1話
僕は鍼灸師を目指す、北海道から上京してきた専門学校2年生。五代 耕之助。
歩きながらテスト勉強をしていたら飛び出す車に気づかなかったんだ…。
僕が最後に勉強していたのが五行論。治療ベースにもなるから覚えておいたんだけど…どうやら仕事には活かせなさそうだ。
ある程度勉強していたとはいえ、少し悲しい。
『いやぁ…本当にすまないな』
耕之助「え?」
『君の寿命は120歳で鍼灸師として大成功。家族にも恵まれ、素晴らしい生涯を過ごすはずだったんだが…』
耕之助「だが…?」
『ワシが居眠りしちゃって、事故止められなかったんだよ…本当に申し訳ないと思っている!』
耕之助「いえ、誰でも失敗はありますから。今後は僕のような人を作らないようにしてください」
『ワシが許されるのか!?』
耕之助「僕だってテストで間違うこともあります。怪我することもあります。誰も悪くはない。今回も元を正せば車に気づか
ないで勉強に夢中になっていた僕が悪いんです」
『そうか、そうか、君が大成功する理由はそういうところにあったのか…』
耕之助「それで僕は天国ですか?地獄ですか?」
『それがな…本来であればその判決は人生を全うしてから行われるのだ…』
耕之助「それでは僕はこのままなんでしょうか?」
『一つ、提案がある。その知識を使ってまた新しい世界で生きてみたくはないか?』
耕之助「そういうことができるんですか?」
『条件が一つ。人生を楽しく過ごしてくれ』
耕之助「わかりました。でもどうやって?あなたは神様か何かなんですか?」
『あれ?それじゃ誰と話してると思ったの?』
耕之助「えーっと…閻魔様的な?」
『あ…そう…』
耕之助「僕は元の世界へ帰れるということですか?」
『流石にそれはできないんだ。なので全く別の世界に行ってもらう』
耕之助「そうですか…それでは残してきた父と母、弟にはよろしくお伝えください」
『あいわかった。それでは一つ希望を聞こう。何か求めるものはあるか?』
耕之助「そうですね…生きていければいいかなと思います」
『それでは君にあった能力を授けよう。有効活用してくれたまえ』
耕之助「僕にあった能力ですか…それは楽しみです」
『幸多からんことを』