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2024年9月8日

ベッドから起き上がれない日が続いている。

何もしないまま、太陽が昇っては沈むのを繰り返す日々だ。


頭の中も霧がかかったような状態で、覚醒しているのか、夢を見ているのか、自分でも曖昧になっている。

食事を摂る気にもならず、数日間は何も食べていない。

脳の中の大事な機能が欠落してしまったようだ。


これはもう治らないのかもしれないと、直感的に感じている。

ゆで卵から生卵に戻せないように、私の脳も完全に変質してしまった。


頭の中はタールが張り付いたようにネバっとしている。

叶うことなら脳を取り出して、表面に張り付いた汚れをごしごしと落としたい。

頭をたたき割って、新品の脳と交換したい。

酷い不快感がぐるぐると頭の中で対流して、頭を重たく垂れ下げる。

苦しい。


頭だけでなく体の方も重たい。

体の方はゴム人形のようになっており、自分の体は意識から完全に切り離されている。

気を抜くと息をするのも忘れてしまう。

必死に息をしてやっと浅く胸が動く。ほんの僅かに空気が肺に入る。


過剰に重力が感じられて、打ち上げられた魚のような気持ちで、あとはこのまま、死を待つだけと言わんばかりだ。

ベッドで力なく打ち上げられた魚になっていると、霧掛かった頭の中にぼんやりと情景が浮かんできた。


湖の波打ち際に、打ち上げられたて死んだバスの姿だ。


バスはすでに朽ちつつあり、からだ中には穴が開き、ウジ虫が這いまわっている。

あたりには命の朽ちる臭いと大量のハエが飛びかう。


そんな命の終わりのワンカットに、キアゲハがちょこっとやってきた。

灰色の死肉と黒い土の世界にやってきたキアゲハはとても目を惹いた。

キアゲハは、しばらく死肉の傍で羽を休めた後、静かに飛び立った。

黄色い羽が水辺をゆらゆらと、不規則な軌道を描いて、そのうち背の高い葦の群落に消えていった。


この瞬間を湖の桟橋から見ていた私は、この一連の風景にひどく感動した。

鮮やかなキアゲハと、朽ち行くバス、そして死肉を貪るウジ虫達に命の諧調を感じた。

命の循環を強烈に突きつけられた。


今の自分自身が朽ち行くバスなら、あの命の循環の一部になりたい。

こんなベッドの上ではなく、湖の畔で、土と葦と空の香りを感じながら、湖の音を聞きながら…


気が付けば、私はベッドから体を起こしていた。

財布をポケットに入れて、そのまま玄関を出た。

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