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ティアナ!~王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います外伝~  作者: 狭山ひびき
6 荒療治という名の洗脳作戦

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パトリスじゃないったら!!

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「ん、んん……」


 枕を引き抜いた拍子に頭ががくんと揺れたデイビス様は、むにゃむにゃと何かを言いながら目をこする。


 ……やっぱりこの方、図太いんじゃないかしら?


 わたくしは引き抜いた枕をぽーんと背後に放って証拠隠滅を図ると、きゅっとシーツの端を握ってできるだけ顔を見えないように隠した。


「デイビス様……デイビス様……」


 ささやくように呼び掛けると、デイビス様がハッと目を見開いて「ぎゃわーっ」と大きな悲鳴を上げる。


 ……ぎゃわーって悲鳴を上げる人はじめて見たわ。


 デイビス様は驚きのあまりベッドから転がり落ちそうになりながら、わたくしに向かって指を突きつけた。


「だ、だ、だ、誰……はっ、もしかして、また、母上がよこしたどこかの令嬢……っ」


 ファレル公爵夫人ってば息子に媚薬を盛るばかりか、夜中に女まで忍び込ませていたわけ? なんて恐ろしい母親かしら。

 わたくし、さすがにちょっとデイビス様に同情しちゃうわよ。

 噂では、デイビス様はパトリス様を亡くされた直後からいろんなところから縁談が持ち込まれて辟易したって聞いたけど、本当は母親に女性を送り込まれて縁談に嫌気がさしたの間違いなんじゃないかしら?


「デイビス様……お会いしたかったですわ。わたくしです、パトリスです……」


 デイビス様を可哀想だなって思ったからなのか、自分で思っているよりも優しい声が出たわ。

 でも、こんなことで騙されてくれるのかしらね?

 って思ったんだけど、パトリス様の名前を出した直後、デイビス様がくわっと目を見開いて跳ねるようにベッドに上体を起こし、そして――


「パトリスぅううううううううっ‼」


 突進してきた。


 ……きゃああああああああっ!


 悲鳴をあげなかっただけ、褒めてほしいわよ本当に‼


 わたくしは突進されたデイビス様に抱き着かれ、床の上に背中からひっくり返った。

 わたくしにのしかかるようにしがみついているデイビス様は、わたくしのシーツ……というか胸のあたりに顔をうずめておいおいと泣いている。


 ……ちょっとどこさわってんのよ! どつくわよっ!


 しっかりと胸に顔をうずめているデイビス様に殺意を覚えたけど、今は任務の方が大事よねとぐっと我慢したわ。


「パトリス、パトリス、会いたかったよぉ、パトリスぅ……」


 わたくしのかぶっているシーツにしっかりと涙と鼻水をつけてくれるデイビス様に、わたくしは顔が引きつりそうになりながら演技を続行する。


「デイビス様、ずっとお会いしたかったですわ……。デイビス様を一人置いて行ってしまい、申し訳ございません……」

「いいんだ、いいんだよパトリスぅ。こうして会いに来てくれたんだから……。ああそうか、そうだね、僕を迎えに来てくれたんだね、パトリス。いいよぉ、僕を連れて行って……」


 え?

 ちょっと、こんなの予定になかったわよ!

 死んだ人が迎えに来るってつまりあれよね。僕をあの世に連れて行ってってやつよね。

 ヨークおじいちゃん‼ 荒療治のせいでデイビス様が死ぬ気になっちゃったわよどうすんの⁉


 わたくしがあわあわと慌てているというのに、デイビス様はわたくしの胸に顔をうずめたまま恍惚としている。やっぱりどつこうかしら。


「パトリス、僕、もう疲れちゃったんだ。もういいよね? だって、誰も僕をそっとしておいてくれなんだから。僕は静かに、パトリスとの思い出を抱きしめていたかったのに、なんで……なんで、そっとしておいてくれないんだよぉ……」


 恍惚としてみたりわんわんと泣きだしてみたり忙しい人ね‼

 もう面倒くさくなってきたから、わたくしはデイビス様の反応を無視して、予定通り会話を続けることにした。会話がかみ合わない? 知らないわよそんなの!


「デイビス様、パトリスのお願いです。どうか、アイリッシュ様のお話を聞いて差し上げてください。デイビス様が困っているのと同じように、アイリッシュ様もお困りなんです」

「パトリス、パトリス……人は死んでも温かいんだね。パトリスだからかなぁ」

「デイビス様はお優しい方。きっと、アイリッシュ様のお力になってくださると信じています」

「ああパトリス。優しいのはパトリスだよ。もう離さないからね。ずっと、永遠に、一緒だよぅ……」

「パトリスのお願いです。どうか、幸せになって。デイビス様がわたくしを恋しく思ってくださるのはとても嬉しいのですが、思い出にとらわれすぎてはいけません……」

「パトリス、愛しているよパトリスぅ……」


 ……これ、話聞いてんのかしら?


 とうとうわたくしの胸にすりすりと頬ずりをはじめたデイビス様に、わたくしはかなりイライラしてきた。

 デイビス様の動きはどんどん図々しくなってきて、わたくしのぎゅうぎゅうに抱きしめて甘えるように頬ずりを続ける。


 いい加減怒鳴りたくなってきたわたくしに気づいたのか、棚の影からアラン様が音もなく近づいて来て――


「すまん」


 一言小声で断って、すとんとデイビス様の首筋に手刀を落とした。




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