作戦会議よ!(オリヴィア様ったら真面目なんだから!)
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途方に暮れたオリヴィア様は、アイリッシュ様とデイビス様の婚約問題について、アラン様とサイラス様も交えて意見交換の場を作ることにしたらしい。こういうところが、実に真面目である。
デイビス様は今日も今日とてホワイトに遊ばれ――じゃなかった。ホワイトのお世話をしている。
アラン様の愛犬専用離宮では、昼夜問わずに「ひんひん」とすすり泣きの声が響いているそうで、お城の使用人たちの間では、「あの離宮は『出る』らしい」なんて噂まで広がっていた。お化けと勘違いされているのがおかしくて笑っちゃったわ。
ちなみにバーバラ様は、真っ白な大型犬に追いかけまわされているデイビス様を一度見かけた後、あの離宮の近くには近寄らなくなったらしい。面倒ごとを回避したがるバーバラ様らしい選択だわ。
アラン様曰く、あれでもデイビス様とホワイトの関係は初日よりはましになったそうだけど、本当かしら?
アラン様の部屋に集まったわたくしたちは、まず、アイリッシュ様とデイビス様について情報交換をした。
アラン様とサイラス様は、アイリッシュ様の性格を知って茫然としている。
「それはまた、デイビスと合わなすぎる令嬢が来たものだな……」
せめてパトリスのように繊細で大人しく穏やかな令嬢ならよかったのだがと言うけど、「繊細で大人しくて穏やかな令嬢」なんてそうそういないわよ。アラン様、女の子に夢を見すぎだと思うわ。女は結構図太い生き物よ。
サイラス様は苦笑しながら、アラン様とは違う意見を言う。
「でも、考えようによってはよかったんじゃないかな。結婚さえしてくれれば夫の役割は求めないなんて、結婚したくないデイビスにはもってこいだと思うよ」
「ファレル公爵夫人が跡取りをせっつかなければの話だな」
「……そうとも言うね」
そうなのよ、ここでネックになるのがファレル公爵夫人の動向なのよね。アイリッシュ様が白い結婚上等だとしても、ファレル公爵夫人はそうじゃない。跡取り跡取りとせっついて新婚生活を引っ掻き回すのは間違いないもの。
アラン様が、ものすごく困った顔でオリヴィア様を見た。
「ちなみにだが、オリヴィアの意見ではアイリッシュ嬢はかなり肝が据わった令嬢なのだろう? これは参考までに聞くが、人形を抱きしめて『パトリス、パトリス』と泣いたり笑ったりしながら呼びかける男でも大丈夫そうか?」
オリヴィア様の顔が引きつった。テイラーもぎょっとしているわ。
わたくしは前にアラン様から聞いて知っていたけど、目の前で本当にやられたら対応に困るのは間違いない。さすがにそこは改善してほしいわね。
……アラン様、なんでデイビス様とお友達なのかしら? わたくし、そんな怖いお友達いらないわよ。
アラン様はこれでなかなか面倒見がいいから、たぶんデイビス様のことを放っておけないんでしょうけど。
「デイビスは昔から精神的に負担がかかると殻に引きこもるタイプでな。パトリスと婚約してからは、嫌なことがあるとパトリスに慰めてもらって精神安定を図っていたようだ。そのためパトリスに非常に依存していて、彼女が亡くなった時は目も当てられないような状態だった。正直、あとを追うのではないかと冷や冷やしたくらいだ。今は、そんなパトリスに似た人形に話しかけることで精神安定を図っている。……ホワイトと遊んで発散させているから今のところはまだましだが、何かあるとまた殻にこもるぞ」
え、あれましなの?
ホワイトに追いかけられてひんひん泣かされているあの状態が?
「お医者様はなんと?」
「一度だけ診せようとしたことがあるんだが、錯乱して大変なことになったからやめた。あいつを知る医者によれば、幼いころにあまりにも泣くから、ファレル公爵が内緒で精神科医に診せたことがあるらしい。それを知ったファレル公爵夫人が、医者を頼るなんて軟弱ものとデイビスをひどく叱ったらしい。それがトラウマになって、医者と聞くと錯乱するそうだ」
「ちょっと兄上、いくら何でもそれはひどいよ。なんで公爵夫人はそんなことを?」
「デイビスが精神科医にかかったと知った姑……前公爵夫人が、ファレル公爵夫人に向かって。ろくな育て方をしていないからそうなるんだと嗤ったらしい。その怒りがデイビスに向かったようだな」
サイラス様が頬を引きつらせた。
アラン様が肩をすくめる。
「ファレル公爵が何度か嫁姑の関係改善に踏み出そうとしたようなのだが、ことごとく失敗していてな。それならばとデイビスの養育権を夫人から取り上げようとすれば、夫人が夫人で錯乱して泣き叫ぶから手に終えず、結局……という形だ」
それで、前公爵夫人に育てられたデイビス様の弟の方はのびのびと生活して性格にも問題なく成長し、今やデイビス様に変わって跡取りに……なんて話まで出ているというのは、悲惨すぎるわ。それでファレル公爵夫人が意固地になって無茶をしているから余計に。
「兄弟関係はどうなんですかぁ?」
「それが不思議と、性格がまったく違うのに仲がいいんだ。弟の方はデイビスを立てるし、デイビスを蹴落として跡取りになろうなんてこれっぽっちも考えていないようでな。ただ、気乗りしていないデイビスを無理やり結婚させるのはどうかと今回の縁談に口を出して、邪魔だから当面王都に戻って来るなと公爵夫人に領地に向かわせられたそうだ」
「いやもう、一番の問題は公爵夫人だよ。彼女の方こそ領地に引っ込んだ方がいいんじゃないかな」
「私もそう思うが、他家の公爵夫人を隠居させろなんて言えるはずがないだろう?」
「そうだけど……」
「ちなみにもっと悪いことに、母上はファレル公爵夫人の味方だ」
「なんで⁉」
「母上は母上でおばあ様との関係が悲惨だっただろう? それもあり、ファレル公爵夫人の愚痴に親身になって付き合ってやっていた。姑が嫌いという意見で一致したため、母上は公爵夫人に同情的だ」
だからファレル公爵夫人のお願いを聞いてお茶会をセッティングさせたわけね、オリヴィア様に。
……オリヴィア様も、バーバラ様みたいな姑がいたら大変そうね。まあ、オリヴィア様の場合はバーバラ様と仲が悪いわけじゃないけど。
もうこれ詰んでいるわ。
「デイビスも、悪い奴じゃないんだ。繊細で臆病だが、だからこそ優しいしなんだかんだと勉強はできる。運動はからきしだがな。性格さえ何とかなれば、公爵家当主としてもやっていけるはずだ」
その性格がネックなのよ。
「パトリスが生きていた頃はましだったんだ。パトリスという精神安定剤のおかげで、デイビスもうまくやっていた。必要最低限の社交しかしていなかったが、公爵家の仕事はしていたし、あれで意外と領民には慕われている」
つくづく、パトリス様が亡くなったのが悔やまれるわね。
それまで困った顔で微笑んでいたオリヴィア様が、ぽんと小さく手を叩く。
「話をまとめると、一番いいのはファレル公爵夫人に領地に下がっていただき、縁談に口を挟まないようにお願いすることでしょうけれど、それができないのであれば、デイビス様をまずアイリッシュ様とお話しできるまでに回復……と言っていいのでしょうか。ともかく、デイビス様の精神不安をどうにかするしかありません。ですがわたくしには精神医療の知識がありません。ですので、専門家に一度相談しましょう」
アラン様とサイラス様が頷く。
「そうだな。このままではらちが明かない」
ということで、精神医療が専門の侍医を呼ぶことになった。
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