ヨークおじいちゃんの荒療治作戦
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「なんじゃってー?」
ちょっと、なんでこんな侍医を呼んで来たのよ‼
先ほどから繰り返される「なんじゃってー?」の連続にわたくし、とってもイライラしてきたわ。
「ヨーク爺、聞こえるかー?」
「なんじゃってー?」
アラン様がヨークって名前のおじいちゃん先生の耳元で声を張り上げているけれど、あの様子じゃ全然聞こえてなさそうだわ。
アラン様の指示を受けてバックスさんが呼んできたのは、精神医療を専門としている侍医のヨークおじいちゃんだった。
このおじいちゃん先生、御年八十八歳と超高齢なのにいまだにお城で侍医をしているらしいわ。
真っ白な髪に真っ白なお鬚、そしてびよーんと長い真っ白な眉毛が眉尻からヤギの髭みたいに伸びている。
腰がちょっとまがっているから自分の身長ほどもある長い杖をついていて、よたよたと歩く様子は心配になるほど不安定。
極めつけはこの耳の遠さ。どれだけ叫んでも「なんじゃってー?」しか返ってこない。
ちょっとバックスさんってばなんでこんなおじいちゃん先生を連れてきたのよ!
「ねえオリヴィア様、この先生大丈夫なんですか?」
「ヨーク先生は精神医療の名医なのよ。お弟子さんもたくさんいらっしゃって、医学界にもたくさん貢献されて来た方なの。ただ……その、最近は聴力がどうも弱くなっていらっしゃるから……」
「ヨーク爺ぃ!」
「なんじゃってー?」
オリヴィア様が説明してくれる側から「なんじゃってー?」よ。はあ、一歩も前に進んでないわ。
わたくしだけじゃなくこの場にいる全員が途方に暮れていると、ヨーク先生に遅れること十五分。三十半ばほどのひょろっと背が高くて気弱そうな侍医がもう一人やって来た。
「すみません、王妃様の診察をしていて遅くなりました」
そう言ってへらへらと笑う彼の名前はタナーさん。オリヴィア様曰く、ヨーク先生のお弟子さんの一人で、普段は先生の通訳係のようなことをしているそう。バックスさんが呼びに行った時、タナーさんはバーバラ様の元にいたみたい。
妊娠中は精神的に不安定になることがあるから、定期的に診察をしているんですって。
何度も叫んで肩で息をしているアラン様に代わり、タナーさんがヨークおじいちゃんに近づく。そして――
「先生‼ 起きていらっしゃいますかぁ‼」
ひょろっとした見た目からは信じられないほどの大声で、タナーさんが叫んだ。
ヨーク先生はぽくぽくと笑って「起きとるぞーい」と答える。
タナーさんは続けた。
「今日はぁ‼ 先生の‼ アドバイスが必要なんです‼ いいですかー⁉」
「ええぞーい」
すごいわタナーさん。「なんじゃってー?」以外の言葉がおじいちゃん先生の口から出てきたわ‼
ようやく意思疎通が図れるようになって、アラン様がぐったりとソファに身を沈めた。
「あとを頼む。疲れた」
「お疲れ、兄上」
サイラス様がポンとアラン様の肩を叩いて、タナーさんとやり取りをはじめる。その後タナーさんがヨークおじいちゃんの耳で叫ぶって寸法よ。
しばらくやりとりを続けたあとで、ヨークおじいちゃんが真っ白な髭を撫でながら言った。
「そりゃあ、荒療治が必要じゃあ。ええかいのー?」
わたくしたちはヨークおじいちゃんの診断に、揃ってぽかんと目を丸くした。
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