第十二話 復讐者ウィルザード(3)
よくよく考えると、アルフォンソ軍曹は軍人ではないのでアルフォンソ兵長に直しました。
階級に付いてあまり深く考えなかったので、とりあえず下記に書いた感じで行こうと思います。
~グランゼール皇国の階級~
王国騎士団長、ガネルを筆頭にソリューシャを入れ5名いた。
王直属の親衛騎士団、ソリューシャを筆頭に数十名で構成されていた。
王国騎士、一等騎士のみ。
騎士、一等~三等まで(いつでも遠方に駆け付けれるよう馬が与えられる。)
兵長、一等兵士のみ。
兵士、一等~三等まで。
「ハァハァ、抜けた! ここは……。」ウィルが息をあげて声を振り絞る。
「やりやがた、フィルブリッジ、暗黒大陸とフィルムバーグ領を結ぶ物流の橋……。」レイソルのその声に力は無いが心の底からこの橋を見て安堵した。
「おい、ローレリア!お前も見ろ着いたぞフィルムバーグだ!!」ウィルはローレリアを揺すりその景色を見せようが反応が無い。
「おい、ローレリア嘘だろ!」ウィルザードの頭に魔素中毒症の文字が浮かぶ。
「どうした、ウィル……」レイソルが力が無く問う。
レイソルの問いを無視してウィルザードはギルド本部を目指しまた走り出す。
* * * *
~グランゼール領 ローソン砦~
「冒険者組合統括長のカンザス・レクトールだ。グランゼールの件を知っていると見られる者がここローソン砦に訪れていると思うのだが、先の件の事情を伺いたい!合わせて頂けるかな?」
「そのような、者の達は来ておりません。お引き取りを!!」大柄の兵は即答でカンザスの願いを棄却する。
「おい、そんな筈は無い!お前、旦那を怒らせるとこの砦が崩れるぞ!」フィルチがヤジを飛ばす。
「激昂の狂戦士か?脅すつもりでここに来たのなら、冒険者組合のギルドマスターであろうと監獄へブチ込むぞ!」
そこへもう一人の兵が慌ててやって来て、門兵に耳打ちする。
「何! そうか、わかった。 カンザス・レクトール氏の謁見許可がおりた。 私に着いてこい客間まで案内する!」門兵は後から来た兵と門の警備を替わりカンザスを客室まで案内すると言い出した。
「謁見?」カンザスはその言葉に違和感を覚えながらも門の警備をしていたその男に着いていく。
「おい、許可が出たのはレクトール氏だけだ!」っと何気ない顔で着いて来ようとしていたフィルチを制止した。
「ちぇ、見かけによらずケチでやんすね。」とぼやくフィルチ。
大柄の兵はフィルチを睨み付け何かを言おうとしたが、カンザスが一言呟く。「フィルチ……」その一言にフィルチは反応して謝罪すると同時にそそくさに砦の外に出て行った。「すみませんでやす旦那!!!」
「気を悪くしたらすまない。性格はあれでもあいつの情報収集力に敵う者はいなくてね。」いつものオネェ言葉はどこに行ったのか、まるで紳士のようにカンザスは部下の非礼を詫びる。
「いや、心配無用だ。国境を守る任務に着いてからは、あれとは比べもにならない位の性格の折れ曲がった商人や密入国者を相手にしている。 こちらもレクトール公爵家の御方と知っていながら不敬な態度をとったことを御詫びしたい。」
「私はその名棄てた身なんだがね……」レクトールとはグランゼール公爵家の家名だった。知ってあの態度、道理で頑固オヤジだとカンザスは思った。
砦の2階にある一室で立ち止まった兵は扉を二回ノックし、カンザスを連れて来たことを言う。
「入れ!」扉が開き中へ通される。
「やはり、貴方でしたか!グランゼール国王陛下。」カンザスはすかさず、床に片膝をつき頭をたれる。
「カンザス、久しいな! よくここに来たまさかお前がレクトールの名を使うとは思わなかった…… 我が国で起きた事を探っておるのであろうが国を棄て一目散に逃げて来た、吾に知ることなどない。 ━━━吾が宝にしてあの国を任せる筈だった一人娘のローレリアまで置いて逃げた間抜けな王だ……」その威厳など跡形も無く、王は意気消沈していた。
「陛下!国を逃げ出した身でありながら、レクトールの名をお使いした事をお許し頂きたい。 (使える物は使わなくては手遅れになってからでは遅い。)また、私が動いていたのはグランゼールの事件の調査ではなく。勇者ウィルザード一行の捜索であります。」
「なに!」王の顔に血の気が戻る。
「おそらく、陛下が転送魔法される前に転送魔法を使用した者がおります。 その者達は西北、ギルド本部のあるフィルムバーグの方向へ移動した痕跡が残されていました。 私はそれを勇者ウィルザードとローレリア殿下達のモノではないかと推測し、同じ方向に向かう足跡に何か手懸かりが無いかとここローソン砦辿り着きました。」
「実か!!まだローレリアは……ローレリア生きていると!!!」王は椅子から立ち上がり歓喜する。
「これから、フィルムバーグへ戻り周辺の捜索に出ようと思います。」
「まて、吾も行く! ソリューシャよ!お前は残りここの指揮を取れ! 何人か兵をローレリアの捜索に連れていく。」
「陛下!それは━━」ソリューシャは止めようとするが即座に阻まれる。
「お前の父からの援軍がまだ来ておらん、援軍が着き次第!魔王軍を攻める策を考えよ。 砦の兵達も警備だけでなまった身体鍛え直させろ!!」ローレリアが帰らぬ今、王は魔王軍と対峙するき満々のようだ。
っと、何やら扉の外が騒がしい!
「こら、待て!侵入者だ!」「捕らえろー!」兵達が叫ぶ。
「カンザスの旦那!!カンザスどこでやんす!ウィルザードが、ウィルザード達が帰ってきやした!!!」フィルチは力の限り振り絞った大声で砦の中を兵達から逃げて駆け回る。
「お前か!無礼者!!」大柄の兵がフィルチを捕まえ、床に抑え付けた。
「この野郎離せ、お前がいるってことはカンザスの旦那はその扉の奥でやんすか!!ウィルザード達がギルド本部に帰って来たとさっき伝令が来たでやんす。」
「実の話しか!!」扉から一目散に出てきたのは王だった。
「誰でやんすか? ぐふぅっ」
「無礼物!!!」大柄の兵は更に体重をかけフィルチを抑え付ける。
「アルフォンソ兵長だったか?止めよ!吾はそいつの話が聞きたい!」王は大柄の兵アルフォンソ兵長に指示出しフィルチの上から退かせた。
「フィルチ!今の話しは本気なの?」カンザスが言った。
「へい、確かにウィルザード達が帰って来たと伝令に来た者がまだ下にいます詳しい話しはソイツから聞いた方が良いでやんす。」
王とカンザスは伝令から話を聞いて驚いた、ウィルザード達はオーバーケイルの森から歩いて、フィルムバーグへ戻ったこと、ウィルザード達が呪詛のかかった大火傷を負っていること、そしてローレリアの状態が良くないことを。
「ただちに吾はフィルムバーグへ向かう。ソリューシャすぐにフィオを連れて来い! カンザス案内を頼む。」王達はローソン砦出てフィルムバーグ共和国のギルド本部へ向かって馬を走らせた。




