いざ、学園へ…?
「エニア…エニア!」
「むかしむかしあるところにおうじさまがいました…」
「物語を音読されてもわかりませんよ。」
あれからルイス様に飛行魔法を強制で発動させられ、学園へ向かうべく私達は空を飛んでいた。
「無理ですよぉ…私に護衛なんて、潜入なんて!」
「信じています。」
「棒読みじゃ信じられませんよ!」
あんまりだ。身につけている制服ですら眩しい。
「うう…世界が眩しい…」
「それはあなたが普段引き込もっているからですよ。インドア魔女殿。」
反論できない。別に外に出ていないわけではない。外に出る必要がないのだ。最低限に抑えているだけで、決して日差しが眩しいとか、本を読んでいたいとかそういうのではない。
「ほら、見えてきましたよ。あれが、セレンディア学園です。」
「ほわ…」
白い壁。薔薇の生垣。そして何より…
「に、に、人間がいる!?な、なんかキラキラしてませんか、るい…ルイス様!?」
後ろをバッと振り向いたらルイス様がいなかった。
結構遠くで手を振っている。
「な、なななんで私がこんな目にぃぃぃぃ…!」
そうだ。なんでこんな目にあっているかといえば、王子が刺客に狙われているからだ。
ならば、その刺客が悪い。
ということは。
「絶対、許さないんだから…全員、抹殺してやるぅぅぅ!」
うわああああああああん、と泣き叫ぶ声がどこまでも広い広い空へと吸い込まれていった。
***
『いいですか、エニア。国王陛下の名により、気づかれないよう護衛しなければなりません。なので、当然貴女のその名前も使えず、〈七賢人〉という肩書も使えません。なので、私の遠い親戚にお願いして、貴女を隣国の辺境伯であるフロンティーア伯爵の養女としておきました。いいですね?くれぐれも、くれぐれも、余計なことはしないように。ああ、あと、貴女の名前はアリスですから。では、頑張ってください。』
「私は伯爵の養女…私は伯爵の養女、私は伯爵の養女、私は…」
「大丈夫?緊張しないで。きっと大丈夫だから。」
「あ、あ、は、ははははい…」
この人は所謂担任、というものらしい。
(は、話しかけてこないで…)
今にも失神しそうなのだ。胃がひっくり返る。
(うえ…吐く…プレッシャーで吐く…)
「みなさーん、今日は留学生を紹介します!さ、入って。」
「…」
視線、が。
浴びせられる視線が怖い。
興味の目。ものを見る目。嫌い、嫌い。
「今日から留学生としてくるアリス・フロンティーアさんです。自己紹介をどうぞ?」
「あ、えと、あの、私、私っ…」
視界がぐるぐると回る。気持ち悪い。
無理、だ。
「アリスちゃん!?」
こうして、何やら体を揺さぶられながら、私、エニア・レイン改め、アリス・フロンティーアは、留学初日ち多大なるプレッシャーとストレスによってぶっ倒れた。
遅くなって申し訳ない…
明日はもう一話更新できそうです…!