クラウンズ・パーティ
クラウンズ・パーティ
*注(叫び、罵詈雑言、残酷描写、高笑い、泣き台詞あり) 上演時間50分前後
登場人物 不問5 人数比、口調変更、兼ね役変更、一人称変更可(演じやすい様に変えて下さい。アドリブは他の演者様に迷惑をかけない範疇で)
サッド/ウォーカー 台詞数29/18 泣き虫の幼いピエロ 常に赤い風船を手放さずに持っている/サッドの守護霊的存在 五月蝿い
プエブロ(善/悪) 台詞数84 両極端な善悪の二面性を持つ二重人格者 型破りな行動が多いピエロ 善が創造、悪が破壊の役割を担う
キャラ 台詞数72 千差万別の顔を持ち、様々な役割を演じるピエロ 普段は生真面目なまとめ役
ハッピー 台詞数49 頭のネジが外れたピエロ 時々一人で何かと会話している
ジェスター/ナレーション(N) 台詞数35/15 態度のでかい小人の宮廷道化師 ピエロより位が高い為高慢に振る舞う
役表
サッド/ウォーカー:
プエブロ(善/悪):
キャラ:
ハッピー:
ジェスター/ナレーション(N):
以下本編
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ジェスター「やぁやぁ、諸君ごきげんよう。相変わらずここはまるで馬小屋の様だ。諸君に実にお似合いだよ、うんうん」
キャラ「これはこれはジェスター殿、わざわざこんな馬小屋までご足労頂きましてありがとうございます。本日はどの様なご用向きで?」
ジェスター「うん、王の勅令を伝えに来たんだ。みな、その小さな脳味噌でも理解できる様よく聞く様に」
プエブロ(悪)「ケッ、テメーの脳味噌の方が方がよっぽど小せぇだろうに」
ジェスター「何か言ったかな? 生憎犬の言葉は分からなくてね」
プエブロ(悪)「あ? 誰が犬だと? 犬はテメーだろ、犬と同じ扱い受けてんだろうがテメー」
ジェスター「狂犬と、王の寵愛を受ける宮廷道化師を一緒くたにして欲しくはないなぁ。それより、さっさと用件を伝えてこんな息の詰まる場所から出て行きたいんだが、誰かその馬鹿犬を黙らせてくれないか?」
ハッピー「ハイハーイ! じゃあボクがワンちゃんと遊んであげる〜! ほらプエブロ〜、おすわりおすわり〜」
プエブロ(悪)「ハッピー、テメー! ぶっ殺すぞ!」
ハッピー「アハハハ、プエブロ顔ピンク〜! 化粧してなかったらお猿さんになっちゃってたね?」
プエブロ(悪)「あんだとコラ!? いい加減にしろよテメー!」
キャラ「はいはい、二人ともそこまで。王様の勅令なんですからちゃんと聞きませんと」
ハッピー「はーい、ごめんなさーい!」
プエブロ(悪)「チッ……! とっとと済ませやがれ」
キャラ「それとサッド、いつまでもそんな隅にいないでこっちに来て下さい」
サッド「う、うぅ……バレた……ひっぐ……」
キャラ「あぁもう、この程度の事で泣かないでください。ほら、ハンカチ。化粧が落ちてしまわない様に気を付けて」
サッド「うぅ……ありがとう……(鼻をすする)」
ジェスター「もういいかな? 諸君の茶番に付き合ってる暇は無いんだが」
キャラ「失礼しました。もう大丈夫です、どうぞ続きをお願いします」
ジェスター「うん、では心して聞きたまえ。えー、ゴホン。近々隣国の貴族を招いて宴を行うのだが、その際の催し物として隣国の人気剣闘士達と諸君らの試合を執り行う事となった。存分に観客達を楽しませた末に、必ず勝つ様に。との事だ。よく頭に刻みつけたかな? 観客達を存分に楽しませてから必ず勝つんだ、分かったね? ではそこの駄犬、復唱してみたまえ」
プエブロ(悪)「あ? 調子乗ってるカス共をボコボコにしてやりゃいいんだろうが、わぁってるよ」
ジェスター「ふむ、まぁ馬鹿犬としては及第点か。いいだろう。本番は二週間後だ、それまで各々腕を磨いておく様に。万が一負ける様な事があればどうなるかは、分かっているね?」
ハッピー「磷? 斬首? 鞭打ち? 拷問? 一体なんだろね、なんだろね!」
サッド「い、痛いのは嫌だからギロチンがいいな……ひっぐ……」
キャラ「何で負けるの前提なんですか、勝てば良いんですよ勝てば。というか必ず勝てと言われているでしょう」
サッド「ボ、ボクなんかが勝てるかな……自信ない……うぅ……」
キャラ「はいはい、もう、すぐ泣かない。ジェスター殿、畏まりました。極上のエンターテイメントを観客の皆様へご覧にいれましょう」
ジェスター「うん、頼んだよ。では私はこれで。あー嫌だ嫌だ、早くコロンをかけなければ。すっかり馬小屋の臭いが染み付いてしまった」
キャラ「……はぁ。ようやく行ってくれましたか。己も同じ道化でしょうに、何故あそこまで偉そうに出来るのか」
プエブロ(善)「駄目ですよ、キャラさん。あの方も宮廷道化師として様々な重責を背負っているのです。少しくらい息抜きをさせてあげてもいいじゃありませんか」
キャラ「はぁ……。なんで今頃になって出てくるんですか、どうせならさっき出てきて下さいよ。貴方の相方のせいで無駄に拗れたんですから」
プエブロ(善)「それは申し訳ありませんでした。ムカついて疲れたから代われ、との事です」
キャラ「本当に自己中ですね……。まぁ今更ですね、気にしても仕方がありません。それより当日はどちらが出るんですか? 出来れば貴方の方がこちらとしては有り難いんですが。彼では観客を盛り上げる間も無く相手を殺してしまうでしょうし」
プエブロ(善)「当日になってみなければなんとも。相手の強さによってはやりたがる可能性もありますので」
キャラ「ふぅ……、大事にならない事を祈るばかりですね……」
間
ジェスター「お集まりの皆々様方、よくぞお越し下さいました! わたくし宮廷道化師のジェスターと申します、以後お見知りおきを。さて本日皆様にご覧入れますは、ガイウス共和国様の誇る人気剣闘士達と我が国子飼いの道化師達の御前試合で御座います。道化師なんぞが剣闘士殿の相手になるのかとお思いでしょうが、それは試合を観てのお楽しみで御座います。
どうぞ最後までごゆるりとご覧下さいませ……! ……さて、それでは早速始めていきましょう。第一試合、ガイウス共和国代表、ギラン・マルケイル!! シュレド王国代表、プエブロ・ピエロ!! 両者、前へ!」
プエブロ(善)「ふぅ、私が最初ですか……。程々に盛り上げた上で勝てとの事ですが……盛り上げるのは得意ですが人を傷付けるのは気が進みませんね……」
プエブロ(悪)「だったら俺と代われ」
プエブロ(善)「プエブロ、しかし貴方ではすぐに相手を殺してしまうでしょう」
プエブロ(悪)「良いじゃねぇかプエブロ。そんときゃ相手が雑魚だったってだけの事だ」
プエブロ(善)「ではお任せしましょうかね。私はあまり人を傷付けたくはありませんし」
プエブロ(悪)「よーし、へへっ腕が鳴るぜ。ちったぁ楽しませてくれよ……!」
ジェスター「さぁ、百人斬りのギランの戦績にまた一人哀れな犠牲者が刻まれるのか。それとも道化とは名ばかりの制御不能な狂犬が暴れ回るのか。第一試合、いざ開始です!」
プエブロ(悪)「っしゃあ!! 原型残んねぇぐらいぐちゃぐちゃにしてやるよ! 覚悟しやがれぇ!!」
間
キャラ「……結局、こうなりましたか。一人目との試合で血を見たプエブロが大興奮。そのまま興奮を抑えきれずに残りの剣闘士達を挑発、全員集まったところで止める間も無く瞬殺……。これ、私達も一緒に責任取らされるんですかね」
プエブロ(善)「面目次第もありません……。主導権を奪う暇もなく……」
キャラ「まぁ、あぁなることは半分予想は出来ていたんですが、まさか一番手としてプエブロが呼ばれるとは……。
ふむ、これは何か作為的なものを感じますね……」
プエブロ(善)「と、いうと?」
キャラ「ジェスターですよ。奴の考えそうな事です。大方これで私達に王の不興を買わせ、排除するのが目的なんでしょう。
所詮ただの道化でしかない奴にとって私たちの持つ力は、恐怖こそすれど自らが御せる様なモノではないと本能的に理解しているでしょうし。……なんて言ってたら早速来ましたね。さて、どんな申し送りをされるのやら」
ジェスター「おい、貴様ら!! よくも大勢の前で我が王に恥をかかせてくれたな! 本来であれば貴様らなぞ今すぐこの場で処刑し、見世物の代わりとするところだ! だが、だがだ! この慈悲深きわたしの進言によって貴様らは命を繋ぎ止めた! 這いつくばって感謝するがいい!」
キャラ「これはこれは、ジェスター殿。なんと感謝を申し上げたらよいか……。して、その進言の内容とは?」
ジェスター「ふ、ふふふくははは! 殺し合いだよ、本来剣闘士達とする筈だった殺し合いを諸君ら同士で行ってもらう訳だ! どうだねこのわたしの機転! アヒャヒャヒャヒャ!!」
キャラ「……組み合わせは、どの様に?」
ジェスター「ヒヒヒヒ、闘技場へ出れば分かる! さぁ、さっさと行けノロマども!」
サッド「う、うぅ……ノロマって言われた……。でも言い返せない……ひっぐっ……」
ハッピー「えっへへ〜♪ ノ〜ロマ〜♪ ノ〜ロマ〜♪」
プエブロ(悪)「ハハハハ! 久し振りだなぁおい、俺等同士でやるのなんてよぉ!」
キャラ「……はぁ。まぁ想定の範囲内でしたし、良しとしますか」
ジェスター「あぁ、おい、泣き虫サッドちょっと待て、伝える事がある」
サッド「え、な、なに……?」
間
ハッピー「わぁ〜、お客さんいっぱい〜♪ ここまで多いの初めてじゃない〜?」
プエブロ(悪)「帝国の時もこんなんじゃなかったか?」
ジェスター「大変お待たせ致しました、皆々様方。先程は大変失礼致しました。お詫びに只今より、我が国の道化師達による試合、いいえ殺し合いを行います!! ヒ、ヒヒヒヒヒャヒャ! それでは第一試合のメンバーを発表致します!
泣く事しか出来ない愚図のグズ! しかしその身に秘められし力は未だ未知数! 番狂わせは起こるのか!!
サッッッッッド・ピエ〜〜〜〜ロ!!!!!!!」
サッド「う、うぅ……グズって2回も言われた……ひっぐっ……」
ジェスター「そして対するは、千差万別の顔を持ちあらゆる者に化ける変装の達人! しかして、その本当の顔は一体どれなのか!? キャーーーーラーーーーー!! ピエ〜〜〜ロ!!!!」
キャラ「ははははは、なんと陳腐な紹介ですねぇ。品の欠片も無い。そして、たった一片の本質すら見抜けていない。流石はジェスター殿だ。ふ、ふふふふ……」
ジェスター「さぁ、両者所定の位置へ!」
キャラ「サッド、大丈夫ですか? 戦いたく無いのであれば棄権……は許して貰えないでしょうねぇ。出来るだけ痛くない様にしてあげますから、さっさと済ませましょう」
サッド「うぅ……ごめん。キャラ、負けるわけにも死ぬわけにもいかなくなっちゃった……だから、本気で行くね……ひっぐっ……」
ジェスター「それでは、第一試合、開始ーーーーーーー!!!!!!」
キャラ「サッド、一体何があったんですか? 貴方がそんなにやる気なのは珍しいですね。誰の差し金です?」
サッド「ジェスターに脅された……う、うぅ……ごめんね、キャラ……」
キャラ「はぁ、やっぱりですか……。では、私も本気でいかなければこちらが危ういですね。サッド、どちらが勝っても恨みっこ無しですよ」
サッド「うぅ……あんまり痛くされたら恨みで化けて出てきちゃうかも……」
キャラ「それは洒落になりませんね、善処しましょう」
サッド「じゃあ、ひっぐっ……行くね?」
N:言うや否やサッドの周りに青い炎が次々に浮かび上がる。その様相はまるで人魂の様であった。
そしてそれは自ら意思を持つかの様に、フワフワとキャラに向かって飛んでいく。
キャラ「本気というのは嘘じゃない様ですね……ふぅ〜、あれ苦手なんですよねぇ。フッ、ハッ、シッ! ヤッ! っっと、もう得物が腐りましたか。……以前より威力が上がってますね。サッドもちゃんと腕を磨いているんですね……」
ジェスター「おーと、キャラ・ピエロ早くも万事休すか!? 早い、あまりにも早すぎる! もっと盛り上げて見せろ道化師の端くれならば!!」
キャラ「ちっ、うるさいですねぇ。ではお言葉通り盛り上げて差し上げましょうか。ふむ、サッドが相手ならやはりこれでしょうね」
N:そう言ってキャラは顔を手で覆い隠す。手を放した次の瞬間現れたのは満面の笑顔で覆われた胡散臭い顔。どこから取り出したのか手に持つ得物はナイフからレイピアへと変わっていた。
サッド「うぅ……出たぁ……ひっぐっ……その顔嫌い……」
N:サッドの感情の揺れと共に周りの人魂が油を注がれたかの様に増幅していく。
サッドが手を振ると大きさとスピードを増した人魂がキャラへと殺到する。
キャラ「ホハハハハハ!!! 効きません、効きませんよぉこの程度! ハイッ! ハイッ! ハイィッ!!
ほらほらサッド次はまだですか!? ホハハハハハハハハハ!!!!」
サッド「うぅ……嫌だって言ってるのにぃ……やめてくれないならキャラ嫌いぃ……」
キャラ「ハハハハ仕様が無いでしょう貴方が全力で来るのならこちらもそれ相応の対応をしませんと! ハハハハハ!!」
サッド「なら……とっておき……ひっぐっ」
N:サッドの言葉と共に周りに浮いていた人魂達が合体し、一つの大きな人魂となる。
その大きさはゆうにキャラの背丈をも超え、激しく燃える炎の様に揺らめく。
キャラ「ホハハハハ!! これは何とも立派な!!! 対処に困りそうだぁ!!! ホハハハハハ!!!」
サッド「じゃあ……行くね……」
キャラ「ふ、ふふふふふ! 早い、早いですねぇ!! しかも、っっぐぅ……ふふふふふ、重い!!!!
また厄介なモノを出してくれましたねぇ!! アハハハハハ!!!!」
サッド「その顔止めてくれるなら……止めてあげてもいいよ?」
キャラ「ンフフフフ、ではお言葉に甘えるとしましょうか……」
N:再び顔を手で覆うキャラ。すると体が隆起しあっという間に筋骨隆々とした姿になる。
手を放すと、そこにあったのは憤怒に燃える怒りの表情であった。いつの間にか構えていた背丈程の大剣を携えキャラは静かに言い放つ。
キャラ「顔変えたらそれしまうんだろ? ほらさっさと仕舞えよ」
サッド「う、うぅぅぅぅぅ……その顔もっと嫌いぃぃぃぃぃぃ!」
N:サッドの感情に合わせ人魂は更に増幅する。今や見上げる程の大きさとなったそれは最早人の目では追えぬスピードでキャラへと迫った。
キャラ「嘘はよくねぇな……良くねぇよ! ダラァッ!! おら、お前のとっておきはもう消えちまったぞ? ……嘘吐きには、お仕置きしねぇとな……?」
サッド「ひっ、ひっぐっ……だ、だってぇ……」
キャラ「だってもクソもねぇ、これで終わりだ!」
N:キャラの剣がサッドへと振るわれた瞬間、サッドが右手に肌身離さず持っていた赤い風船が音を立てて割れた。
刹那、黒い影が現れキャラの剣へと取り付く。
キャラ「チッ! ウォーカー……さっさと離れやがれ……! 剣が汚れる!」
ウォーカー「シシシシシ! そうはいかねぇ、そうはいかねぇよキャラちゃ〜ん! オイラが出て来るってこたぁそんだけ御主人がピンチなんだろぉ〜? じゃ〜あ原因はお前だぁ、キャラちゃんよぉ!」
キャラ「だぁぁぁぁぁ!!! うざってぇ!! 離れろっつってんだろ!!」
ウォーカー「シシシシシ、苛立ってんねぇキャ〜ラちゃん!! だ〜が〜? オイラとその顔相性悪りぃのは分かってんだろう? さっさと変えたらどうだぁ? シシシシシ!!」
キャラ「分かってんだよ、んな事! ちっ、テメェの言う事に従うのは癪だが変えるか……」
N:再度顔を覆い、手を放ったその先にあったのは目が吊り上がり、不気味な笑顔を浮かべたキャラの姿であった。顔の変化と共に体型も変わり、元のスマートな姿へと戻っている。そしてその手に握るは一本のダガーナイフ。
ウォーカー「おいおいおいおーい! またその顔かよぉ、芸が無いねぇ。オイラとやるときゃいっつもその顔じゃねーか。偶にはなんか別のも見せてくれよ〜」
キャラ「ヒ、ヒヒ、ヒヒャヒャヒャヒャ!! 貴方とやるにはこれが一番都合が良いのでねぇ!! 狂気には、より強い狂気を!!」
ウォーカー「おいおい、か弱いオイラを狂気だなんて枠に当て嵌めねぇでくれよぉ〜。オイラはただの……(キャラの耳元に現れ)ウォーカーさ」
キャラ「ヒヒャッ!! 流石の速さですねぇ! シャアッ! 全くこれだから嫌になる、貴方との闘いは常に緊張感でマシマシだぁ!!」
ウォーカー「シシシシシ!! そう思って貰えるとオイラも嬉しいぜぇ!! さぁ、どんどんやろぉぜぇ〜!! キャ〜ラちゃ〜ん!!」
キャラ「正直言って結構疲れてきたんですが、仕方ないですねぇ。ヒヒッ、ヒヒャハハハハ!!」
ウォーカー「へいへい、おーにさんこーちら手ぇの鳴る方へぇ〜! ってオイラ手ねぇんだった! シシシシシシ!!」
キャラ「ヒ、ヒヒ、あ〜ストレスが溜まりに溜まりますねぇっ!! ハハハハハハハ!!! そこぉっ!!」
ウォーカー「うわぁお、あっぶねぇ〜。幾らオイラでもそのナイフじゃちっとばかし傷がついちまうからなぁ、あぁ〜くわばらくわばら」
キャラ「ヒヒヒヒッ! 亡霊ならばっ! 潔くっ! 滅されてはっ! 如何ですかっ!?」
ウォーカー「おいおい、オイラがそんな諦めが良いようにみえるかい? シシシシシ!」
キャラ「ヒ、ヒヒ! そろそろ諦めてはくれませんかねぇ? 私あんまり体を使うの得意じゃ無いので、ヒヒヒヒ」
ウォーカー「ヘヘッオイラにゃ疲れの概念がねぇからなぁ、い〜くらでも付き合っちゃうぜぇ?」
キャラ「フヒヒヒヒヒッ! それはどうでしょう、後ろをご覧になっては? ヒヒッ」
ウォーカー「後ろぉ? って、あ〜〜やっべぇ忘れてた。御主人体力ねぇからなぁ、どおりでさっきからなんか力が出ねぇと思ってたんだよ」
キャラ「力が出なくてアレですか、ヒヒッ! 相変わらず嫌味ですねぇ」
ウォーカー「シシシッ! オイラが本気でやっちゃあキャラちゃんすぐやられっちまうだろぉ?」
キャラ「それはどうでしょうねぇ、ヒヒヒヒッ! あの頃の私とは違うんです、フヒッ」
ウォーカー「シシシシシ! 負けず嫌いなのは変わって無いねぇ。ま、今日のとこは引き分けにしといてやるよ。オイラは御主人を見てやらにゃあ」
キャラ「ヒヒッ、させるとお思いで? 今回は残念ながら試合ではなく殺し合い、どちらかが死ななければ幕は引かないのですよ。と、いう事で。これでお終いです」
ウォーカー「んにゃ!? なんだぁ? ってこりゃ封魔の……てめぇこいつをどこで、あだだだだ!?」
キャラ「ヒャハハハハハハ!!!!!! 私も色々対策しているという事です。それでは。フヒッ、フヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
ウォーカー「(被せて)んぐぁぁぁぁぁ!!!! ご、御主人、す、すまねぇ……」
キャラ「ふ、フフフフフフ、アーーーハハハハハハ!!!!!」
サッド「はぁ、はぁ……ひっぐっ……ウォーカー、消えちゃった……」
キャラ「ヒヒヒヒヒ、えぇそうです、貴方を守ってくれるものはもう何もありません。そろそろ幕引きといきましょう、貴方ももう限界でしょう? ヒヒヒヒッ!」
サッド「…………ふぅ…………痛く、しないでね?」
キャラ「ヒヒッ、善処します」
ジェスター「遂に! キャラ・ピエロの刃がサッド・ピエロの胸に深々と突き刺さったぁぁぁぁ!!!!! ヒャ、ヒャヒャヒャヒャ!! 死んだ、死んだのかぁ!? サァァァァァッド!?」
キャラ「本当に品の無い……」
N:サッドの胸からゆっくりとナイフを抜き、その亡骸を恭しく抱えるキャラ。その顔は既に普段の生真面目な顔に戻っていた。
そしてジェスターの言葉に返すかの様に、お辞儀をしてみせる。
キャラ「ふ、ふふふ。後で覚えておいて下さいね、飼い犬風情が……」
ジェスター「勝者、キャラ・ピエーーロ!!! 第一試合はキャラ・ピエロの勝利で幕を閉じました! 観客の皆様、配当金を只今よりお配り致しますので少々お待ち下さいませ。同時に次の試合の予想も始まりますので、どうぞ奮ってご参加下さい! それでは改めて、キャラ・ピエロへ祝福と怨嗟の拍手を!!」
間
プエブロ(悪)「テメーが勝つたぁなぁ。意外だぜ、ま、何にせよお疲れさん」
ハッピー「初めてウォーカーとヤった時はボッコボコにされてたもんねぇ〜。顔の形まで変わっちゃって、あ、顔が変わるのはいつものことか、アハハハハハ♪」
キャラ「ふぅ……これでも仲間を手に掛けた後なんですよ? もう少し配慮してくれても良いのでは? ま、あなた方二人に最初からそんな事期待してはいませんが。二人とも、程々に頑張ってくださいね」
プエブロ(悪)「言われなくてもやってやるよ、何たって堂々とこのちゃらんぽらんをぶっ殺せるんだからなぁ!」
ハッピー「ハイハーイ、ちゃらんぽらんで〜す♪ ところでちゃらんて何? ぽらんて何? 変なこ〜とば〜、アハハハハハ♪」
プエブロ(悪)「だーもう、その笑いやめろ! テメーの笑い声鼻につくんだよ!」
ハッピー「アハハハハハ! じゃあじゃあも〜と笑ってあげるね〜♪ アハハハハハハハハハ!!!!!」
ジェスター「さぁ、それではオッズの発表です! ……なんと! 意外や意外、見た目もハッピーオツムもハッピーなハッピー・ピエロが僅差で勝利予想を勝ち取った! 予想に違わず勝利をもぎ取れるのか! それとも戦狂いの狂犬がまたしてもやらかすのか! 両者、入場です!」
ハッピー「出番だ、出番〜♪ ひき肉、ひき肉〜♪」
プエブロ(悪)「ははっ、ひき肉にされてぇってか。いいぜ、グチャグチャにしてやらぁ」
ハッピー「アハハハハハ! でっきるかな、でっきるかな♪ 出来ると良いねぇ〜! じゃあボク先行くよ〜」
プエブロ(悪)「覚悟しやがれ、メタクソにしてやる」
ジェスター「さぁー、両者現れました! 頭のネジがゆるんだハッピーハッピーハッピー・ピエロ! そのオツムの具合でまともに戦う事が出来るのか!? しかしタガの外れた者ほど読めないものはない! 健闘を祈るぞハッピーーーー・ピエロ!!!」
ハッピー「アハハハハハ! がーんばりまーす♪」
ジェスター「対するは制御不能の狂犬と、慈悲深き聖人の心を併せ持ったイカレポンチ! 戦いの腕だけはまともだが、まともな頭は持っちゃいない! さっさとくたばってしまえ! プエブーーーロ・ピエロ!!!!!!」
プエブロ(悪)「ハッ、ご丁寧な紹介どーも。このクソみてーな見世もんが終わったら次はテメーの番だからなペットのワンちゃんよぉ」
ジェスター「それでは、第二試合開始ーー!!」
プエブロ(悪)「よーし、始めるとすっか! おいプエブロ、アレ出せアレ」
プエブロ(善)「はいはい、コレですね。相変わらず趣味の悪い事で」
プエブロ(悪)「おうおう、コレコレ! 何言ってんだ、これだから良いんじゃねぇか!」
ハッピー「またフランベルジュ〜? ほんと好きだねそれ〜。 まさに猿の一つ覚え〜、あれ? 猿だっけ? 馬だっけ?」
プエブロ(善)「それを言うなら馬鹿の一つ覚えです」
プエブロ(悪)「誰がバカだこらぁ!」
ハッピー「アハハハハハ!! 相変わらず一人で漫才してるみたいだね、上手、上手〜!」
プエブロ(悪)「あ〜もうめんどくせぇ、テメーと話してっと調子狂うんだよ、おら、行くぞ!」
ハッピー「はーい、おいでおいで〜♪ あんよが上手、あんよが上手〜♪」
プエブロ(悪)「先ずはその口から黙らせてやらぁ! っらぁ!!」
ハッピー「うわぁっ、あぶない! ホッ、ヤッ、ハッ! アハハハハ! こっちだよ〜ん♪」
プエブロ(悪)「ええぃ、ちょこまかちょこまかっ! かったりぃな、止まりやがれ!」
ハッピー「やだよーだ、ボク痛いの嫌いだも〜ん」
プエブロ(悪)「だったらまず足止めしてやる、おいプエブロ、アレだ」
プエブロ(善)「はいはい、ナイフにマキビシ、後は煙玉ですね」
プエブロ(悪)「馬鹿野郎、言っちまったらバレるじゃねーか!」
プエブロ(善)「どうせお互いの手の内なんて知り尽くしてるんですから一緒でしょう。貴方もそれを分かっておいででは?」
プエブロ(悪)「それもそうか。まぁいいや、おら、食らいやがれ!」
ハッピー「わーいっぱい飛んできた〜♪ どうしよっかなぁ〜?」
プエブロ(悪)「ハッ、その量捌けたら褒めてやるよ」
ハッピー「わっ、煙で視界が! アタッ、なんか踏んじゃったよ、アイテッ、アイテテッ! ナイフも刺さっちゃった! もう〜痛いの嫌だって言ったのに〜、アイタッ、イテテテテッ!」
プエブロ(悪)「ハハハハハ!!! 下手な鉄砲数うちゃ当たるってなぁ!」
ハッピー「な〜んてね♪ はい、お返し〜♪」
プエブロ(悪)「ぐぁっ! 後ろだと!? テメーいつの間に!」
ハッピー「アハハハハハ!! どうどう? ボクの演技上手だったでしょう? 褒めて褒めて〜♪」
プエブロ(悪)「(ナイフを抜きながら)ぐっ、あぁ! くそがぁ、ガッツリ刺しやがって。しかもこれ毒塗ってあんだろ」
ハッピー「さっすがせいか〜い♪ でもおかしいなぁ、ゾウさんでも簡単に倒せる毒って聞いてたんだけど。君ってもしかしてゾウの生まれ変わりだったりする?」
プエブロ(悪)「アホか、生まれ変わりだったらやられてんだろうが。オレ様がこの程度の毒でやられてたまっかよ!」
ハッピー「ま、毒が効かないのは分かってたから良いんだけど。うーん、次はどう攻めよっかなぁ〜♪」
プエブロ(悪)「しゃらくせぇ、次はこっちの番だ! そらっ!」
ハッピー「アハハ、得物を投げてどうするつもり? ジャグリングでもするの〜?」
プエブロ(悪)「プエブロォ! アレだ!」
プエブロ(善)「はいはい」
ハッピー「わぁお! でっかい剣! それなんて名前〜?」
プエブロ(悪)「名前なんざ気にする必要ねぇよ、コレはテメーをぶった斬る剣だ!! だぁらぁ!!!」
ハッピー「アハハハハ!! 今度は猪さんだ〜♪ 色んな動物さんの真似が出来て偉い偉い♪」
プエブロ(悪)「おうらぁ!!!」
ハッピー「うわぁお、すごい風圧! でもそんな大振りじゃ当たんないよーだ♪」
プエブロ(悪)「らぁっ! しゃあっ! オラァッ!!」
ハッピー「ダメダメそんなんじゃだーめだよ〜♪ っっ!! うわぁ〜、足にグッサリだ。え〜と? あ〜、さっき投げたやつかぁ」
プエブロ(悪)「足を止めたなぁ! 喰らいやがれぇ!!」
ハッピー「あっ!」
ジェスター「いったーーーー!!!!! 狂犬がハッピー・ピエロの頭を見事に跳ね飛ばしたぁ!!
全く情け無い! もっと盛り上げてから死ねハッピー・ピエローー!! 残念ながらオッズを裏切り勝ったのはっ……」
ハッピー「アハハハハ!! 首を切られたのなんて久し振り〜! プラ〜ン、プラ〜ン♪ プラ〜ン、プラ〜ン♪」
プエブロ(悪)「あ〜、やっぱダメか。ほんとめんどくせーやつだよ、テメーは」
ジェスター「な、なんとー!! 首が飛んだのに生きている!! 一体どんな奇術を使ったんだハッピー・ピエロ!!」
ハッピー「ジェスターも驚いてるね♪ そういえば見せた事なかったっけ。 んしょっと、えい、えい、はい、元通り〜♪」
プエブロ(悪)「バーカ、逆だ逆」
ハッピー「えぇ? あ、ほんとだ。お尻が見えるや、アハハハハ! ん〜〜、よいしょっとぉ! はい、今度こそ元通り〜♪」
プエブロ(悪)「テメーをやるにゃあ、やっぱし細切れにするしかねえか。それにその上別々の場所に隔離だろ?
かぁ〜っ! 面倒クセェ!!」
ハッピー「まぁ、他にもやり方はあるんだけどぉ〜、エヘヘ〜♪ ひっみつ〜♪」
プエブロ(悪)「あぁそうかよ! プエブロアレ六個出せ、一気に片つけんぞ!」
プエブロ(善)「了解です、でも同時に分断だなんて本当に可能なんですか? 一つでも逃せばすぐに復活されてしまいますよ?」
プエブロ(悪)「やってみなけりゃわかんねぇだろ! つかやるしかねぇんだよ、あんな反則野郎叩きのめすにはこっちも型にハマってちゃダメなんだ、それぐらいお前も良く分かってんだろ?」
プエブロ(善)「……そうですね、型破り。それが私達の特性の一つであり、役割でもありますから。さぁ、どうぞ」
ハッピー「わぁ〜! でっかいミキサー! お料理作るの楽になりそうだね! でもコレで何するの?」
プエブロ(悪)「テメーを切り刻むんだよ。流石に全部細切れになりゃ復活も出来ねぇだろ!」
ハッピー「そうだと良いね〜♪ でも何度も同じ手を食らうほどボクもバカじゃないよ〜だ♪」
プエブロ(悪)「そいつぁどうかな?」
ハッピー「アハハハハ!! なーにその余裕たっぷりの顔〜、似合わな〜い! アハハハハ、ハハ、ハ、ハ? あ、あれ? 体がなん、か……」
プエブロ(悪)「ハッハァー! とっときの痺れ薬だぁ! 痛みを感じねぇテメーでも毒なら少しは効くだろぉ!」
ハッピー「ア、ア、ア、ガガガ」
プエブロ(悪)「そぉらぁっ! セイッ! ダァッ! フンッ! これでぇっ! 終いだぁっ!!!」
N:プエブロが剣を一振りする度、ハッピーの体が分断され六つに分かれたソレはほぼ同時にミキサーの中に放り込まれ、そして骨の砕ける嫌な音と共に一瞬でミンチ状にされる。しかし。
ハッピー「残念、残念、ざ〜んね〜ん♪ この程度じゃボクはやられないよぉ〜ん♪」
N:ミキサーで挽き砕かれた筈のハッピーの声が会場に木霊する。そしてミキサーがガタガタと音を立てて倒れた。
中身が漏れ出し、それは闘技場の中心で再びハッピーの形をとる。
ハッピー「はーい、ふっか〜つ♪ ジャンジャジャ〜ン♪」
プエブロ(悪)「かかったなダボがぁ!! プエブロォォ!!!」
プエブロ(善)「聖者の行進を阻む者、その行いに報いを受けよ。悪の叛逆に従いし者、汝が行いに祝福を」
プエブロ(悪)「開けぇ! 善悪の門!!」
ハッピー「わっ、あっこれ、切れな、うわっ、わっ、引きずり、わっ、わぁぁぁぁぁぁぁ」
プエブロ(悪)「ハァ、ハァ、ハァ……やぁっと終わった……」
ジェスター「き、決まったのか……? …………ど、どうやら先程までの様にハッピー・ピエロは復活しない様です……。しかし今のは何だったのでしょうか? えーはい、そ、それでは、勝者! プエブロ・ピエロ!! オッズを覆し勝利したのはプエブロ・ピエロでした! 只今より配当金の配布と、決勝戦の予想が始まります! どうぞ奮ってご参加下さい!」
間
プエブロ(悪)「あー、終わった終わった。おう、どうだったよオレ達のとっときは」
ハッピー「おかえりー、いやー流石にビックリしちゃった。いつの間にあんなの出来る様になったの?
ボクじゃなかったら死んじゃうよあんなの。もう、しつこいのなんのって」
キャラ「私も驚きましたよ。何処で覚えた魔法ですか?」
プエブロ(善)「厳密には召喚術ですね。善と悪を司る審判の門です。心根が善に傾いていれば天の国へ、悪に傾いていれば地獄へと誘う、本来は死後の世界で死者を裁くのに使われるモノですね。入手した経緯は、ま、企業秘密という事で」
プエブロ(悪)「にしてもこんなすぐに帰ってこられたんじゃあ流石に気落ちしちまうぜぇ。結構苦労したんだぜ? あれ手に入れるの」
プエブロ(善)「まぁまぁ、ジェスター殿達の目を眩ませるぐらいの時間は稼げたんですから良しとしましょうよ。それよりキャラさん、サッドさんの具合は?」
キャラ「あぁ、それなら」
ウォーカー「頗る順調だぜプエブロちゃあ〜ん!! 流石はキャラちゃんだぜ、なんともキレーな刺し方! あれだけ綺麗じゃ刃抜いてチョロっと押さえてやるだけで、すーぐ復活さぁ! そもそもナイフ自体に治癒の呪いが掛けられてたしなぁ。でもよぉ、キャラちゃん、封魔の短刀は痛かったぜぇ? オイラ本当に死んじまうかと思ったよ」
キャラ「はいはい、すいませんでした。さっきから何度も謝ってるでしょう。そもそも貴方には死の概念が無いでしょうが。ちょっと痛かったぐらいでくどいですよ」
ウォーカー「見てくれよ! さっきからこの調子何だぜ? オイラが亡霊だからって好き勝手言いやがる! ひでぇとおもわねぇかぁ? プエブロちゃ〜ん」
プエブロ(善)「日頃の行いですね」
プエブロ(悪)「だな、テメーが悪い」
ウォーカー「なんだよなんだよオイラの味方はいねぇってか〜?」
ハッピー「ふふ〜、ボクも味方ではないかな〜♪」
サッド「ウォーカー……おいで、皆疲れてるから……ね?」
プエブロ(悪)「おうー、とっとと仕舞ってくれそのウルセーの。耳がキンキンすんだよ」
ウォーカー「へっ、じゃあなあピエロちゃん達、また会おうぜぇ〜」
N:ウォーカーはそう言い残すとサッドの傍らに置いてあった空気の入っていない赤い風船の中へとスルスルと入っていく。すると空気を入れられたかの様に、赤い風船が丸々と立派に膨らんだ。
サッド「ふふ……おかえり……ウォーカー」
キャラ「ところでどうします? プエブロ。今から私と貴方でもう一戦との事ですが」
プエブロ(悪)「正直かったりぃ。なんにせよこの国にゃもういられねぇんだし、もう付き合ってやる義理もねぇんじゃねぇか?」
キャラ「ごもっとも。では奴が来るまでのんびりとお茶でも飲んでましょうか。さ、こちらのお席へどうぞ」
プエブロ(悪)「おぅ、ありがとな。よいしょっと、あ、茶請けあるか? アレ出したからもう腹減っちまってよぉ」
キャラ「はいはい、バタークッキーで良かったですよね。どうぞ。丁度新しく作るつもりだったので全部食べちゃって良いですよ」
プエブロ(悪)「(被せて)あーー、ボリッボリッボリッ。おう、言われる前に全部食っちまったぜ。なんだよこれっぽっちしかねぇのか」
キャラ「全く下品ですねぇ……。相方さんを見習って下さい」
プエブロ(善)「私はもう諦めています」
キャラ「貴方が諦めてるならもう私が言える事は無いですね……」
間
ジェスター「おい! 貴様ら! 私の声が聞こえんのか!? 入場しろと再三言っているだろうが!! とっとと出てこいノロマどもがぁ!!! ……あ? おい、どういう事だ。何故、何故その二人がここに居る!? 死んだ筈だろう!?
貴様が! 貴様が! 葬ったではないか!!!!!」
キャラ「おやおやこれはジェスター殿。ようこそお越し下さいました、我々一同首を長くしてお待ちしておりました」
ジェスター「な、なんの話だ! それよりこの状況を説明しろ! 貴様ら、私を謀ったのか!?」
キャラ「いいえ? ちゃんと殺し合いは行いました。御自身のその目でしかと見たでしょう? サッドが刃に貫かれる姿を。ハッピーが得体の知れぬ何かに呑み込まれる姿を」
ジェスター「あぁ!! そうだ!! なのに、なのに何故そこでピンピンしている!?」
キャラ「ハハハハハ! これは異な事を。我々の職業をお忘れですか?」
ジェスター「ピエロだ! 貴様らはピエロ! 卑きピエロ!! ただの、ただの道化の筈だ! そう、私とは違う、宮廷道化師のこの私とは何から何まで違うのだ!! そうか、奇術だな!? なにかお得意の奇術を使ったんだろう!? そうだろう!?」
キャラ「まぁ、当たらずとも遠からずといったところでしょうかね」
プエブロ(悪)「なぁ、もう面倒クセェよ。とっとと殺っちまおうぜ」
キャラ「良いんですか? もう少し彼の醜態を見てからでなくて」
ハッピー「アハハ♪ もう見飽きちゃった〜♪ ボクもプエブロにさ〜んせい!」
サッド「ボクも……もう……いいや」
キャラ「おやおや、満場一致ですか。実は私も飽き飽きしていたところで。では、トドメを刺したい方挙手を」
プエブロ(悪)「おう」
ハッピー「ハーイ♪」
サッド「ボ、ボクも良いかな……?」
キャラ「おやおや全員ですか。じゃあ皆さん、いっせーのでいきましょうか」
ジェスター「ひっ、な、なんだ! 何をするつもりだ!! 私は、私はきゅッッッ!!!!!! あぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!」
キャラ「ふぅ、最後まで汚らしい方でしたね。では皆さん、騒ぎが起きる前にさっさと行きましょうか」
プエブロ(悪)「おう、次は何処行くよ、リーダー」
ハッピー「ボクお菓子が美味しいとこがいいなぁ〜。ここって王様がシッソケンジツとかいうの国民に押し付けててご飯美味しくなかったじゃ〜ん?」
プエブロ(善)「ここの王が心掛けていたのは質素倹約です。まぁ、食事に限らずですがあまりお金がかけられていなかったのは確かですね」
サッド「ボクも、美味しいご飯が食べたいな……もう冷や飯は……う、うぅ……」
キャラ「はいはい、もう泣かない。ではそうですね、南の方にでも行きましょうか。少なくとも、暖かいご飯は食べられるでしょう」
N:その後叫び声を聞いて駆け付けた衛兵によってジェスターの死体が発見される。しかしその死体は体中のあちこちが、とても人間の力では不可能としか思えない方向に捻じ曲げられており、衛兵達は困惑半分恐怖半分でおよそ正常な判断を下せる状態になかった。しかし、本来その場にいる筈のピエロ2名が忽然と姿を消した事からピエロ達の犯行と断定。キャラ・ピエロとプエブロ・ピエロは国家指名手配犯として挙げられる事となった。
間
ハッピー「ねぇねぇ、聞いた聞いた? キャラとプエブロこっかしめーてはいはんだって! なんか凄そうだね! ね!」
サッド「ボクじゃなくて良かった……」
プエブロ(悪)「おいおい、薄情だなサッド! つかオメーらさっさと準備しねぇとキャラにドヤされんぞ」
ハッピー「うぇ〜、キャラが本気で怒ると怖いからね〜。ボクもお仕事しま〜す」
サッド「はぁ……お仕事の時だけウォーカー出てきてくれないかな……」
N:南国のビーチ側に建てられたテント前に人だかりが出来ている。彼等が物珍しげに眺めるのは、一人のピエロ。
キャラ「さぁさぁ、皆様いらっしゃいませ! さぁさ、どうぞお早く! 今宵限りの我等クラウンズ・パーティの大サーカス、間も無く開演で御座います!!」
了