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美沙――この世で一番嘘つきな女――

 美沙と初めて会ったのは、夏と言うにはまだ浅い、7月はじめのことだった。

 まだ夜も早いと言うのに、田舎の駅前のこと、商店街は軒並みシャッターを下ろしている。『田舎の夜は早い』と言われるゆえんだ。

 ただ、飲み屋を取り込んだ小さな雑居ビルが一軒、ピンクや紫色のネオン看板でごてごてと飾り付けられて淫雑な光を路上に投げている。その隣にはコンビニが、惜しげもなくこうこうと明かりをつけて、白い人工色のその明かりは、隣のビルの安香水と性臭を打ち消そうとしているようにも見えた。

 私が目指していたのはコンビニのほうだ。

 そのころの私は、若いころに夢見ていた作家への道に再挑戦しようとしているところであった。もちろん、作家志望といっても何かアテがあるわけではない。公募に出すつもりでちょっとした恋愛小説などを書きためているだけだ。子供たちは成人したし、妻を養う義務をおろそかにして仕事をやめたわけでもないのだから、別に誰かに責められるようなことではない。

 ただ、定年までの数年間、執筆という行為が日常に組み込まれただけのことであり、それは決して趣味の範疇を出るものではなかった。

 それでも私は、不快なぬるい風の中で、どうしても書きたい女に出会ってしまった。


 美沙――この世で一番うそつきな女――


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