7 ヤギ女の接近を邪魔しなくちゃ!
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そんなこんなで、お茶会の準備が着々と進められていたある日のこと。
「ティアナ、アイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢がブリオール国内に入ったわ」
モニカから、待ちに待った情報が得られた。
モニカをしても、いくら探ってもたいした情報が得られなかったアイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢。
だけど賢いモニカは考えたのよ。
アイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢は、お茶会開催日より前にブリオール国内に入り、縁談が持ち上がっているファレル公爵家の王都のタウンハウスに滞在する予定なの。
フィラルーシュ国のブリオール国の国境からの移動中、そして王都に入ってから、まったく人前に姿を現さないなんてことはないはず。
詳しいことまでは調べられないけど、モニカの情報収集能力をもってすればアイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢の性格の一つや二つくらいは調べられるはずよ。
「期待しているわモニカ!」
「任せなさい。ああ、あと、関係あると言えばあるし、ないと言えばないんだけど、もう一個追加情報があるわ」
「なに?」
「例のお茶会に、ダルシー・ビンガム伯爵令嬢も招待されているわよ」
「なんですって?」
「しーっ」
おっと、ここは王妃様の侍女の休憩室だったわ。今は誰もいないとはいえ、大声をあげるのはまずいわよね。
わたくしは声を落とし、こそこそとモニカに言った。
「なんであいつが招待されるのよ。伯爵家って言ってもその中でも下の方じゃないの!」
「それがね、アイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢のお母様とビンガム伯爵夫人が知り合いなんですって。その縁で招待されてるのよ」
まあ確かに、今回は伯爵家以上の令嬢の中から王妃様が選んだ女性が招待されている。伯爵家以上だから一応あのヤギ女にも資格はあるわよね。
「知り合いってどういう知り合いよ」
「ルドマン侯爵夫妻が昔ブリオール国に滞在したとき、馬車の車輪事故で立ち往生したことがあるんですって。それを助けたのがビンガム伯爵夫人らしいわ」
「うわ、やっすい知り合い!」
「そうだけど、ルドマン侯爵夫妻は人間ができた方だから、いまだにビンガム伯爵夫人のことを覚えていて、娘がブリオール国に嫁ぐかもしれないからよかったら気にかけてやってほしいってお手紙を書いたんですって。それをファレル公爵夫人に見せびらかせて、恩着せがましく協力しますわとか言ったらしいわよ」
「うわ、さすがヤギ女の母親。この機に公爵家と仲良くなろうっていう下心もりもりじゃないの」
「あわよくばダルシーにファレル公爵家と縁のある男性を紹介してもらおうって魂胆じゃないかしら。ほら、ダルシーは一回婚約破棄されているから次を見つけるのが大変なのよ」
「あれはあの女が婚約者がいる身で浮気したからじゃないの。自業自得よ」
わたくしも伯爵令嬢だった時は身分が高くてお金持ちのイケメンとはお近づきになろうとしていたけど、浮気はしなかったわ。
まあ、オリヴィア様からアラン様を奪い取ったのも同じくらい問題だとは思うけど、婚約者がいるのに他の男にちょっかいを出すのはナンセンスよ。他に生きたいのなら婚約者と別れてからにすべきだわ。
「ティアナって不真面目なくせに変なところで真面目なのよね」
「ちょっとどういう意味?」
モニカ、それが誉め言葉じゃないのはわかっているわよ。失礼しちゃうわ! まあ、自分が真面目じゃないのはわかっているけどね。
「でも、今回のお茶会に子爵家以下の令嬢は招待されていないから、あいつの取り巻きは来れないじゃない。孤立するかもね。それはそれで見ものだわ」
「どうかしらね? って、ティアナはお茶会に出席するの?」
「出席はしないけど、オリヴィア様の侍女として会場の隅に控えておく予定なの。本当はテイラーだけの予定だったんだけど、行きたいって言ったらオリヴィア様が許してくれたわ」
「……修羅場の予感しかしないんだけど」
モニカが暗い表情になる。
そういえばモニカもお茶会の場に控えておくようにバーバラ様から言われていたんだったわね。あとでお茶会の様子を報告するようにって指示されてるって言ってたわ。
「大丈夫よ、オリヴィア様に迷惑をかけるようなことはしないわ。……というかできないわ。テイラーがいるし」
「ああ、あの方有能よね。さすがはオリヴィア様の側に長年仕えるだけあるわ。その方がティアナのお目付け役なら、まあ大丈夫かしら」
お目付け役ってどういう意味よ。
「でも、ダルシーとアイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢が近くなるのは困るわね。将来のファレル公爵夫人を笠に着てあいつが威張り散らす未来しか見えないわ。何とか二人の接近を邪魔できないかしら」
「アイリッシュ・ルドマン侯爵令嬢がどんな人物なのかを探らなくちゃ、対策のしようがないわね」
「モニカ」
「任せといて。さすがにあの造花ドレスと、生の花を食べる文化が社交界に旋風したら嫌すぎるわ」
同感よ、モニカ。
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