第4話「襲撃」
日が暮れて間もなく辺りには夕焼けがまだ残っている時間
「……ただいま…」
私は先ほどの喫茶店の出来事を忘れられず、心此処に在らずと言った感じで自宅に帰ってきた。
と、そこへ明るくてとても優しい声が掛けられた
「あらあら、お帰りなさい。」
「…あ…祖母……うん、ただいま…」
祖母の紗江だ。
家には齢60の祖父の宗勝と紗江との3人暮らしだ、産みの親の両親 は物心がつく前に行方不明になった、だから名前も覚えてないし二人に聞いても教えてくれなかった。
「…どうしたね? 学校での事を悔やんでるのかい?」
「……学校?…………………………っ!!」
今まですっかり忘れていた事を祖母の一言で思い出した。
「どうやら別の事で悩んでたみたいね? まあそれは置いておくとして、宗勝さんが道場で待ってるよ。 早くお行き。」
「……………はい。」
祖母の放った言葉は一切の言い訳を受け付けないといった雰囲気を纏っていた為、私も素直に諦めた。
家は結構な敷地を有していて純和風の平屋を母家として離れを二部屋に蔵と道場が建っている、それに庭があり竹林もありと300坪はあるだろう。
家は無名流派なのに何故か要人警護を主とする人達が国内外問わず習いに来る、だから言っちゃなんだが時々祖父は何者なんだろうって思ってしまう…
「……失礼します!」
道場の扉前に着き、開ける前に一声かける。
「……………入れ。」
中から特に大きい声を出した訳でもないのに道場内に響く声が聞こえた。
「…陽香、入ります。」
「…なぜ呼んだか分かるな?」
「……………はい。とうさん。」
「学校から話は聞いた。…それと後輩と名乗る子達からも、な。」
「え!? あの子達からも?」
「…あぁ。だからどうしてそうなったのかも理解はしている………………しているが、なぜ二刀の剣技を使った?」
「…………それは……素振りをしていて持っていたから……でも、分かりません……気付いたら一刀に戻さず……そのまま…」
「………そうか。……………やはり、これは……」
「………ごめんなさい…とうさんやかあさん、道場にも迷惑を掛けて………」
「…ああ、それは……………………!?」
突然祖父が言葉を止め私が今まで感じた事の無い威圧感を放って警戒し出した。
そして1度も抜いた所を見たことも銘すらも教えてもらえない、対となった太刀と小太刀を手に取った。
私は何が何だか分からず居ると…
「…来い、陽香。紗江と合流するぞ。」
「…と、とうさん? どうしたの?」
戸惑っている私の手を引き祖母が居る母家へと駆け出した。
そして祖母の元へと後少しのところで門から爆発音が聞こえてくる。
…………………どおぉぉぉおぉん!!!!
〈行きますわよ。〉
〈あぁとっとと終わらせるぞ〉
〈…焦りと油断は禁物ですわ〉
〈分かっている。お前こそ使い過ぎるな。〉
「宗勝さん!!」
「紗江、無事か?」
「……今はまだ。 しかしやはり?」
「…あぁ……遂に来たらしい」
祖父と祖母が話しているが、私には今の状況がさっぱり分からず爆発音のした門の方へ呆然と目を向けていた。
「……とうさん?かあさん?…………どうなってるの?」
「…紗江、陽香を頼む。………どうやら来てしまったようだ」
「……はい。 陽香、此方に!」
〈…やっと見つけました。まさかこちら側へと逃げているとは〉
入り口には二つの人影があった。…あるのだが私には姿が見えない、とうさんには見えているらしく人影の主を見据えていた。
さらに私にはさっきから耳障りな『音』が響いてきていた、それは言葉を放つようにリズムを持って聞こえてくるがとても聞けたものじゃない。
「……お主ら、向こうの住人じゃな? 何故越えてきた?」
〈あなた方の名を消しに…特にそこの子供を…〉
「やらせん!………二度と過ちを犯す訳にはっ!?」
祖父が刀に手をかけ抜こうとした瞬間、氷の刃が祖父の胸に刺さった。
「…ぐっ!」
〈おっと。そいつを抜かせる訳にはいかねぇな!〉
今まで沈黙していたもうひとつの影が動いた。
氷の刃を投げてきた、そして氷の刃は吸い込まれる様に祖父の胸に刺さったのだ。
「とうさん!!」
「…うぅ………陽香……コイツを…握れ……」
そう言い対の刀を差し出してきた。
「……で、でも………」
「…はやくっ! ぐぅぅっ!」
急かされる様に対の刀を握った瞬間頭の中に直接声が響いてきた。
【生体認証開始………………………………確認。
マスター認証開始…………………………エラー確認。
マスターへエラー報告…………………………………確認。
現マスター『宗勝』ノ意向ニヨリ所有者書キ換エヲ開始。
…………………………………………………………………………完了。 マスターヲ『陽香』へ移行シマシタ。
マスターノ血液ヲ採取………………………………完了。
コレヨリ『黒刀・悠久』ナラビ『白刀・刹那』ノ全能力ヲ解放シマス。
………………………………………………………エラー発生。
マスター『陽香』ノ能力不足ニヨリ限定封印ヲ作動。
………全行程ヲ完了シマシタ。】
頭の中に響いてきていた声が収まった。
すると襲撃してきた相手の姿と声が聞こえてきた。
〈チッ……………やられた。〉
〈なにをしているのですか。……仕方ありませんね、排除しますよ。〉
「「させるか(ませんよ)!」」
宗勝と紗江が陽香を守るように立ち塞がる。
〈邪魔だ! 年寄りに用は無い!!〉
〈……どうやら能力移行をしたのは失敗ですね? 只の人に戻ったあなた方に用はありません。今のうちに全てを終わらせます。〉
〈………全てを灰に………全てを無に………紅蓮の刃で全てを斬り燃やせ………炎熱大剣〉