わんわんセラピーは成功するのかしら?
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「と、言うことで、デイビス様は現在、アラン様のワンちゃん屋敷に滞在中です」
休憩を終えてオリヴィア様の部屋に帰ったわたくしは、もちろんさっき見た光景をオリヴィア様に報告したわ。
オリヴィア様はまさかデイビス様がアラン様の愛犬たちの臨時お世話係になっていると思わなかったのか、目をぱちくりさせていた。
それはそうよね、昨日アイリッシュ様と会った次の日には、デイビス様がお城に生活拠点を移動しているんだもの。
アイリッシュ様はデイビス様と会話する機会が欲しいと言っていたけど、デイビス様がお城に移動しちゃったらそれも無理よ。どうするのかしら、これ。
……というか、わたくし、デイビス様をはじめてしっかりと見たけど、あの方とアイリッシュ様は性格が水と油だと思うわ。
アラン様の愛犬にまで泣かされていたデイビス様が、あの男らしい性格のアイリッシュ様と合うとは思えない。
きっとこれは、わたくしが知る中で最悪な縁談よ。
アラン様からデイビス様の性格をちょっと聞いた限り、わたくし、アイリッシュ様と引き合わせた直後にデイビス様が「ファーッ‼」と叫んで気絶するに一票投じるわ。
「そのアニマルセラピーとか言うので、デイビス様は落ち着かれるんですかね」
わたくしの説明を聞いて、テイラーが半ば茫然とした顔で言う。アイリッシュ様も問題だけど、相手のデイビス様の方もとんでもなく問題だと知って気が遠くなっているのね。きっと。
「わかんないけど、アラン様はファレル公爵家にデイビス様を置いておくのは危険と判断したみたいよ」
「それはそうでしょうね。まだ正式に婚約もまとまっていないのに、息子の食事に媚薬なんて……普通はあり得ないですよ」
いやいや、テイラー。正式に婚約がまとまっていてもあり得ないわよ。どこの世界に息子に媚薬を盛る親がいるのよ。
というか、婚約話をまとめるためにブリオール国を訪れたアイリッシュ様が妊娠して帰ってきましたとかんなったら、それこそ国交問題なんじゃないの? 本当にそうなったらどうするつもりだったのかしら、ファレル公爵夫人。まさか既成事実を理由に全部の手続きを飛ばして結婚式をあげさせるつもりだったのかしら。……こわっ!
わたくしはぽりぽりとオリヴィア様からもらったクッキーをかじりながら言う。
「でも、昨日のアイリッシュ様の発言をファレル公爵夫人が知ったら、これ、修羅場なんてもんじゃないんじゃないですか? 白い結婚上等、愛人オッケー、何なら愛人が産んだ子が跡取りでもいいですよ、なんてあっけらかんと言っちゃう令嬢ですよ? さすがのファレル公爵夫人も、そんな斜め上の令嬢が息子の相手だなんて思わないでしょうよ」
デイビス様じゃないけど、ファレル公爵夫人が「ファーッ‼」って叫んで気絶するんじゃないかしら。それはそれで面白そうだけど。
オリヴィア様はのんびりとティーカップに口をつけつつ、答えに窮しているようである。聡明なオリヴィア様を困惑させるアイリッシュ様もデイビス様も、ついでにファレル公爵夫人もすごいわね。
……これ、バーバラ様なら面倒くさがって、当人たちの問題ですから感知しませんとか言って匙を投げそうね。
だけどオリヴィア様は真面目だから、関わった以上途中で投げるなんてできないのよね。
「オリヴィア様、この縁談ダメですよ。まとまりっこありません。今の時点で地獄絵図じゃないですかぁ」
「そう、よね。そう思うわよね。でも……」
オリヴィア様が言いたいこともわかりますよ? 国同士が動いている以上、簡単には断れない縁談なんですよね。
せめてファレル公爵夫人が横やりを入れなかったらまだ何とかなるかもしれないけど、デイビス様に媚薬を盛ってまで跡取りを作らせようとする公爵夫人がいる限り、未来は暗澹たるものになるに決まっているわ。
オリヴィア様は頬に手を当てて視線を落とす。
「一度、アイリッシュ様とデイビス様がお話しする席を設けて、お互いの考えを話していただければどうにかなるかしら?」
「話す前にデイビス様が気絶しますね、きっと」
「……困ったわ」
「ひとまず、アニマルセラピーとかいう力を信じるしかないんじゃないでしょうか」
テイラーが適当なことを言う。アニマルセラピーにどれほどの力があるのか知らないけど、デイビス様の性格が百八十度変わるなんてことはないと思うから無理よ。
わたくしはばりんとクッキーをかみ砕いて、はんっと笑った。
「ホワイトに追いかけまわされて泣かされているデイビス様が、わんわんセラピーされるのかどうか怪しいところだわ」
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次の章は「荒療治という名の洗脳作戦」です。開始まで少々お待ちください!











