僕の世界
僕はいつもここをさまよっていた。
光を見失って未練を残してこの世を去った。
僕は人を愛するという感覚を味わうことなくこの世を去ってしまった。
恋をしたこともない。僕は生前いつか運命の人と会えると思っていた。
しかし神というものは非常に残酷だ。その願いは叶うことなく僕をこの世から消した。
そのせいで僕はここを彷徨うこととなった。
あちこちを彷徨った。
交差点、ゲーセン、学校。とにかくいろいろな場所だ。
僕のことが見える人はいつも僕のことを嫌な顔をして見る。
当たり前だ。僕はいてはいけない存在なのだから。
だからあの時僕はとても嬉しかったんだ。
「どうしたの?」
そうやって心配そうに雨の日に傘を差しかけてくれたのは君だけだったから。
長い髪にブレザーの制服。ローファーとあわせているあたり高校生のようだ。
僕はつい最近死んだ。そう、二カ月ほど前だったか。17歳だった。
だから同い年くらいかもしれない。
「僕は本当はいてはいけないんだ。」
「知ってる。あなたは生きていないものね。」
「!」
わかってたうえで話しかけられるのか……
「一緒に帰ろう? あなたが未練があるなら一緒に叶えようか。」
そう言って手を差し出してきた。
僕は涙が出てきた。
僕は生きている時にこんなに優しくしてくれたことがなかったから
手を取りたかった。手を取りたくて必死に伸ばしたけど僕は君に触れられなかった。
君は……とても悲しそうな顔をした。
「ごめんね」
謝らせてしまった。泣きそうな顔をしている君。
慰めたくても僕は君に何もしてあげられない。
僕はこの世にとどまって好きな人に出会ってもきっと……
触れられない悲しみに襲われてしまうんだろうな……
初めてぼくに優しくしてくれた君を悲しませてしまった。僕の罪。
だから逃げかもしれないけどこの罪を繰り返さないように……君に罪を償ってから消えよう
そう決意した。