アリス帝国建国!
◇◇◇◇◇
帝国皇帝ラインハルト視点
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
ベッドから転げ落ちる。
「へ、陛下!!どうなされました!!」
隣室から飛び込んでくるメイド。
手にナイフを持ち、歪めた笑顔を浮かべたアリステルが私の胸にナイフを突き立てる。
毎晩のように見る夢だ。
「だ、大丈夫だ…下がれ」
「は、はい…」
アリステルの調査に向かった我が娘エターシャと技術開発局長のネスティを含む護衛騎士団が行方不明になって1ヶ月。
エターシャのワイバーンを呼び出しの魔力通信を最後に音信不通だ。
当然、捜索隊を派遣したが姫の死体はもちろんワイバーンの死骸すらも発見されなかった。
ただ焼け焦げた大地があった。
せめてそこにアリステルの焼死体でもそこにあれば、私は胸をなでおろす事が出来たであろう。
しかし…
帝国調査部はエターシャ姫達はアリステルの手に落ちたと結論を出していた。
◇◇◇◇
今日も朝からアリステル対策会議だ。
しかし意見は堂々巡りで時間だけが過ぎる。
…こうなってしまっては、ドワーフ王国に向かったサリュースがアリステルに匹敵する古代魔導人形を発見発掘する事に期待するしかないのか?
私は頭を抱える…
「伝令ー!!」
会議室に飛び込んでくる兵士。
「エターシャ姫とワイバーンが帰還しました!!」
「な、なんだと!?」
「姫はどこに?」
「ハッ、中庭でございます」
私はバルコニーに飛び出す。
バルコニーから見下ろしたワイバーンの背にはエターシャと他に三人の少女が座っていた。
「ア、ア、ア、ア…アリス…テル」
「よっ!」
エターシャの背後で手を上げるアリステル
そして、ワイバーンの背中から飛び上がり、私の前に着地すると…
「この国くれ!」
とアリステルは言った。
◇◇◇◇◇
アリステル視点
眼前に広がる帝国王城。
その中庭にワイバーンを着地させるようエターシャに指示を出す。
「ドロシー、聖なる教会だ」
「はいな!」
中庭に降り立った俺たちを取り囲む帝国騎士団…200騎か。
「ネレイ、エターシャが妙な動きを見せたら半殺しにしろ」
「はい、先生」
エターシャの背中に杖を押し付けるネレイ。
「あと、騎士達は出来るだけ殺すな。いずれ俺の部下になる奴らだからな」
頷くネレイとドロシー
「ア、ア、ア、ア…アリス…テル」
その声に上を向く。
そこにはバルコニーから俺を見下ろすラインハルト閣下がいた。
「よっ!」
軽く挨拶をしておく。
俺はワイバーンの背中からジャンプし、ラインハルト閣下の前に着地する。
そして驚愕の表情を見せるラインハルトに…
「この国くれ!」
とお願いする。
「アイツを殺せ!!」
ラインハルトの叫び声に反応し飛び出してくる騎士達。
「おおお!!」
バスターソードで斬りかかってくる騎士。
バコッ!!
バケツヘルムの上から顔面を軽く小突く
ドサッと崩れ落ちる騎士。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
悲鳴をあげ気絶するメイド。
「す、素手で…」
「死にたい奴から前に出な」
俺は騎士達を挑発する。
「囲め!」
三人の騎士が俺の前と左右に立つ。
さらに騎士団がどんどん集まってくる。
「殺せ!殺した者には褒美をだすぞ!!」
腰を抜かしたまま叫ぶラインハルト。
「うおおおー!!」
四方から剣を振り落としてくる騎士達。
「ほいっ」
ガキンッ
その剣を頭の上でクロスした両腕で受け止める。
「こ、この化け物め!!」
剣が通じない事に狼狽する騎士達。
「サンダースピア!!」
バリバリバリッッッッ!!
むっちり色っぽい女魔法使いの放った電撃系ぽい魔法が俺に直撃する。
[ヒートシンクが静電気で逆立ちました]
アイが被害状況を報告する。
「おいおい、ヘアースタイルが乱れたじゃねーか…どうしてくれる?」
手櫛でセットし直すが…縦ロールになっちまった。
あとでネレイに直してもらおう。
シュゥゥ…
あたりに焼けた肉の臭いが漂う。
「フレンドリーファイアしてるじゃねーか…可哀想に…」
俺を囲んでいた騎士達が女魔法使いの放った魔法のとばっちりを受け、鎧の中でローストポークになっていた。
「どどどど、どうして貴女は平気なの!?直撃したのに!!」
ガッ!
女魔法使いの綺麗な顔にアイアンクローを噛ます。
「痛い!!痛い!!や、やめて!!」
メキメキメキ…
俺の指が女魔法使いの顔にめり込み始める。
「ギャァァァァ!!!!」
グチャ…
顎から上が無くなる女魔法使い。
「ひっ!ひぃぃぃ!!」
女魔法使いの死に様を見て、腰が抜けたのか絨毯の上を這いずり逃げ出すラインハルト皇帝。
その皇帝の立派な腰抜けぷりが俺の笑いを誘う。
「誰か!!誰か!!!であえ!!」
その皇帝の後をゆっくり追う。
◇◇◇◇◇◇
帝国皇帝ラインハルト視点
「誰かいないのか!!俺を助けろ!!」
足に力が入らない。立とうとしてもヒザが崩れる。
俺は必死にアリステルから逃げる。
な、中庭にエターシャのワイバーンがいたはず。
そのワイバーンでなら逃げる事ができる。
中庭に出ると…
「な、なんなんだ…これは…」
200近い騎士達が倒れていた。
その中心にエターシャとワイバーンがいた!
「エ、エターシャ!!早く俺を連れて飛び立て!!」
エターシャの足元まで這い寄る。
「お、お父様…申し訳ありません…」
レイピアを抜くエターシャ。
「エターシャ…まさか…俺を斬る…のか?」
「私の忠誠心をアリス様に見せる為にも必要な事なんです…」
◇◇◇◇
アリステルの奴隷エターシャ視点
「お父様…もう少し…私を見てくれていたら…こんな事はしなかった…と思います…」
父にとって私は政略結婚の為の道具に過ぎなかった。
それが嫌でワイバーン騎士になった。
ワイバーン騎士となり武勲を挙げ続ければ、ただの道具ではなく、父の娘として愛してくれると思っていた。
結局は政略結婚の道具から戦争の道具に変わっただけだった。
でも…アリス様は私を愛してくれた。
毎晩のように私を天国に連れて行ってくれた。
もうアリス様から頂ける快楽をなくして生きてはいけない身体になってしまった。
「だから!死んで!!」
父の眉間に向かってレイピアを突き立てる。
「そこまでです」
「あうっ!!」
ネレイ様から停止の信号が脳に送りつけられる。
「先生、エターシャ皇帝陛下はたしかに父ラインハルトを殺害しようとしました。」
「あぁ、見てたぜ!合格だエターシャ皇帝陛下」
いつのまにか現れたアリス様。
「アリス様…私を認めてくださるのですね!」
「完璧だ。今夜もたっぷり可愛がってやるからな」
「ありがとうございます!アリス様」
アリス様は私を認めてくれる。
愛してくれる。
この人の為なら私はなんでもする。
「先生…私も可愛がって欲しい…」
「もちろんだととも」
◇◇◇◇◇
次の日…
私はアリス帝国初代皇帝エターシャとなり、
前アマチアス帝国皇帝ラインハルトは国外追放となった。
「なんで処刑せず追放したかって?」
私はアリス様に父を処刑しないのか理由を聞いた。
「殺したらそれまでだろ?ラインハルトには生きて反乱軍とか率いて俺を楽しませて貰いたいんだ」
あぁそうでした。
アリス様は平穏より波乱を求める方でした。
そしてアリス帝国建国から数時間後…アリス帝国は内部分裂した
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