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ティアナ!~王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います外伝~  作者: 狭山ひびき
4 無口令嬢は敵か味方か

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わたくしの目は誤魔化されないわよ!

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

「ねえねえモニカ、あいつ何かしないかしら?」

「ちょっとティアナ、性格悪いわよ。それに、問題は起きないに越したことないんだから、余計なことを考えないでよ。本当に何か起きたらどうするわけ?」


 あら、それはそれでテイラーが暗躍してオリヴィア様の有利に働くからいいんじゃないかしら?


 そんなことを思っていると、見たことのない令嬢が一人の侍女を連れてサロンに入って来た。

 オリヴィア様が座るテーブルに近づいてくるから――なるほど、これがアイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢ね!

 銀色の髪にルビーのような赤い瞳。そして連れている侍女は黒髪に黒い瞳の眼鏡女、オーフェリアもとい、がり勉眼鏡! 間違いないわ!


 アイリッシュ様はすらりと背の高い方で、とても姿勢が良かった。


 ……アイリッシュ様は気の弱い方かもしれないっていう情報は、間違いね。


 わたくしはすぐに判断する。気の弱い方が、こんなにまっすぐな姿勢で堂々と歩いてくるはずがない。これはくせ者の匂いがプンプンするわ。要注意よ。

 がり勉眼鏡はわたくしの予想通り、頭の固そうな女だった。お城の図書館の司書と同じ匂いね。頭でっかちで融通が利かない女だわ。そうに違いない。この手の女はわたくし苦手だからやっぱりテイラーに回しましょう。何を言っても理屈をこねてくるタイプは嫌いなの。


 オリヴィア様のテーブルにはすでに侯爵令嬢が一人と公爵と縁続きの伯爵令嬢が座っていたんだけど、アイリッシュ様は軽く目を伏せる形で二人に一礼すると席に着いた。アイリッシュ様の後ろにがり勉眼鏡が控える。


 ……オリヴィア様が来る前に、どういう女か探りたいわね。誰かアイリッシュ様に話しかけてくれないかしら?


 するとわたくしの願いが通じたのか、同じテーブルの侯爵令嬢がにこりと優雅に微笑んで口を開いた。


「お初にお目にかかります。わたくし、リヴァン侯爵家のジェシカと申します。お会いできて光栄ですわ」


 すると、アイリッシュ様はばさりと扇を開いて口を覆い、侍女のオーフェリアに一言告げる。オーフェリアがジェシカ様に返答した。


「こちらこそ、お会いできて光栄です――と、主が申しております」


 ジェシカ様は目を丸くしたけれど、アイリッシュ様がブリオール語が堪能でないと判断したのだろう、おっとりと微笑んで頷く。


 ……だけど、これでわかったわ。


 モニカを見れば、モニカも頷いた。わたくしと同意見ね。

 アイリッシュ様は、ブリオール語を理解していないわけではない。

 だって、侍女のがり勉眼鏡に話しかける言葉が短すぎたの。普通は「なんて言ったの?」と確認を入れてがり勉眼鏡が通訳し、それに対する返答を出すはず。一言では終わらないわ。


 となると、アイリッシュ様はジェシカ様の言葉を理解していて、がり勉眼鏡に代弁を頼んだということになる。

 自分で返答できるのに侍女に返答させたってわけよ。気に入らないわ~! なに? わたくしと話す価値はないから侍女に代弁させるわってやつかしら? あんたそれ、オリヴィア様にやったらただじゃすませないわよ。


 イライラしていると、モニカが肘でわたくしの脇腹をつつく。どうやらイライラが顔に出てたみたい。

 表情を取り繕っていると、テイラーと共にオリヴィア様がサロンに入って来た。

 着席していた令嬢たちが立ち上がる。

 オリヴィア様は自分の席まで歩いてくると、にこりと微笑んだ。


「本日はわたくしのお茶会に参加してくださりありがとうございます。今日は、フィラルーシュ国からお客様をお招きしております。アイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢です。詳しいご紹介は本人のご希望により控えますが、どうぞ皆様、アイリッシュ様と仲良くしてくださいね」


 オリヴィア様の言葉を受けて、アイリッシュ様がカーテシーをした。

体の軸がぶれない完璧なカーテシーだわ。あんなに綺麗なカーテシー、オリヴィア様以外で見たことがないわ。

 アイリッシュ様ががり勉眼鏡に視線を向けると、彼女が代わりに口を開く。


「主はブリオール語習得途中でございますので、侍女のわたくしが代弁させていただきます。――本日はわたくしのためにこのような場を開いてくださりありがとうございます。仲良くしていただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします」


 ファレル公爵家のデイビス様と縁談が持ち上がっているけれど、正式に婚約を結ぶ前だからその話題は避けたみたいね。ま、婚約予定と言って話が流れたら恥ずかしいものね。


 ……だけど、ブリオール語を習得中ねえ。絶対に嘘だわ。アイリッシュ様はブリオール語を理解しているはずだもの。


 だって、オリヴィア様の挨拶の時、がり勉眼鏡は通訳をしていなかった。さっきのジェシカ様のときと同様に、理解していたとみていい。やっぱり一筋縄ではいかない曲者ね。だけど。


 ……ふふふん! 残念ね、アイリッシュ様。オリヴィア様はね、フィラルーシュ語が堪能なのよ。フィラルーシュ語で話しかけられた時、どういう反応をするのか今から楽しみだわ!


 今やアイリッシュ様はわたくしの中で仮想敵から、敵に昇格している。絶対にオリヴィア様の下僕にしてやるんだから。


 ちなみに、あのヤギ女はしばらく放置よ。

 席も離れているし、何よりわたくしの勘が、アイリッシュ様の方が何倍も厄介だと告げている。あんな小物より、こっちに全集中だわ。





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