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デモンズ・スミス-魔王の刀鍛治-  作者: ウッチーG
第1章─魔刀作成編 ─
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第十三話 復讐者ウィルザード(4)

 四時間かけたのでだいぶ本文が長くなりました。これでこの(くだり)はとりあえず終わりです。


冒険者組合(ハンターズギルド)本部、診療所の治療室~


「どうして、ローレリアを直せない!」 ウィルザードの怒声が部屋の外まで響き渡る。


「話しを聞けウィルザード!さっきから言っているだろう……ローレリアの身体の火傷が酷いから分かりにくいが魔素中毒症(ディーパー)の症状である黒い斑点がうっすら浮かんでおる。 持って、あと1日だ。もう時間は……」


「諦めてたまるか……この街の医者、全員連れて来い! 範囲系の強化魔法が使える奴もだ! 呪詛払い(エクソシスト)はまだか!!火傷を直せばそれが魔素中毒症(ディーパー)じゃ無いことくらい分かるだろ!! 死なせるか!!!ローレリア死ぬな!」言いたいこと全て言ってウィルザードは火傷に化膿止めを塗り包帯で巻かれ、幾つもの氷で身体を冷やされながらベッドに横たわるローレリアの手を握る。


 そこへノックがして、呪詛払い(エクソシスト)のランシーと名乗る冒険者がはいって来た。


「どうした、早く火傷(カースド)を直せ!」聖水をかけたり、神聖属性の強化魔法をかけたり、何やかんや魔法道具(マジックアイテム)使ってみたりと、ゴタゴタしているランシーに業を煮やしウィルザードが叫ぶ。


「むっ、無理です……。」ランシーは投げやりに答えた。


「何に言ってやがる!どいつもこいつもふざけやがって!! こいつじゃ当てにならない、他の奴を探しに行く!!」ウィルザードは別の呪詛払い士を探しに部屋を出ようとする。


「私が無理って言ってるのよ! 呪詛(カースド)に込められた魔素が強すぎて少しも治る気配が無いのよ!!」ランシーは半ば逆ギレして説明する。


「お前に力が無いだけだろ!」ウィルザードはランシーの言葉を一掃する。


「……」もうダメだと黙るランシー。


「止めんか!ウィルザード!! 落ち込むことないぞランシー、お前は今、この国にいる呪詛払い(エクソシスト)で一番腕が良いから、ワシはお前に頼んだんじゃ。」そう言い現れたのはウラジールだった。


「何だ、じいさんか……こいつが腕利きの呪詛払い?はっ、冗談はよしてくれ! 俺は行く退いてくれ、じいさん。」ウィルザードは部屋の外に出ようと再び歩き出す。


「阿呆が!全強化強制解除魔法(フルバースト・リテイク)」ウラジールはウィルザードにかかる強化魔法を強制的に剥がした。


「うっっ!?ぐぁああああ!!!」その場に倒れ床で這いずり廻るウィルザード。


「オーバーケイルの森に魔族は彷徨いて無いだろうが、魔獣と死霊は出て来たであろうに、そやつらを相手に両手が塞がった状態で良く逃げて来たと誉めたりたいが、靴底は抜けて足はズタズタ、ローレリアやレイソルより火傷は酷く無いようだが、強化魔法の使い過ぎで精神もボロボロそれでよう立っておったわ! 治さないかんのはお前も同じだ!レイソルと同じ部屋で大人しくしておれ!!」


 もがき苦しむウィルザードを別の部屋で治療しているレイソルと、同じ部屋に連れて行くように他の冒険者を呼び指示を出すウラジール。


「ウィル……」っとか弱い声で囁くようにローレリアの声が聞こえた。


「何と!?意識を取り戻したか!」医者が驚きの声を上げる。


「ローレリア!?ローレリア大丈夫だ!安心しろ今すぐ間ともな医者と呪詛払いを連れて来るから待ってろ!!」その声はもがくウィルザードの耳にも入り、痛みに耐え立ち上がりベッドにしがみつき喚く。


「何と強化が切れてもまだ立ち上がるか!? お前というやつは━━」


「そいつを吾が娘から引き離せ!!」その掛け声に二人の兵が部屋に入って来てウィルザードをローレリアの寝ているベッドから引き剥がす。


「おとう、さま?」そう、現れたのはグランゼール国王だった。 その後に、カンザスとフィオレンティーナが部屋の中に入る。


「おお、ローレリア話せるのか!!!」ベッドに歩み寄り、ローレリアの包帯が巻かれた手を握る。王妃はまた娘に出逢えた喜びでその場で泣き崩れる。


「はなせ!離せ!!」ボロボロのウィルザードが力無く兵に抵抗する。


五月蝿(うるさ)い!!そやつを外へ出せ。」王は兵に命令する。


兵達はウィルザードを連れて行こうとすると、ウラジールが持っていた杖でそれを制止する。


「まて、そいつはワシらが連れて行こう。カンザス、ウィルザードを頼む。」カンザスは頷き、ウィルザード抱える。ウィルザードもカンザスに抱えられると抵抗を諦め、ウラジールと一緒にレイソルが寝ている部屋まで連れて行いかれた。


 そのあとすぐに、中にいた冒険者達は部屋を出て行った。


「娘の容態はどうなんだ?」王は部屋に残った医者に言った。 医者はウィルザードに話したまま王に告げる。


「━━馬鹿な……何が神聖剣だ!何が勇者だ!!何が、おうだ……愛する娘を守ることの出来ない力など、権力など何の意味を持とうか。」


「おとうさま、ウィルをせめ、ないで、あの場にいたのは私の意思です。」ローレリアは息苦しいそうにしながら、ウィルザードをかばい、王は黙り込む。


「おかあさま」ローレリアは少しだけ手を上げ、フィオレンティーナ王妃を呼んだ。


「ここよ!ローレリア!!お願い神よこの子を生かして下さい!」王妃は常に涙を溢しながらローレリアの延命を神に望む。


「おかあさま、ありがとう……おとうさまを助けてあげてね」王妃はもう悲しみで過呼吸状態になり、ただただローレリアの言葉に頷いた。


「おとうさま、お願いがあります。」苦しそうに言葉を振り絞るローレリア。


「なっ!なんだ、何でも言ってくれ、さあ早く。」そんな娘の姿を見て王はローレリアの命はあと、どれだけ続くのだろう。叶えられる望みがあるなら、今すぐにでも叶えてやりたいと思った。


「ウィルを、ウィルザードを連れて来て、二人だけにして下さい。」ローレリアは王に願った。


「むっ、あいつだけは……ならん!」さっき思ったこと押し殺して王は自分の気持ちを優先した、その事が更に王自らを苦しめたことは言うまでもない。


「時間がないの……おとうさま、お願いウィルザードを連れて来て━━」ローレリアとても悲しげな表情をして再び王に願った。


 王はもうこれ以上断ることは出来ないと、愛する娘の表情を見て思い、しぶしぶ頷いて兵を呼びウィルザードを連れて来るよう指示を出す。


 ボロボロのウィルザードはグランゼール兵に連れられ王に睨まれながら、ローレリアの治療室に入る。


「ウィル、もうあまり大きい声が出せないの、側に来て。」ローレリアの声にウィルザードはベッド側に立つ。


「もっともっと近くに来て……」ローレリアの声にウィルザード顔を近付ける。


 すると、ローレリアはウィルザードの首に腕を回して、ウィルザードにキスをした。


「こんな姿でごめんね……でも言っておきたかったの、好きだよウィル。」


「何だよ、今さら何で……」ウィルザードはプルプル震えて涙を溢す。


 ローレリアの腕は次第に力が抜け、ウィルザードの首から滑り落ちる。


「ローレリア? おい!ローレリアどうした! おい!嘘だろローレリア!! おい、目を開けろ! お願いだ!目を開けてくれ! 俺はまだお前に返事を返しちゃいないんだぞ!!」


 そのウィルザードのただ事では無い叫びに王達が部屋に入って来る。 王はすかさず、ローレリアの元へ向かいベッドにしがみつき泣きじゃくるウィルザードを引き剥がした。


「ローレリアそんな、吾が娘よ……」王の涙がローレリアの頬を伝う。 王妃は娘の死を受け入れられないのか泣き過ぎて涙がで無いのか、王の側でその穏やかに眠る娘の顔を呆然と見ている。


 壁つたいに立ち上がったウィルザード。


「何が勇者だ!」王は振り向きウィルザードに拳を上げるが王妃フィオレンティーナがその振り上げた腕を掴み、首を振る。


「見てローレリアの顔、さっきまであんなに苦しそうだったのに笑ってる。 その子のおかげよ。」王妃は王を諭す。 王もそんなことは分かっていた、ウィルザードに本当に言わなくてはいけない事、振り上げた腕を下げ握った拳を開く。


 ウィルザードの肩に手を当て王は涙を拭い言った「今まで娘を守ってくれてありがとう。」 今まで強靭な精神力で立っていたウィルザードだったが、その王の言葉でそれは崩れ、その場に倒れ込む。


 そこへ、ウラジールとカンザスが入って来た。


「おい、ウィルザード大丈夫か?」ウラジールが駆け寄る。


「じいさん……ローレリアのやけどを、火傷(カースド)だけでも治す方法は無いのか?」心の支えが砕けてもまだウィルザードはローレリアのために動こうとする。


「……ワシにはどうにも」


 そんな、様子を扉の外から見ていたランシーがそっと部屋に入り言う。


「もしかすると、光浄の巫女が聖水に変えたという湖が本当に存在するなら、そこに行けば呪詛を払い火傷を治すことが出来るかも……」


「セイリア湖か……」王が呟く。


「そこは何処に?」ウラジールが聞き、皆が耳を傾ける。


「シンクの森とオーバーケイルの間にあるセイリア湖、今は幻術魔法を得意とするエルフ達の棲みかになっとる。 頑固な半魔族(ハーフフッド)の彼らが無条件でセイリア湖に入れてくれるとは思えん。」王は頭を抱えて答える。


「行くぞ!吾は行く、ローレリアを、忌々しい魔王の呪詛が付いたまま逝かせる訳には遺憾!! すぐに馬を走らせる用意をしろ!」王はローレリアを抱えセイリア湖へ行く準備を整える。


「俺も着いて行く!」ウィルザードが言う。


「止めても無駄であろうに、カンザス!もし火傷(カースド)が治る可能性があるのならばレイソルも連れて行ってやれ! お前のいない穴埋めはワシがしておく。」


「何よ、ただ二人のおもりも私に押し付けただけじゃない、全く……良いわよやってやるわよ!」カンザスはやけくそに了解した。


 王達は国境を越え、シンクの森に入りひたすら北へオーバーケイルの方向へと向かった。 そして、王が馬の手綱を引く。


「ここだ!」王が指を指した先には一面、ただ果てしなく森が続くだけだった。


「吾はグランゼール国王、ファフニール・フォン・グランゼである!セイリア湖へ向かいたいここを通して頂こう!!」王が叫ぶ。


「まさか、王自らがこの辺境の地を訪れるとはしかし、すまぬがお帰り願いたい。 ここを通す気はない。」何処からともなく現れたエルフが言った。


「それは死んでも後悔しないと言う覚悟か?」ウィルザードは馬を降り、ひびの入った神聖剣をエルフに突き付け言った。 その目は鋭く、瞳孔は血走っている。


「こっ!これはどういうことだ!グランゼールの王よ!!」エルフは怒り王に問う。


「すまぬが吾れもそやつ同じ考えだ、これは頼んでいるのではない!命令だ! すぐにここを通しセイリア湖に招き入れろ!」王はウィルザード咄嗟の行動に乗っかり、一か八かの賭けに出る。ミスればエルフとの戦争となる。


「知っているぞ冒険者!お前の悪名は、確かウィルザードだったな……、仕方無い通せ!!」エルフがそう叫ぶと幻術で目の前に広がる森が無くなり大きな湖とエルフの集落が姿を現した。


「ここがセイリア湖……」


 聖水とは神聖属性を宿した貴重な水のことで、浄化(パージ)と同等の力を持っている。 そして、光が当たる所ではだたの水と見分けることが困難だが聖水は暗がりでうっすら青白い光を放つのだ。 今彼らの目の前にはとても幻想的で言葉にならないほど美しい光景が広がっている。


「ローレリアを!」王が指示を出しローレリアを運ぶ兵は王にローレリアを受け渡した、王はローレリア抱いて湖の中へと足を入れて行く。 ローレリアを湖に沈めると変化はすぐに起こった。


「おお、ローレリア!神よありがとう━━━」ローレリアの火傷はみるみるうちに治った、しかし魔素中毒症(ディーパー)の症状である黒い斑点は身体に残った。


 王はローレリアと湖から上がり、ローレリアを兵に預けその場で土下座をして言った「エルフの民よ。本当に申し訳なかった、おかげで娘は呪詛(カースド)から救われた!感謝する!!」


 そして、カンザスもレイソルを抱えて湖に入る。


「旦那、俺は奇跡を見てるのか……あの火傷が治っちまった。」魔素中毒症(ディーパー)は発症していなかったレイソルは呪詛(カースド)が消え元気を取り戻した。


 カンザス達は湖から上がり、ウィルザードを見るするとウィルザードはセイリア湖から離れようとしていた。


「ちょっ、ちょっと!何処に行くきなの?次はあんたの番よウィルザード!!」


「俺はいい、この(カースド)は治さない……。」ウィルザードが馬に乗る。


「おい、ウィル行くな!俺の加護(スキル)が言っている。」


「レイソル!嘘は止めろ、お前の加護(スキル)は他人の予知は出来ない。 それとこれは置いて行く、王に返しておいてくれ!」っと神聖剣をカンザスの目の前に投げる。


「あんた、神聖剣(これ)無しでどうするつもり!」カンザス叫ぶ。


「知っているだろ、俺が勇者と呼ばれる前に何て呼ばれていたか……」と言うと装備を転送(リポート)する魔法道具(マジックアイテム)を使って黒い刀身の剣を呼び出して、馬を走らせ消えて行った。


「また、戻る気なの……魔剣士ウィルザード。」カンザスは呟く。



 



 これで一章の主要キャラは揃いました。

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