留学の報告
「久しぶりだね。こうして学園で一緒になるのも。」
仕事がやっと落ち着き、学園へ帰ってきた後輩にあたる5人と一緒に、星流はカフェを訪れた。シャレンド学園には中庭のそばにカフェがあり、昼の休みになると利用ができるようになっていた。
風霧星流は、シャレンド学園でもMクラス…俗にいう優等生と呼ばれる生徒だった。KRASHたちとは学年が違うので、音楽のクラスの基準は違うが、数々の仕事をしている中では素晴らしい功績だ。
「星流!どこ行ってたんだよ~!」
「あら、まだ言ってなかったっけね?」
星流はレモンスカッシュを一口すすった。1つのテーブルを囲んで座るときは、いつも隼人は星流の向かい側に座っている。
「仕事とは聞いたけど…。」
「私、しばらく海外へ留学していたの。学校の推薦というかね。」
星流はにこっと微笑んだ。と同時に5人の表情も変わった。
「りゅ、留学!?」
明莉にいたっては傍にあった紅茶のカップを倒しそうになった。
「な、もしかして学校のって、ダンスとか歌とかそういう留学の?」
「そうそう。」と星流。
「ほら、この学校って高等部から音楽推薦で留学ができるでしょ。海外へ行って、実際に学んでくるの。まあ、何年と留学できるのは大学生になってからだけど。でも高等部だって最大半年は居られるの。ホームステイしながらね。」
楽しそうに留学の事を星流が話すと、隼人が目を輝かせて聞いた。
「すっげえ!そんな推薦貰えるのか!」
「私も知りたいです。」
桜も興味津々に、メガネをきゅっと整えた。
「留学は楽しいわよ。沢山の事を学べるし。それに、海外はおしゃれだしね。」
「いいなあ、あたしも行きたいなー!」
明莉は羨ましそうに言った。きっと5人の中では一番と言っていいほど留学をしてみたいと思っているだろう。特にダンスは彼女が一番経験を積んでいるので、外国でのヒップホップは気になる事が沢山あるのだ。
「今からでもいろんな事を頑張っておけば、留学推薦がくるはずよ!」
と星流は言った。それから、
「Mクラスでこんなに幅広く活躍をしてるし、絶対学校が黙ってないわよ。」
と付け加えた。
「そうなんですか。星流さんはどんな事を学んだんですか?」
桜が聞いた。
「私はロック歌手でやってるから、本場とかでロックをしっかり見てきたの。まだ今はアイドルという枠で活動してるし、アイドルの仕事も好き。でも、大人になったらやっぱりバンドとか、また新たなジャンルを切り開けたらなあとか。思っててさ。」
こんなに自分の夢の事を語れる自信はない…そう5人は思った。何が違うっていうと、彼女の幼いながらのプロ意識がある凄さ、仕事にかける思いと将来の重視…それらをひっくるめて星流は尊敬すべき先輩だ。
「だから、私は学んできたすべてを、独り占めにするわけにはいかないと思うから。5人にも何かしかで伝えていこうと思うの。」
そう星流は、またレモンスカッシュを一口飲んだ。