倒れるアリス
王国第三王女アルフレア視点
「えーーと、アリス様が誰を誘拐したんです?」
最近、色々疲れていたから聞き間違えたのだろう。
「いいえ!!アリステル様が誘拐されました!!」
どうやら数人の冒険者が誘拐される瞬間を目撃したらしい。
要約するとアリス様は女商人と言い合いのすえ、男が手に持っていた何かを背中に貼られそのまま倒れたそうだ。
それから倒れたアリス様を女主人ともう一人の女の子を含めた7人がかりでようやく担ぎ上げ馬車で立ち去ったとの事。
「なぜその冒険者達は誘拐犯の愚行を止めなかったのです?」
「アリス様は助ける必要はないと思ったのと事です」
「そう…なら仕方がないわね」
「現在カイエン将軍の下、アリス災害派遣部隊を編成しております」
これはアリス様が騒ぎを起こした際、周りに及ぶ被害を最小限に抑える為に編成された部隊だ。
「誘拐犯の目的は分かりますか?」
「その犯人達はファーラスト国からきた商人でアリス様に何か用があったようです。」
「ファーラスト国!?」
ファーラスト国は聖女が治める女神信仰の教国だ。
我が王国とは穏やかな関係を保っている。
もし、ファーラスト国がアリス様に用があるなら公式に面会を求めれば良いだけだ。
誘拐する必要など全くない。
とするとこれはファーラストは関係なく、商人が勝手にやった事だろう。
「ふむ…とりあえずネレイさんを呼び戻してください」
ネレイさんとアリス様は不思議な通信ができる。
アリス様の居場所はそれで分かる。
「誘拐犯が王国を出るまでは静観を」
おそらくアリス様はわざと誘拐されたに違いない。
下手に行動を起こして王国内でアリス様が暴れ出したら尋常じゃない被害を及ぼすだろう。
騒ぎは王国の外でして欲しい。
◇◇◇◇
アリステル視点。
「あぁ、どうぞ」
行きつけの大衆食堂で飯を食っていると、向かいの席に二人の女性が座った。
ふむ。身なりからすると何処かのご令嬢とその付き人といった感じの二人組だ。
[先日のワイバーン騎士の可能性率98%]
アイがARで先日のワイバーン戦のスチール写真を表示する。
拡大処理されたワイバーン騎士の顔が表示される
たしかに似ているな。
そう言えば、帝国の円卓会議室で隣にいた女じゃん。
ならばカマをかけてみるか。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんはお姫様なの?」
二人の会話の感じから、この少女は頭が軽そうだ。
突っつけばボロを出すだろう。
「えぇ、私は帝
ガンッ!!
突然、椅子を蹴られる少女。
速攻でボロを出した…
その様子からしてワイバーン騎士で間違いないだろう
あれほど俺が脅したと言うのに、こんなに堂々と王国に来るとは…少し興味が湧いた。
話を聞くと俺に会いにきたと言う事だ。
なかなか面白い二人組だ。
話を聞いても良いだろう。
俺は正体を明かす事にした…しかし。
面白い事に信じてもらえなかったw
気に入ったぞ。このコンビw
少しこのアリステル様の性能を見せてやろう。
◇◇◇◇◇
裏路地に入る。
俺の正面に立つ二人の女性。
俺の前後左右に位置どりする傭兵4人。
「くくくっ」
俺はアイテムボックスからドラゴン殺しを取り出す。
「どれ、かかってこい。俺がアリステルだとその身体に証明してやるぜ」
巨大なドラゴン殺しを振り回し旋風を巻き起こす。
その風圧に怖気付く女性二人。
4人の傭兵も俺の間合いに入る勇気はないらしい。
◇◇◇◇◇
帝国技術開発局局長ネスティ視点
「ま、まさか…本物?」
資料にもあったドラゴン殺しを振り回すアリステル。
320kgの両手剣をあの小さな身体で、小枝のように振り回している!
「いやいやいや、ありえないから!」
もしアレが本当に320kgあるなら、それを振り回すアリステルは人間ではなく、古代魔導人形だと言う事になる。
こんな人間そっくりな魔導人形がある訳がない。
「そんなに言うなら持ってみろよ」
ずしっと両手剣の先端を地面に突き刺す。
ゆっくりその両手剣に近づき、柄を握る。
握っただけで分かった。
この両手剣…密度といい質量といいともに半端ない!
と言うか、この子…本当に古代魔導人形なの?
私はアリステルの背後にいる騎士団隊長に視線を送る。
頷く隊長。
抜刀する4人の騎士。
ゆっくり両手剣を肩に担ぐアリステル。
「さぁ、かかってこいよ!」
私達を挑発するアリステル。
(いまだ!!)
非武装の下男姿の騎士がアリステルの背中に魔封じの札を貼る。
私の予想通り、古代魔導人形は非武装の人間を警戒していなかった
「あっ!」
驚きの声を上げるアリステル。
そして…ゆっくり膝から崩れ落ち地面に倒れた。
流石に古代魔導人形と言えど魔力を封じられてしまえば、ただの人形と変わらない。
「研究室に戻って解体するよ!!」
私はアリステルを抱き上げる。
グキッ!
「ぐふっ!!」
アリステルのあまりの重さに腰をイワス!
なにやってんるだ?
て、目で私をみる騎士達。
「アリステルを馬車に…」
涙目でそれだけを伝えるが…騎士の中でも選りすぐりの精兵である騎士団5人がかりでも担ぎあげられないアリステルの重さ!!
「だ、ダメだ!!持ち上がらない!!」
悲鳴を上げる騎士団長。
腰の痛みに堪えながら私もアリステルの片足を持つ。
「エ、エターシャ姫…申し訳…ありませんが…お力を…」
え!?姫の私に力仕事頼む?
て顔をする姫にお願いする。
「うぎぎ!」
ワイバーンに騎乗する為にそれなりに力があるエターシャ姫も加わってようやくアリステルを馬車に放り込めた。
「あの剣は…?」
「回収しよう…」
アダマンタイトとオリハルコンの混合素材であるアリステルの両手剣は研究価値がある。
5人の騎士がやっとの思いで両手剣を馬車の荷台に乗る。
腰の激痛に堪えながら馬車に乗るが…クソ重いアリステルと両手剣を乗せた上、さらに私達が乗ると流石に一頭引きの馬車では引けなかった。
「結局もう一頭、馬を買うまで、私は痛む腰に耐えながら歩くしかなかった。
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