海戦
◇◇◇◇◇
アリステル視点
「海は広いなぁ大きいなぁ…」
潮風を頬に受け、蒼く綺麗な大海原を見つめる。
今、俺たちはランバード王国海軍将校達と共にイージス艦の操艦訓練をしている。
「凄い、凄いぞ!風向き関係なく進みたい方向に進んでるぞ!!」
意気揚々と操舵輪を握るのは最近、国王になったランバード15世だ。
ちなみに乗組員達には、俺のイージス艦運用方法などなどをインプットしたナノマシンを飲ませた
これにより、イージス艦の操艦方法などの知識が彼らの頭にインストールされる。
で、今はインストした知識を身体に馴染ませる為の慣熟訓練中と言う訳だ。
衛星からのGPS信号がないので全て目視操艦だが、問題はなさそうだ。
「アリステル殿!対艦ミサイルを撃ってもよろしいか?」
うっきうっきで尋ねてくる国王。
「おっけ!」
俺も間近でイージス艦のミサイル発射の瞬間を見たい。
シュポン!!
真上に向かって打ち上げられるミサイル。
その直後に向きを水平に変え、標的艦に向かってすっ飛んでいく。
着弾共に粉々に吹き飛ぶ標的艦!
解体間際の老朽艦とは言え大型の60門艦が一瞬で海の藻屑になる。
「4000億…国が傾きかねない金額だったがその価値はあった…」
ぽっつり呟くランバード王。
「たとえ国が消えても、この艦で他国を侵略して奪えば良いだけですなw」
ガハハと笑う海軍大将。
実際、この艦を買うためにかなり苦労した。
4000億円分の硬貨が俺のアイテム売買スキルで消してしまうと王国の経済が壊れてしまう。
なので、硬貨の代わりに王国中から金銀財宝美術品を掻き集めそれで買った。
山のように掻き集められた金銀財宝美術品をアイテム売買スキルに投入するのに半日以上かかってしまった。
これには流石の俺もかなり疲れた…。
そして王国の港で盛大に進水式を行い無事、洋上に出ることができた。
それから1週間ほど洋上訓練をし、いざエルフ国を目指す。
「うわぁぁぁぁ!」
初めての船旅に目を輝かせるネレイ。
「360度海ですよ!陸が見えません!!」
そういえば俺も船旅は初めてだな…
いつも飛行機を利用していたからな。
ふと気になりアイテム売買スキルを開く。
…あ!F-22やらF-35も売ってるじゃん。
こっちの方が安いし、コレ買った方が良かった…
この世界に来てすっかり飛行機と言う概念を忘れていたw
ま、いいか。あとで買おう。
ちなみにこの旅はネレイとそして帝国技術開発主任のネスティの二人が随伴している。
ドロシーにはアリス帝国の留守を任せてある。
アルフレア姫にはアリス帝国皇帝エターシャの補佐を頼んである。
◇◇◇◇
2日ほど航海し、ヒマを持て余し、ネレイとネスティと船室で3Pしていると国王から通信が入った。
<アリステル殿!右舷2000メートルに3隻の黒旗を揚げている海賊船を発見。迎撃許可を!!>
ランバード国王から無線通信が入る。
黒旗は、大人しく積荷を渡せば殺さないと言う意味らしい。
「回頭、敵海賊船に頭を向けろ」
<アイ、ショーティ>
イージス艦は回頭し海賊船と相対する
甲板に出る俺とネレイ。
ネスティは安全な戦闘ブリッジに行かせる。
「あ、赤旗あがりましたよ!」
ネレイからの報告。
戦闘意思をみせる俺たちに、黒旗を下ろし赤旗に変える海賊船。
赤旗は、交渉決裂皆殺しにする!と言う意味だと海軍将校に教えてもらった。
「敵船に向かって全速前進。2隻沈めろ。残り1隻は俺が貰う」
<アイ、ショーティ!>
俺も肉眼で海賊船を確認する。
「20門艦ですね」
ネレイも光学レンズ魔法で目視したようだ。
20門艦。約三十人で操艦する、大砲を左右に10門ずつ積んだ小型帆船だ
シュッ!シュッ!
2発の対艦ミサイルが打ち上げられる。
そして焔を吐きながら海賊船めがけて飛んでいく
木っ端微塵になり、跡形もなくなる2隻の海賊船。
一撃で木片に変わり果てた2隻の僚艦を見て慌て騒ぐ海賊達。
残った旗艦らしき海賊船の船上が慌ただしく人が走りまくり、帆の向きを変え逃走行為に入った。
「敵船の真後ろ30メートルに付け!」
<アイ、ショーティ!>
見事な操艦で海賊船の後ろに付けるランバード国王。
国王もかなりイージス艦の操船に慣れたようだ。
逃げ切れないと悟ったのか、海賊船が赤旗を下ろし白旗を挙げる。
「白旗だ!」
ネレイが歓声を上げる。
<白旗確認。どうしますか?>
降伏しやがった…
「赤旗挙げろ!」
<アイ、ショーティ!>
スルスルと電動で赤旗を揚げるイージス艦。
赤旗を見て絶望の表情を見せる海賊達の顔。
くくく、いいねぇ…その表情。
喧嘩を売る相手を間違えた事を理解したようだw
俺は竜殺しを取り出す。
「先生!私も乗り込みます!」
杖を構えるネレイ。
「いや、ネレイはここで海に逃げ込んだ海賊を殺れ。」
「はい!」
「イージス艦はこのまま、この距離を維持」
<アイ、ショーティ!>
「とぅ!」
俺は無反動で30メートルを飛び、海賊に乗り移る
◇◇◇◇◇
海賊船船長カーマセ・ドッグ視点
「お頭!!見た事もない船ぽいのがいますぜ!」
我が家でもある自慢の船バンディット号のキャビンで大酒を喰らっていると子分が駆け込んできた
「船っぽい?なんだそれ!」
船上に出て望遠鏡で、その船っぽい物を見てみる
「たしかに船っぽいな…」
そうとしか言えなかった。
その船っぽい物は帆を立てる柱すら無い。
ガレー船か?
いや、こんな海の只中に人力のガレー船がいる訳がない。
だが、かなり価値がありそうな船だ。
「お前ら!あの船を拿捕するぞ!!黒旗を揚げろ!!!」
「アイアイサー!!」
3隻の船が黒旗を揚げる。
「お頭、赤旗じゃなく黒旗でいいんですかい?」
「おうよ!俺は人道主義だからな!!」
ガハハと笑う。
「でも船を奪ったら…あいら捕虜にでもするですかい?」
「んな、面倒な事するかwカッターで海に放流よ!」
「そりゃ、結局皆殺しと変わらないですなw」
「こまけー事気にすんなw」
船団を組まず、大砲もなく、帆すら挙げていない大型船ぽい船…宝の予感がする!
「お頭!!あの船!変ですぜ!!帆も張っていないのに回頭していやすぜ!!」
「何!?」
確かに回頭している…噂に聞く魔法船か?
益々欲しくなった!!
「なんにしろ逃げ出すのは許せないな…赤旗に替えろ!」
「アイアイサー!!」
「大砲は使うじゃねーぞ!乗り込んであの船を奪うんだ!!」
よく見ればなかなかイカす船だ。拿捕したら俺の乗艦にしても良いな。
「敵船!こちらに向かってきます!」
逃げずに3隻相手にやる気か!?面白い!!!
「ん?」
光が飛んできた!!!
ズドォォォン!!ズドォォォン!!!
そう思った瞬間!両舷の船が爆発し、粉々に吹き飛び、消えた!!!
「な!!!????こ、この攻撃はあの船の大砲か!!??」
「おおおおおお頭ヤバイですぜ!!」
「ににに、逃げろ!!」
全力で帆の向きを変える。
「追ってきます!!は、速い!!」
なんで風下から真っ直ぐ向かって来れる!?
真後ろ30メートルに付けられる!
「し、白旗!白旗だ!!!!し、死にたくねぇよぉぉ!!」
俺は初めて白旗を挙げる…しかし…敵船は赤旗を揚げた…
「おおお頭!!赤、赤旗です!!」
自分で散々、赤旗を揚げ大勢の人間を殺してきたが…自分に向けられた赤旗がこんなに絶望を与えるなんて…
思わず小便を漏らす。
そこへ!
「とぅ!」
スタッと水色のドレスを着た少女が、くるくる回転しながら甲板に飛び込んできた。
あまりに場違いな女の子の登場に、俺は気が狂って幻覚でも見ているかと思った。
「俺はアリス。キャプテン・アリス!!今からお前ら全員皆殺しだ」
ドカンッ!
甲板に巨大な両手剣を突き立てる少女。
その勢いで甲板に大穴が空き、船内に落ちる少女
「や、野郎ども!白兵戦の準備だ!!あの女を生きたまま捕えろ!!」
なんであんな子供一人で乗り込んできたのか分からんが、身なりからしてかなり高貴な身分だろう
生きたまま捕らえて人質にして逃げるなり、降伏させるべきだろう
「捕まえた奴は、あの女を犯してもいいぞ!!」
「おおおお!!」
死の恐怖で怯えていた子分どもが、その声で奮起する。
カットラスを抜き、我先に船内に飛び込んでいく子分ども。
「うおおおおおお!!!」
「犯せ!!犯せ!!!」
船内から響く子分どもの雄叫び。
……………
数分後、飛び込んでいった30人いた子分達の声が聞こえなくなった。
ギィィ…船内に続く扉がゆっくり開く…
出てきたのは血で真っ赤に染まった少女だった。
「くくく…お前が船長だな?」
凄惨な笑みを浮かべる血塗れの少女。
その手には真っ赤に染まった巨大な…巨大すぎる両手剣が握られている。
たった一人で三十人の海の荒くれ者達を殺したのか?
俺は震える手でカットラスを抜く。
「う、う、うおおおおおお!!!」
少女に向かって駆け出し、頭めがけてカットラスを振り落とす。
ぺしっ
そのカットラスを軽く手のひらで払われてしまう
俺はバランスを崩し無様に甲板に倒れこむ。
少女は倒れた俺の左の脛を踏み…
バキッ!
「ギャァァァァ!!」
簡単に折れる俺の左足。
「なぁ、船長?海賊ならアジトに財宝隠してるんだろ?」
俺は助かりたい一心で必死に頷く。
「どのくらいあるんだ?」
「い、い1000金貨ぐらいは、あ、ああります」
「1000金貨か…まぁいいだろう。アジトに案内しな」
「は、はいいい!だ、だから命、命だけはた、たた助けて」
「ちゃんと1000金貨あったら助けてやるよ」
「ひぎっ!」
俺は、むんずと髪を掴まれ、そのまま大ジャンプで少女の船に連れ込まれた。




