ふふふん、役得ね!
お気に入り登録、評価などありがとうございます!
うまくまとまったのかまとまっていないのかは知らないけど、ひとまずデイビス様問題はこれで終わりよ。
デイビス様の身の安全のために(ファレル公爵夫人がまた媚薬を盛るかもしれないからね!)、アイリッシュ様が帰国するまでは、彼は引き続きアラン様の愛犬係で離宮に滞在することになっている。ホワイトも懐いているし、本人もまんざらではないみたいよ。
アイリッシュ様との婚約話もこのままいけば問題なく進むと思うわ。
デイビス様は「僕はいいけど、アイリッシュ嬢はそれでいいのかなぁ」と言っているけれど、本人が言い出したからいいんじゃないの?
というか、わたくし、デイビス様問題にかかずらっている暇がないのよ! だからもうあとは当人たちだけで何とかしてちょうだい。
だって、お城のパーティーが目前に迫っていて、準備でとっても大忙しなんだもの!
お腹の大きなバーバラ様はパーティーを欠席するそうだから、王族席に控える女性はオリヴィア様だけ。
ユージーナ王女の相手もしなくちゃいけないし、挨拶に来た人の相手もしなくちゃいけないし、とにかく、バーバラ様がいらっしゃらない分、オリヴィア様に注目が集まる。
そう、オリヴィア様が、とっても注目される場なのよ!
「テイラー、ドレスの最終チェックは終わったんでしょう?」
「ええ、終わっていますよ。アクセサリー類と当日の髪のセット、お化粧はあなたにお任せしますけれど、そちらの準備も終わっているのでしょう?」
「ばっちりよ!」
アクセサリーはすでに宝物庫から選んで来たし、髪型も今年の流行を押さえつつオリヴィア様に似合いそうなセット方法をしっかり覚えたわ。お化粧はわたくしが得意とするところだからもちろん問題ない。
パーティー前日。
わたくしはテイラーと一緒に当日の準備に不足がないかどうかを徹底的にチェックしているの。
当日になって突然「あれがない!」ってなったら大変でしょ?
せわしなく動き回るわたくしたちに、オリヴィア様はおっとりと微笑んで「そこまで気を張らなくても大丈夫よ」なんて言う。
……甘いわオリヴィア様! 今回のパーティーは、気合を入れないといけないのよ!
バーバラ様が不在で、来賓は同性のユージーナ王女殿下。そして、社交界をにぎわせているデイビス様のお相手、アイリッシュ様もいらっしゃる。
そんな中、オリヴィア様が二人より目立たず終わったら「影が薄い」とか言われるに決まっているわ! そんなのは絶対に阻止よ!
来賓を立てる? わたくしの辞書にそんな言葉はないわ。むしろ来賓が霞むくらいゴージャスに仕上げて見せるわよ。
オリヴィア様は今、準備をわたくしたちに任せて書類仕事をしている。王妃様がしていたお仕事だけど、オリヴィア様が代わりにやっているの。
バーバラ様の出産予定がとうとう来月になったから、侍医の指示で極力仕事はせず、体に負担の少ない簡単な運動をしつつ安静にしているんですって。
お産は命がけだし、無理がたたった万が一……なんてことになったら大変だからね。
ジュール陛下はジュール陛下でものすごく過保護になっていて、暇さえあればバーバラ様の様子を見に行っている。ちなみにバーバラ様に「鬱陶しいから仕事をしてきてくださいませ!」と言われて追い出されるまでがセットよ。モニカから聞いたわ。
そんな状態だから、オリヴィア様の負担が増大しているのよね。
オリヴィア様は涼しい顔でさらさらとペンを動かしているけれど、わたくし、アラン様の婚約者だったときに書類仕事を持って来られたから知っているわ。
あれ、とっても大変なのよ。
わたくしは嫌になってサインだけして中身は見なかったけど、オリヴィア様は全部に目を通して記入しているの。改善案が必要な場合は改善案まで書くんですって。サインするだけでも面倒くさかったのに、あの量の書類をよくさばけるわねって思うわ。
「テイラー、これを戸籍管理部まで届けてくれる?」
「戸籍管理部って、珍しところから書類が回ってきましたね」
「そうなの。ほら、再来年からはじめる国の食糧至急政策があるでしょ?」
「ああ、あの、貧困層向けの支援策ですよね」
それならわたくしも知っているわ。
ブリオール国は比較的平和な国だけど、貧富の差がないわけではない。というかそれがない国なんてどこにもないと思うわね。
で、一定所得以下――いわゆる、貧困層と呼ばれる世帯向けに、国が食糧配給施設を作る計画が出ているの。
各領地の管理は領主に任されているから、この施策はあくまで王家が直轄で見ている地域のみで行われるものだけど、王家直轄地もそこそこ広いからね。食糧配給施設は合計十個作ることになるみたい。
で、この食糧配給。行けば無限にもらえるわけじゃぁないのよ。対象の家庭には国から連絡が行き、配給施設の利用許可証が発行されるの。で、一人当たりもらえる上限が決められるんだけど――この、一人当たりってところが問題になったのよ。
国としてはできるだけ仕事をシンプルにしたいから、戸籍に登録されている人の頭数で計算しようとしたの。
だけどね、世の中には子供が生まれても出生届を出さない親がいるのよ。
貴族は基本的に出すけれど、平民は面倒くさがって出したり出さなかったり。国は出生届を義務づけている二はいるんだけど、従わない人は一定数いるのよね。
例えば、長男とか次男とか、最初の子供は出生届を出したけど、五人目とか六人目とか、下の子になれば面倒くさくなっていかなくなったとか、ね。
わたくしが孤児院で労役についていたときも、出生届を出されていなかった子が多かったの。
だけどブリオール国では出生届って生後一年以内に届けなくちゃいけないもので、一年をすぎたら受け取ってもらえないのよね。
だから孤児院の子たちは未だにブリオール国の戸籍管理部に戸籍がないの。
「その食糧支援策で、戸籍がない子を放置するのかって意見が上がってね。確かにその通りだと思うけど、では各家庭に調査員を派遣するのかと言えば、それはそれで現実的ではないでしょ? だからね、戸籍の再取得を認めたらどうかって案が出ているのよ。これが通れば、生後一年以内に出生届が出されていなかった、いわゆるブリオール国の国籍のない人たちが取得可能になるの。移民とどう区別するのかという問題もあるから、細かな調整は必要だけど」
ブリオール国に移民してくる人たちには戸籍ではなく「移民許可証」が発行されるからね。
今回の食糧支援策は移民は対象外になっているから、彼らが今回の再取得制度を利用してブリオール国籍を取得するかもしれないって懸念があるらしいわ。
……ややこしいわね。
わたくしならすぐに匙を投げたくなるけど、サイラス様の婚約者であるオリヴィア様は匙を投げるわけにはいかないのよね。
食糧支援策はもともとバーバラ様が打ち出した策だから、それを引き継いだオリヴィア様が適当なことをするわけにもいかないでしょうし。
テイラーがオリヴィア様から書類を受け取って部屋を出て行く。
オリヴィア様も休憩するみたいだから、わたくしはお茶を入れることにした。
「ミルクティでいいですか、オリヴィア様」
「ええ、ありがとう」
頭を使ったあとは、オリヴィア様はミルクティをよく飲んでいる。テイラーが入れるから覚えているわ。いつもより少しだけお砂糖を多めにするの。
オリヴィア様はミルクティをゆっくりと半分ほど飲んで、それからわたくしを見た。
ちょっと声を落として、どこか申し訳なさそうな顔で言う。
「……パーティー、行きたいわよね。ごめんなさいね」
ああ、わたくしがパーティーが好きだから気に病んでいるのね。
わたくしは身分を剥奪されたから平民扱い。今回のパーティーは伯爵家以上の家に招待状が配られているから、当然平民のわたくしは参加できない。だから明日はこの部屋でお留守番なの。
……パーティー、行きたいか行きたくないかで言えば行きたいけど、それは、オリヴィア様が謝ることじゃないわ。
だけど羨ましいのも本当だから、わたくしはちょっぴり拗ねた顔で言ってやった。
「かわりに、お菓子をたくさん食べさせてください。それでチャラでいいですよ」
オリヴィア様はきょとんと目を丸くしてから、棚にあるお菓子を好きなだけ食べていいと許可をくれた。ふふふん、役得ね!
ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ











