第十一話 復讐者ウィルザード(2)
「魔王の斬戟の魔素が強すぎて俺達は大火傷を負い、転送魔法の目的地点を大きくずれて、この森に飛ばれたってことだ……。」レイソルがウィルザードに状況を話し終える。
「スタンリーが死、ん、だ……」
「ああ、ただスタンだけじゃねぇ、俺もローレリアも後数十分もすれば、魔素中毒症の症状が出て死ぬ……」
「…………」ローレリアは悔しそうに地面の土をグッと握る。
「諦めてんじゃねぇよ!!!俺は絶対にお前らを死なせない!」ウィルザードは地面に転がっていた神聖剣を拾いレイソルに近く。
「おい、何する気だ!!ぐっあああぁぁぁー」レイソルが叫びが森に響く。
ウィルザードは足具が溶けて足をぐちゃぐちゃにしている部分をビビの入った神聖剣で切り離した。
「ローレリア!!傷口に回復魔法をかけて止血しろ!」
「!?わっ、わかったわ!」ローレリアは身体を引きずりレイソルに近づき回復魔法をかける。
「『肉体強化魔法』、『筋力増幅魔法』、『脚力強化魔法』、『全神経系覚醒魔法』『痛覚遮断魔法』今からお前ら、抱えてこの森から出る。 お前達もありったけの強化魔法を使って、魔素中毒症の症状が出るのを引き伸ばせ!!!」
魔素中毒症は体内に入った魔素を循環、排出できないことで起こる病だ。しかし、その一時的な予防法として体内に取り込んだ魔素、あるいは取り込まれた魔素を自らの力にする強化魔法を使うことで緩和する処置が取られる事がある。 魔王城にウィルザードが奇襲をかけた後、ローレリアもグランゼールに帰ってからこの方法で魔素を身体から取り除いた。しかし、魔素濃い暗黒大陸では普通の人間にはあまり効果は期待できないのと、魔素中毒症の症状で皮膚に黒い斑点が出始めればもう手遅れなのだ。
「おい!くっ、ここが……今オーバーケイルのどの位置にいるのかも解らねぇのにどうやって抜け出すんだよ! 何も考えずに俺の足を斬りやがったのか!!!」
「時間がねぇ!まっすぐ進む運が良ければ南のギルド本部に着く、西に行けば海に、北へ行けば氷雪地帯に、東の沼地に出たらお前達と一緒に魔王城に攻撃仕掛けて俺も死ぬ!!!」と言うとウィルザードはローレリアとレイソルを担ぎ出す。
「ちょっと、ウィル本気なの!?」ローレリア戸惑いの声上げる。
「ったく、うちのリーダーは馬鹿で困るぜ……」レイソルは顔に手を当てて涙を隠す。
「行くぞ!!!」ウィルザードは暗黒大陸の森林地帯オーバーケイルを二人を担いで駆け抜ける。
* * * *
~グランゼール皇国跡地 地獄の穴周辺~
「どうなの!転送魔法を使用した痕跡はあるの?」カンザスは巻物のような物に水を垂らし何かを調べている、痩せた男に問う。
「新しいものが1つ……おそらくでやすが、そのちょっと前にも転送魔法を使用したと思われるでやす。新しいものはここへ、古い者はギルド本部の方向へ移動したと魔法道具に出ていやす。」
「ありがと、フィルチ(まだ可能性はあるわ!!)」カンザスは礼を言い、フィルチと言う痩せた男をぎゅぅ~っと抱き締めた。
「ぐっがっあっ」フィルチが苦しみの声を上げる。
「ここにある足跡も、ギルド本部の方向へ移動してる。これはここへ転送魔法で来た者のモノね!(足跡の数を見るに人数は8人、ウィルザード達のモノではなさそうね。ギルド本部との間にあるものローソン砦か……)」カンザスは考え込む。
「かっ、カンザスの旦那どうしやすか?」抱きしめられながら苦しそうにフィルチが問う。
「何か解るかもしれない!また、ローソン砦に戻るわよ。」フィルチをドサッと落としてカンザスが言った。
「へい!」とフィルチが答え、カンザス達はローソン砦に向かった。
中々、主人公出ませんがここの件が終わったら、小悪魔が魔剣作製に入ります。




