完璧に覚えて来る。 だから、俺がゴブリンから交換した書物を読ませた。 わかっただろう?俺がアイツを弟子にした理由が。」
「……わからねぇよ。」オーガはボソッと呟く。
「つまり、俺はアイツを弟子にした覚えは無い! アイツが勝手に弟子になったんだ! 俺はもうアイツに剣が打てると思ったから、自分で打って見たいのなら手伝ってやると言っただけだ! 今、思えばアイツの目の前には、ここへ来た時から俺が剣を打たせるまで、いやこれからも一生、剣の事しか見えていなかったんだろうぜ!ガッハッハッ」終始笑いながらガルシアは小悪魔のことを語った。
「俺達が悪いってのか……」オーガは呟く。
「さあ!たたら場に帰れ、仕事の邪魔だ! 」ガルシアは言った。
「……」たたら場に帰れこの言葉がオーガの胸刺さり、オーガも仕事に戻った。
* * * *
「俺は分かってたんだ。小悪魔がここへ来た時から、小悪魔は俺達の事何か見えてねぇって、何度殴ろうがここへ戻って来るって、だから小悪魔がお前らにボコボコにされて死にかけた時に、わざとオリハルコンをちらつかせた! 死にかけて尚ここへ戻って来れるか? そして、小悪魔はここへ戻って来た。 俺は確信した小悪魔は剣の事しか頭にねぇ大馬鹿野郎だ! だが、だからこそガルシアさんの弟子に成れた! じゃあ俺もその大馬鹿野郎になってやろうって!!」
「おれは!俺は……小悪魔を許すことが出来ねぇ! 俺はガルシアの旦那の仕事っぷりを見れるだけでも幸せだった。 でも!でもだ!それで満足していた自分が今はどうしようも無く情けなねぇ」デルフを投げ飛ばしたオーガは涙を流し手で顔を隠す。
「いいか!俺は気に入らなかったら小悪魔をいつでも殴る!それでもいいな俺をお前の弟子にしろ!!」デルフを投げ飛ばしたオーガはデルフを指差して叫ぶ。
オーガの頭はうんうんと頭を揺らしている。
「えっちょっと!殴るけどいいかって、おかしくないですか!! それに皆さん何でもうボクの弟子に成ってる感じ何ですか!?」デルフは正論を言った。
オーガの頭はデルフに近づき、肩に手を置き抱き寄せて耳元で叫ぶ。
「忘れたか!お前は俺らに命を賭けろ言った! 俺らを弟子にしねぇって言うのならお前も命を賭けろ!!!」
デルフは耳がキーンっとなり、ふらつきながら答える。
「すっ、すみません……弟子に成って頂いて大丈夫です。」
「そうか!そうか! 言っとくがデルフさん!俺達オーガは皆が先祖代々ドワーフに教わったって言う鍛治の知識を義務教育として教わってきている。 ガルシアさんの魔武器に比べりゃあナマクラかも知れないが剣を打つことも出来る。 そんじょそこらの素人と一緒にするなよ そのちぃーせぇー身体じゃあ、それなりの武器しか打つことが出来ないだろ! 俺達も魔王様の武器を造るの手伝だわして貰うぜ!!」ニヤッと笑ってデルフの背中をバンバン叩くオーガの頭。
「えっ!本当ですか!! たっ、たっ助かりますーー!!」デルフは最高の仕上がりを求めるなら、脇差し程度大きさの物した作れないだろうっと思っていたので、デルフに取ってそれは願ったり叶ったりの提案だった。
「そうと決まれば、早速仕事に取りかかるぞ! お前ら精製したオリハルコンを持って来い! 間違えるな!一番質のいい物だぞ!!」
「おぉおおおーーー!!!」頭の鶴の一声でオーガ達は動き出す。




