第十話 復讐者ウィルザード(1)
勇者ウィルザードは不気味な木が茂る森にボロボロになって横たわっていた。
「起きて!ウィル!お願いだから起きて……」ローレリアの声が聞こえた。しかし、その声にはいつも偉そうに俺を諭す彼女の声には程遠い、とても弱々しいものだった。
「ろー、れり、あ? ハッ!? ローレリア無事なのか!!みんなは!」意識を取り戻したウイルは仲間の安否の確認をした。
「ごめんなさい、無事では無いみたい……」ローレリアの体はひどい火傷を負っていた、しかし、ローレリアは自分の方が重傷であるにも関わらず、ウィルに回復魔法をかけ続けていたようだ。
「ローレリア!?何しているんだ!すぐにお前を回復しろ!」
「無理なんだ!!」横から聞き慣れた声が聞こえて振り向くウィル。
そこには火傷を負った体と溶けた足具で足が再生不能になったレイソルが木に持たれかかり座っていた姿があった。
「ウィル……無理なんだ、もうためしたんだ!この火傷はぐっ、、魔王の魔剣の呪詛のせいでローレリアの魔法じゃ治せない!」
「じゃあ、早く呪詛払いして貰いにこの森をぬけ、よう、?もり、何故?森の中にいる!転送したのか!!ここはシンクじゃないな!この森はまさか!?」
「やっと気が付いたかよ、そうだ……ここは暗黒大陸のオーバーケイルの森だ。俺らが逝く前にお前が目を覚まして良かっぜ。 魔王が魔剣を振るったあの後━━━」
* * * *
~グランゼール回想~
「ローレリア!!周囲に防御障壁を二重、いや!三重貼れ!!」
「おい!ウィル話が違げぇじゃあねぇか!何だあの武器はあんなヤバそうなの見たことねぇぞ!!」レイソルが叫ぶ。
すると、ガルディオンは躊躇無く炎魔刀ヴォルガディスを渾身の力で振るった。
「スタンリー!!二人を守れ!」
「神煌結界壁」ウィルの体から光が溢れ、グランゼールを包む。
「ローレリア、転送魔法を使え! 俺たちを出来るだけ遠くに、ギルド本部に飛ばせ!」防御障壁を貼ろうとするローレリアにレイソルが叫ぶ。
「何にを言っているのレイソル!!ここにいる騎士や冒険者を見殺しにするきなの! それにそんな遠くまで、4人まとめてリポートする何て無理!出来ても3人が限界よ!!」
「無理を通せ!じゃないと全滅だ時間がない!!俺の加護が言っているんだ!!!」レイソルが焦りがその様子からひしひしと伝わる。
「俺がここに残る!」スタンリーが叫ぶ。
「何を言ってるのスタン馬鹿なことは止めて!」
「何に簡単な事さ!!レイソルの加護、【危険予知】は絶対だ、そして今後もこのパーティーに必要になる。残るなら加護を持たない俺がベスト!」
「スタン!!何に言ってやがる! お前なら、4人でも5人でもいけるよな!ローレリア、早く転送魔法を唱えろ!」
「レイ止めろ! 俺は元王国騎士、ローレリア皇女殿下にかあったら、死んでも死にきれねぇぜ!」
「えっ!そんな!?知っていたの!」その当時、幼かったローレリアは王国騎士団の中にスタンリーがいたことを覚えていなかった。
「……みんな知ってたさ。」レイソルが呟く。
その時、ウィルザードの放つ光りの幕にビビが入り、ドス黒い炎がなだれ込む。
「早くいけぇえええー!!!」スタンリーは左手に持っていた重槍を投げ棄て、腰当てに付いていた保管してある特定の装備を転送魔法で呼び出す魔法道具『転送筒』を使い、巨大なタワーシールドもう1つ呼び出した。 そのタワーシールドは神聖属性の光のオーラを放ち、2つのタワーシールドを地面にめり込ませて魔王が放った斬戟を受け止めようとする。
スタンリーの使うタワーシールドも魔法道具のように魔法の効果一時的に持たせることが出来るものだ、魔法の使えないスタンリーにはマストアイテムとなっている。
レイソルはローレリアの手を引き、光り輝くウィルザードの側えと連れていく。
「ちょっと!止めて!!スタンリーーー!!」
「あいつの覚悟を無駄にするな!!!」
スタンリーに黒炎が襲いかかる。まだ当たっていないのにも関わらず、神聖属性の付いた盾は溶け始める。「少しでも時間を稼ぐ!お前達と仲間に成れて良かっぜ!!」
神聖剣の結界が崩れてウィルザードの集中が切れ、神聖剣にはビビっが入る。「何故だ!何故何だぁーーーー」ウィルの悲痛の声は魔王に届く筈もない。
そこにレイソルとローレリアがウィルザードに飛びつく。
「ローレリアいけぇえええー」レイソルが叫ぶ。
「転送魔法!!!」ローレリア魔法を唱え、三人は光に包まれた。 しかし、その光をすぐに黒炎が三人を覆った。
「ぐっ、うわぁーわーーーー!!!」ウィルザード達は魔王の斬戟の魔素に包まれ、不安定に飛ぶ転送魔法の魔法の中で叫ぶ。
ウィルザード達が着いた先、そこは冒険者組合本部から北へ大きくずれた暗黒大陸のオーバーケイルの森の中だった。




