第十七話 願いは必ず叶う?
デルフはたたら場の扉の前に立つと、深呼吸をして扉を開ける。
「ボクは小悪魔のネームド!デルフだ。 魔王様の命により、魔剣を造る事になった! 昨日、精製したオリハルコンを譲って頂きたい!! 断るのならその命をかけて貰う!」デルフはついに『ネームド』であるという最後の切り札を使う。 しかし、口とは裏腹にその足はガタガタと震えている。
オーガ達は一斉にデルフを睨み付ける。
「小悪魔ごときが!俺達オーガを脅しに来るとはどうやら本当に死にたいらしいな!!」デルフを投げ飛ばしたオーガが言って、デルフにゆっくりと近づいてくる。
(これでもダメかぁ~、あぁ、殴られる、殴られる、殴られる!)
デルフは足がすくみ逃げることも出来ず、オーガが前に立つと目を瞑る。だが、ちっともあの強烈は痛みは襲って来ないすると━━
「何にするんすか!頭!」デルフがゆっくりと目を開けると、デルフを殴ろうとするオーガの腕をオーガの頭が掴み止めていた。
「お前はたたらを踏んどれ、こいつとは俺が話す!」頭はそう言ってデルフの前に立つ、デルフを殴ろうとしたオーガはしぶしぶたたらを踏みに行った。
「昨日はありがとうございました。 あなたのおかげで死なずにすみました。」昨日オーガ達を止めてくれた人だと気がつき御礼を言うデルフ。
「調子に乗るなよ言っておくが小悪魔! 俺はお前を助けた覚えも無いし味方でもない。 いいか!何故!!俺達が汗だくになりながら、昼夜毎日たたらを踏み続けていると思う?」頭はデルフにオーガ達が働いている理由を問う。
「それは、もちろん!ガルシア師匠の造る魔武器をもっと見たいからですよね?」デルフは自信満々に答える。
「馬鹿なのか!! 確かに俺達はガルシアさんの造る武器に惚れ込んでオーガの集落を出た。 だが、それは武器が好きだからでは無く、あの人のような武器を自らで造りたいからここに来たんだ! しかし、ガルシアさんは俺達を弟子にしてはくれなかった。 俺達には戻る場所もなく、このたたら場を見つけここで働いていたゴブリン共を追い出し、ガルシアさんに俺達の熱意と努力を見せつけ、いつか弟子にならないかと誘ってもらえるように、ひたすらたたらを踏み続けていたんだ。 ガルシアさんがいない今俺達は理由無く、このたたらを踏んでいるこの虚しさと苛立ちがお前に分かるか!! わかったらもう二度とここへ顔を出すな……今度来たら、この俺がお前を殺す。」今にも本能のままデルフに飛びかかって来そうなぐらい全身に力がこもりながらオーガの頭が話した。
「何故ですか? それはおかしいと思います。」デルフはその答えに対して異を唱える。
「あっ!何がだ!!言ってみろ!!!」オーガの頭の馬鹿デカイ声がデルフの耳をつんざき、よたよたっとデルフは足をふらつかせる。 他のオーガ達も耳を塞ぐ。
「ガルシア師匠に鍛治職を学びたかったなら、弟子にしてくれるまで死ぬ気で頼めば良かったのでは……おそらくガルシア師匠は皆さんが弟子になりたいという気持ちは少しも感じていなかった思います。 何年ここでたたらを踏み続けようが一生ガルシア師匠の弟子に成れなかったと思います。」
「てめぇ!! 大人しく聞いてりゃあ、好き放題言いやがって!!」休憩中のオーガ達がデルフに向かって歩み出した。 それを見たデルフは(しまった!またやってしまった)っと思った。
「待て!」オーガの頭が両腕を広げて、オーガ達がデルフところへ行くのを止めた。
「頭!もう黙っちゃいられねぇ、そこを退いてくれ!!」オーガの一人が叫ぶ。
「いいから、俺に話させろ! 小悪魔やはりお前もそう思うか……」さっきまでのオーガの頭の物凄い形相は無く!デルフに問う。
「何に言ってるんですか!?っ頭!」オーガ達は驚く。
「えっ?あっ、はい! ガルシアさんは皆さんにからかわれた位にしか思っていないのではないかと……。」デルフは急に大人しくなったオーガの頭にの問いに恐る恐る答えた。
「やはりか……そんな事はわかっていた、俺達は頑張っているとガルシアさんに良質な鉱石や素材を届けて行けば、認めて貰えると弟子の道が開けると……しかし、それは間違いだ! 俺達は一度断らただけで鍛治士になることから逃げた。 そうガルシアさんの側で何かを頑張って入れば、そのうち弟子になれると、そんないつになるかも分からない人任せの賭けに溺れた。 精製すればするほど製鉄技術を鍛えるほど、俺達は鍛治士の道から外れていっている。 そんなことを知りながら目を背けて来た。 鉄屋として認められても鍛治屋には成れない……そんなことは分かっていた。」オーガの頭は目を潤ませながらも毅然として語った。
「小悪魔!!オリハルコンはくれてやる!」オーガの頭は急に叫ぶ。
「なっ何言ってるんですか!頭はどうしちまったんだ!?」オーガ達は頭の話を受け入れるわけにもいかず、戸惑う。
「ほっ!本当に頂けるんですか?」デルフは急な話すぎて、つい聞き返す。
「だが、条件がある!俺達にガルシアさんから学んだ鍛治技術を全て教えろ!!オリハルコンが欲しければ今から俺達はお前の弟子だ!」
「えっ?」デルフが言う。
「えっ!?」オーガ達が言う。
『えぇええええええーーーー!!!!!』全員のえっ!がシンクロする。




