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6話

 


 子鳥の声で目が覚めると、ベッドの隣には薄い金色の髪をしたセラフィーがいた。自分一人で寝ているいつもよりも暖かくて、少し汗をかいている。


 心が温かくなる。


 朝の空気が澄んでいて窓から入ってくる光はきらきらと輝いている。今までで一番気持ちのいい朝だ。


 セラフィーの髪の毛に指を通してみると、サラサラとした心地のいい感触がした。自分の白銀色の髪の毛も好きだけど、こっちの髪色もとてもきれいだ。


 昨日初めて会って、一緒にお風呂に入って、ご飯を食べて、お城の中を案内してあげた。すごく楽しくて仕方がなかったのだけど、夕ご飯を食べたらすぐに私はすごく眠くなった。


 いつもだったらこんなこと無いのに、と思って先生に聞いてみたら、私の体はまだ完璧には回復していないから、体が眠ることを求めているのだと言ってくれた。


 そう言われて気が付いたら体がまだ重かった。本当はもっとセラフィーと一緒に話したりしたかったけれど、私は眠ることにした。先生もその方が良いと言ってくれたし私もそうしたかった。


 どうしてかと言えばお城の中にはまだセラフィーに見せていないものがあって、それにはいつもの体の調子の方が良いからだ。


 いつもよりも早く寝る準備をしてベッドに入ったら、あっという間に眠ってしまった。何の夢を見たのかは覚えていないけどいい夢だった気がする。


 そして起きたら隣にはセラフィーがいてくれた。


 先生はセラフィーにも部屋をくれたけど、一緒に片付けをした時に一緒に寝てもいいかって心配そうな顔で聞いてきてくれたので、私は良いよって答えた。セラフィーが私と一緒に寝たいと思ってくれたのはすごくうれしい。


 なんかいい日だ。


 そう思ってベッドから立ち上がったら昨日よりも全然体の調子が戻ってきているのが分かった。これならセラフィーにあれを見せてあげることが出来る。


 きっとビックリするだろうな。


 その時の事を考えると楽しみだ。さあこうしてはいられない。顔を洗って、歯を磨いて、髪を櫛で梳いてサラサラにしておこう。


 セラフィーにはしっかりしたお姉さんだと思ってもらいたい。あと綺麗だと思ってもらえたら最高だ。




 ◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆





 朝ご飯をお腹いっぱい食べた後、私はセラフィーを連れてトレーニングルームに連れて行ってあげた。


「ねえマリン、これ何?」


 目を輝かせたセラフィーが指をさして聞いてくる。見たことが無いものが沢山あってワクワクしているんだと思う。


「それはね、プロテインって言ってトレーニングが終わった後に飲んでもいい甘くて美味しいやつ」


「えー美味しそう!」


 飛び跳ねているセラフィーを見ていると教えてあげてよかったという気持ちになる。もっともっと聞いてほしい、私はこの家の事なら何でも知っているんだから。


「色々な味があってね、それをミルクと一緒にいれてシャカシャカするの。それもすごく楽しい」


「やりたいやりたい、私もシャカシャカしたい!」


「だからそれはトレーニングが終わってからなの」


「えーそれなら私も早くトレーニングしたい」


「最初はびっくりすると思うよ」


「どういうこと?」


「それはやってみればわかるから。そこにあるのが冷蔵庫であの中にミルクが入ってるの」


 歩いて行って冷蔵庫を開けてみる。


「これはお肉?」


「それは味の付いた鶏肉。トレーニングが終わったらこれも食べて良い奴なの。パサパサしているから私はあんまり好きじゃないんだけどね」


「好き嫌いは駄目なんだよ」


 薄い赤色をした目で真っ直ぐ見られて私はドキッとした。


「なんでも食べないと体が大きくならないんだよ」


「そ、そうね………」


「私が食べさせてあげるから一緒に食べよう?」


「うん………」


 しまった。立派なお姉さんだと思ってもらうつもりだったのに好き嫌いをしてることがばれてしまった。私はパサパサした鶏肉も好きじゃないけど、人参もピーマンもお肉の脂身は嫌いなんだ。


 いままでは隠れてこっそりゴミ箱に捨てたりしていたけど、それだけはバレないようにしないとお姉さんとして格好悪い。


「それよりもこれを見てよセラフィー!」


 少し大きめの声を出したマリンが天井ギリギリの高さがある大きな白い箱を指さして言った。


「なにそれ?」


「これはね、バーチャルシュミレーションマシンっていって、横にある画面を操作するとここから魔物が出て来るの」


「魔物!?怖いよ、マリンやめてよ」


 今までの元気な姿は全然なくなって小さな体を小さくして私の背中に張り付いている。


「大丈夫これはそういうのじゃないから!」


 元気づけるために元気に言う。


「ここから出て来る魔物は体が無いの」


「体がない?」


「そうだよ。だから私たちの体に触ったりなんかできないの。だけど本物の魔物と同じ動きをしてくれるから戦いのトレーニングになるんだよ」


「ほえー」


 何もわかっていない顔をしている。そうだった、私も先生からこれの使い方を聞いた時には何が何だか分からなかった。


「ここに当たっても切れない武器があるから、ここから好きなのを選んで戦うの。ちょっとだけやってみせてあげる」



 そういったマリンは画面を操作してオークを呼び出すとにした。この魔物は体が大きくて強そうなので最初は驚くのだけど、怖いのは最初だけでやればやるほど簡単な相手なのだ。


 戦っているところを見せればきっと、セラフィーは私のことをすごい人だと思ってくれるだろうな。


 にやにやが止まらないマリンは知らない。


 最近では弱すぎて準備運動にもならないオークという魔物が、普通の冒険者であればひとりで倒すのは困難なほどの強さを持っていることを。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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