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無一文の悲しい現実




もちろん続けるつもりですよ?これを見る人がいなくてもね・・・・・・

「僕、思うんだ......土下座ワープって名前的にかなり微妙だよね!」


 路地を出て、人で溢れかえる通りを歩く二人組の男女。

 片方は風十。もう片方は案内を買って出てくれたエルである。

 案内とは言っても、エルは貴族。本来は従者を何人もつれていて、自分の行きたい場所には行けないような存在なのだ。つまり今二人は適当に街中をぶらつくだけであった。

 しかしそんな中でも風十は変わらない調子だ。


「何、いきなりどうしたの?」


「ワープ自体はいいと思うんだ。夢がいっぱいで。でも土下座って......今時小学生でもそんなネーミングセンスじゃないよね」


 エルの質問には答えず、風十は一人どこかに旅立つ。

 しかしそんな風十に気を悪くした様子もなく、エルはため息を吐いて、片手で頭痛を抑えるような動作をするにとどめた。やっぱり気を悪くしているのかもしれない。


「そこで!僕は考えた。あの独特の地面に這いつくばるポーズ。それを目にした人たちは途端に虫に向けるような目つきになって、みんなその場を通り過ぎてゆく......そう!土下座ワープ改め『無様ワープ』!これこそがふさわしいね!」


「どう考えてもどっちもどっちよ!!」


 そんな劇を繰り広げながら、通りを進むことしばし。

 とりあえず風十が街を見ようと提案したので、そのまま歩いていただけなのだが、日本ではまず見れないような露店の数々にテンションを上げていた。

 祭りの際に出るような店ではなく、どちらかというと商店街をそのまますべて露店にした感じだ。八百屋のようなものもあれば、魚屋、肉屋、雑貨屋から服屋まで。ありとあやゆる店が軒を連ねている。

 風十は初めの内はそれを見て感動し、感激し、あっちこっちに動き回っていたのだが、とうとう飽きてきたのか今ではどうでもいいことに思考を費やす愚物になっていた。


「それにしても暑いわね......こんな気温の中よくこれだけ人が集まったものよ」


「そういえば確かに......」


 ふむふむと同意する風十。でも全然暑そうには見えない。その姿にエルはイラッとしたけれど、貴族なのでぐっと堪えた。

 と、思っていると、今度は風十が勝手に駆けだした。野菜や果物が並べられている店先に赴くと、楽しそうな笑顔のまま、鉢巻をしたガタイの良い男、店主らしき人物に話しかける。


「あ、おじさん、ここって八百屋?随分涼しいんだね!」


「おうよ。魔法様様ってな!生鮮食品扱ってるもんで、こんだけ涼しいと大助かりだ」


 風十に続いてエルも店の前まで近づく。すると途端に吹いた冷たい風に華麗な金髪が揺れた。


「あら?さすが魔法都市。こんなところまで恩恵にあやかれるのね」


 どんな原理なのかはまるで分らないが、魔法とはそういうものだ。

 風十もふらふらと動き回っていたが店の中にまでは入ったことがなかったので、これほど涼しいなんて気づかなかった。

 はしゃぐ子供のようにそのまま客の誰もいない露店内に侵入すると、綺麗に並んだ品物を物色し始めた。


「これは......みかん?.......なんか全体的に暗い色なんだけど」


 そのうちの一つを手に取ると、恐ろしいものでも見つけたように動きが止まった。風十が手にしたのは形や柔らかさはまるでみかんのようなのに、色だけがなぜか黒っぽいものだった。


「みかん?じゃなくてそれはシーラ。夏季の果物としては有名ね。甘酸っぱくておいしいのよ」


「そ、そうだよね......みかんは冬だもんね」


 風十としてはこたつとセットでイメージが沸き起こるのがみかんである。故に冬。

 しかし何度見ても恐ろしい。なまじみかんという先入観があるせいで、これを食べようなんて思えそうになかった。


「どれどれ......?一応値段も気になるよね」


 そう言って風十は傍に立てかけられていた木の板を覗く。多分これが値札だろう。

 しかしそこで再び風十は固まってしまった。


「な、何語?昔テレビで見た古代文字が確かこんな感じだった気が......」


 そこに書かれていたのはかくかくとした線だ。少なくとも風十には一瞬文字とすら認識できなかった。

 しばらく見つめて、かろうじて数字だろうところは判断できたが、それがいくらなのかは全然分からない。


「何って、これ世界共通言語、シレイシア語よ?あなた、思った以上に学がないのね......」


「ちなみに値段は八十ラントなんだが、ここはひとつ七十ラントまでまけてやるぜ?買ってくかい?貴族様のお連れとあっちゃあ、こっちも媚びを売らなくちゃならないからな!」


「まあ、それをその貴族様の目の前で言うのかしら」


 ガハハ、と豪快に笑う店主。エルも合わせて上品に笑う。普段の風十だったなら、ここで一つボケでもかますのだろうが(本人はボケようと思っていない)、今はそれどころではなかった。


「ラント......ラント。らぇんとぅ.....ぇんぅ.......円!そう、たぶん聞き間違いだよね!あ、これで足りる?」


 無理やりの変換。風十は気付かなかった振りをして、背負っていたリュックから百円玉を一枚取り出した。

 別に食べたいわけではないが、どちらかといえば記念品みたいなものだ。この色合い的に腐ってもわかりにくそうだし、誰かにいたずらするのもいいかもしれない。


「あ?なんだ、こりゃあ?見たことない硬貨だな。とてもじゃないがうちじゃ扱ってねえ。残念だが兄ちゃん、先にラント硬貨に換金してきな」


 しかしあえなく断られてしまった。やっぱり円じゃなかったらしい。

 店主は親切に換金所の場所を教えてくれるが、風十はもはや聞く耳持たず。

 それもそうだ。このお金が使えないとなると、まさに風十は無一文。他にお金になりそうなものが服と内臓くらいしか残っていない。


「........僕にどうしろと」


素直に換金してくるしかなさそうだった。これが本当にお金になると信じて。

絶望に暮れるのはまだ早いのだろうが、この星のどこにも存在しないお金では、ただのおもちゃと断じられても文句は言えないのではないだろうか。

 言い知れぬ不安が襲い来る。


 傍で品物を物色していたエルも気づいたらしく、風十に近づいて手に持つ硬貨を覗き込むが、やはり首をかしげるだけだった。


「どこの国のお金?それとももっと狭い、一部の村でしか流通していないようなものかしら?どちらにせよ、あまり有名ではなさそうだから換金に期待はしない方がいいわよ」


 そしてここでも衝撃の事実。貴族というくらいだから、幅広い知識を持っているに違いないはずなのだが、その彼女でもってしてこの結果なのだからお察しというものだ。


「............」


「ま、まあそう気を落とすなよ兄ちゃん。行くだけ行ってみりゃいいじゃねえか。なんなら、俺がその硬貨を一枚一ラントとして買ってやってもいいぜ?もちろん上限はあるが」


「お、おじさん......!」


 もしかしたらそれより価値が低いかもしれないのに、それでも提案してくれるこの店主にほんのひととき感激するが、すぐに思い出す。

 百円玉一枚で一ラント。つまりこのシーラを買うには八十枚必要............あれ?

 いやいやいやいや。八百円かな?あはは。


「......そ、そういえば僕、これ以外にもあって......」


 そう言って、冷や汗を垂らしながら風十は新たに十円玉と一円玉を取り出した。この人は確か一枚の硬貨で一ラントといっていたのだ。つまり、一円玉なら問題ないのでは?


「ああ?......む。この茶色の奴はまああんまり変わりなさそうだが......このちっこい方は随分と軽いな。これじゃもう十倍は欲しいところだ」


「ええい!百円よりマシ!五百円じゃなくて良かった!これ全部交換してくださーい!!」


 がばっと一円玉の密集しているところをつかみ取って、そのまま両手で店主に手渡す。これだけあってもたいしたお金にはならないのだと悲しくなるが、まあ結局は一円玉である。ちりも積もればなんとやら、とか結構聞くけど一円は一円。山になるまで集めようと思わないし、集まっても両替が面倒で結局使い道なんてないのだ。故に、これは正しい選択。今すぐに帰れる見込みがない以上お金はこれからも絶対に必要なはずだし。


「・・・・・・一体何枚持ってんだ・・・・・・ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・・・まあちょっとくらい色つけてやるか、ほら―――三〇ラント」


「なん・・・・・・だと・・・・・・」


あまりの額に愕然とするよりない。え?こマ?


「・・・・・・」


差し出された銅貨をそのままに、風十を震え上がりながも必死に頭を巡らせていた。

あれだけの一円玉でもたったの三〇ラント。三百円分くらいだったわけなのに。解せぬ。

やはり素直に換金所に行くべきか。少なくともこの金属分の価値はあると信じたいし。


「そ、そのお金はやっぱりオジサマが収めて頂いて結構です・・・・・・」


三〇ラント。一ラントがいくらなのかも分からないが、果物一つ七十ラントなのだ、よっぽど高価か低価格なフルーツでもない限り、ラントとはやはり円換算にしても同じくらいなのだろう。

つまり、三〇円である。何が悲しくて三百円を三〇円に下位互換する。これほと虚しく哀れなこともないだろう。

うんまい棒三十本から、三本しか買えなくなってしまうとは。


「・・・・・・はぁ。おじさん?これでいいかしら?シーラ、二ついただくわね?」


と、消沈していると、見かねたエルが銀貨を何枚か店主に渡していた。


「・・・・・・なんか、すまねぇな。まあ、まいどあり」


買っていただいたはずなのに、店主ですら申し訳なさそうだ。

エルはそのまま黒い果物、シーラを貰うと、そのうちの一つを風十に手渡してきた。


「・・・・・・換金所まで行きましょう?(きっと大したことない額だけど、ないよりはマシよね)」


「本心がだだ漏れだよ!!でもありがとう!!」




 結局、その後日本のお金を大体二〇〇ラントで換金してもらった。少なすぎやしないかい、ともおもったけれどもう仕方ないと腹をくくった。

 人間三日間くらいは飲まず食わずでも生きていけるらしい。雨水を飲めば一週間くらいは大丈夫だろうか?それまでになんとか仕事を見つけて、給料をもらう必要がある。または食事つきの仕事につかなければならない。

 とはいえ、ここの地理に詳しいわけでもなく、どこに何があるのかもわからない状態では、仕事先を探すのも一苦労だ。

 エルはこの街の出身ではないので、あまりあてにはできない。ついてきてくれるだけでもありがたいのだが。

 しかし、どうしようもないことはどうしようもないのだ。幸いまだ日は高く時間はある。

 とりあえず、もうしばらくはこのまま歩くまわることにする二人だった。

早く二重人格を出したくて仕方がないですよ。そりゃもう。




出せるといいね!出すけどね!



一応筋書きだけはしっかりしてるつもり。もう自分の中では100話くらい余裕で超えてますよ( ̄∀ ̄)

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