エルフの郷
◇◇◇◇
アリステル視点
「ほぅ、あれがエルフの国か」
沖合に停泊させたイージス艦の艦橋から見るエルフの国…国と言うより村だな。
海岸線から少ない浜辺があり、そこから急な深い森に変わっている。
その森の一部を切り開いた場所にエルフの国があった。
「先生、ドローン映像出ます」
艦橋モニターにドローンの空撮映像が映し出される。
「60人ほどの集落か」
空撮で見つけたエルフにマーキングを施していく。
サイレントモードで低空飛行に移る。
森の茂みの中から、偵察する。
「あ、お父さんだ!おーーい!!」
モニターに映った男に向かって手を振るエルフの少女。
そのエルフ少女のあどけない仕草に微笑みを浮かべるイージス艦の国王達。
少しするとモニターの中のエルフ達の動きが慌ただしくなる。
やっと俺たちに船に気がついたようだ。
イージス艦のこの世界の船とは思えない姿と
さらに洋上迷彩による効果で、海に浮かぶ巨大なゴミと認識されていたに違いない。
「カイン!とりあえず仲良しこよし作戦だ。浜に向かって微速前進!座礁に気をつけろ!」
操舵輪を握る王に向かって作戦を伝える。
「アイ、ショーティ!浜に向かって微速前進!!」
このカイン・ランバード15世はイージス艦を相当気に入ったようだ。
操舵輪を握ったまま離そうとしない。
「ネレイ。行くぞ」
ネレイと助けた3人のエルフの少女と共に上陸艇に乗り換える。
◇◇◇◇◇◇
エルフが待ち構える浜を目指し、上陸艇をゆっくりとそして堂々と進ませる。
森蔭や浜辺の岩陰から弓を構えるエルフ達の姿を確認する。
左腕をいつでもガトリングガンに変化できるようにナノマシンを集めておく。
もしエルフが威嚇攻撃してきたら、即武力制圧するつもりだ。
「パパ〜!!」
上陸艇の船首に座ったエルフの少女が手を振る。
それを見て、俺たちに向けていた弓を下すように命じるエルフパパ。
どうやら流血沙汰は回避できたようだ。
荒事を起こさずにスムーズに海岸に上陸する。
◇◇◇◇
「エルナ!!えがった!!…無事だったんだな!!」
助けたエルフの少女と抱き合う長身の美形エルフ
「うん、パパ!こちらのアリス様達が助けてくれました!!」
村長に道案内され、エルフ村に入る俺たち。
娘を助けたお礼をしたいと村に招待された。
さて…動物と自然を愛し、共に生きる者…エルフの生態をじっくり観察させて貰うとしよう。
エルフの村をじっくり観察……普通の村だった。
特に何もない。
木の上に住んでもいない。
普通に地面に家を建てて住んでいる。
それも石造りの立派な家だ。
ブヒィィ!!
「せーの!!」
ザシュ!!
巨大な牛刀で縛り上げたイノシシの頭を落とすエルフ少女。
エルフ少女の細くしなやかな体躯が返り血で真っ赤に染まる。
「人間のお嬢ちゃん!私の娘、助けてくれてあんがとな!今から美味い肉食わせてやっからよ!」
「やった!アリス様!!ママの焼肉美味しいんだよ!!」
なんだろう。このエルナママ…
見た目はたしかにエルフなんだが…アマゾネスぽい。
それより…
「エルフって動物食えるの?森の動物達は仲間じゃ?…」
俺の知っているエルフは肉食はダブーだし、森の動物達は仲間だったはず。
「え?動物が仲間?家畜だよ!お肉だよ!」
俺の質問にキョトンとするエルナ。
「それになんで木の上に家建てないの?」
このエルフの村は人間の村と変わらない。
普通の家ばかりだ。
「木の上に建てたら、出入り大変じゃない?」
何を当たり前の事を聞くの?って感じのエルナ。
どうやらこの世界のエルフは俺の知るエルフとは少し違うようだ。
「そんな事より、歓迎会の準備できたみたい!」
村観光もそこそこに、エルナに連れられて広場にやってくる。
村全体で俺たちを歓迎してくれるようだ。
広場には即席のテーブルが並べられていた。
先ほどのイノシシもある。
「普通に美味い…」
「美味しい!!」
舌の肥えたネレイも満足する味付けだ。
◇◇◇◇◇
「村長、この辺に変わった物ありませんか?」
美少女モードで尋ねる。
歓待を受けた俺たちは、その後、村長宅に泊まる事になった。
「んー、そうだべな…」
考える村長。
「ゴーレムの像とかどうだべ?」
エルフの美少女奥さんが代わりに答えてくれる。
下手すれば中学生ぐらいに見える幼妻なエルフ。
良いなぁ…10代の人妻…エルフの奴隷は高く売れるのも納得だ
「おー、浜のゴーレム像か!あれならきっとおもしれーべ!!」
次の日、エルナがその像の下に案内してくれる事になった。
◇◇◇◇◇
次の日。
エルフの村から小一時間ほど歩いた処にそれはあった…
「これ…牛◯大仏だろ!?」
映画「モンキーの惑星」のラストシーンにあった
NYの自由の女神像のように浜辺に埋まっている◯久大仏。
「凄い…なんて大きさなの!?」
ネレイが驚くのも無理はない。
全高120メートルの世界一大きい仏像としてギネスに登録されている。
「だっぺ」
腰に手をやり得意げな顔をするエルナ。
「だっぺ?」
言葉の意味が分からずキョトンするネレイ。
「この場合の[だっぺ]は[そうだろ]って意味だ」
ネレイに茨城弁を翻訳してやる。
生前、俺は研究のため何度か茨城に出向いていた
事もあり、多少の茨城弁を解読できる。
当時、生粋の茨城県民だった所長に…
「棒電気の炭くれ」
と言われた時は、何かの暗号かと思ったぐらい、言葉が通じなかった。
ちなみに棒電気の炭とは
棒電気の炭の事だ。
分かる訳がない。
しかし考えてみれば、確かにエルフ達は茨城弁を話していた。
そうなると…ここは日本の茨城なのか!?
俺はいきなり当たりを引いたようだ。
なぜならば、俺の日本研究支部は茨城の研究学園都市にあったからだ。
「アイ!ここ牛久大仏をランドマークとして日本地図と照らし合わせ谷田部テストコースを探せ」
谷田部テストコース…ここの地下でアリス・カーの開発研究が行われていたはずだ。
まずはそこを探索する。
[了解。検索完了。位置情報出します」
西に徒歩3時間の位置だ。
「エルナ。西の方に何かあったか?」
「そこはヤバイよ!マジつえーゴーレムがいっぱいいるよ!!」
ニヤリとする俺。
「行き先は決まったな」
「はい、先生」




