王都潜入
アリステルを探るため王都にきた帝国第六皇女達。
◇◇◇◇◇◇◇
帝国技術開発局局長ネスティ視点
「ふーーむぅ…なるほどな」
王国に潜り込んでいる我が帝国のスパイから渡されたアリステルの新たな情報を記された報告書を読む。
ここはランバード王国の最上級宿の一室だ。
そこを拠点としてアリステルの動向を調べている。
その報告書の中に、気になる記述が一つあった。
アリステルの弟子の一人、ネレイが神学校を休学する際、アリステルとそこの生徒の間で一悶着あったらしい。
「なんて書かれてましたか?」
姫が報告書を覗き込んでくる。
「神学生徒とアリステルの間で一悶着があったらしいですね。その生徒と話しがしたいが…姫、その生徒に会わせてもらえませんか?」
「分かりました。手配しましょう」
エターシャ姫が背後に控えるスパイに視線を送る。
スパイは頷き部屋から退出していった。
次の日。
椅子に縛り付けられ顔面をボコボコに腫らした少年が私の前にいる。
「手荒な事をしてすまなかったね?なにせ、私達は非合法な活動している身分でね」
ガタガタ震える生徒。
確かモーブと言う名だったかな?
貴族の息子さんだったから、話をする為に多少強引な方法を取るしかなくこんな誘拐するような感じになってしまった。
「安心したまえ、二、三質問するだけだ。それがすれば無事家に帰そう」
頷くモーブ。
私は彼の猿轡をとる。
「君はアリステルとケンカしたね?」
「し、知らなかったんだ!あの人がアリステル様だって後で知ったんだ!!」
まだその時はアリステルは無名の冒険者だった。
知らなくて当然だろう。
「あぁ、別にアリステルに危害を加えた事を責めているんじゃないよ?君はアリステルの髪を掴んだ。間違いないね?」
頷くモーブ。
「その時、アリステルは無警戒だったか?」
「た、多分…」
「君が髪を掴かもうとする事に、アリステルは気がついている様子はなかったかね?」
「ふ、ふつうに掴めました」
「ふむ…」
3000の魔獣を一人で倒し、100人の帝国兵を怪我をさせずに気絶させる達人がこんな素人に髪を掴ませるだろうか?
私の推測では、おそらくアリステルは素手の人間には無警戒だ。
だからこんなヒョロガキに髪を掴まれる失態を犯した可能性がある。
「ありがとう。参考になったよ」
ホッとしたのか安心した表情を見せるモーブ。
ザシュッ!
次の瞬間、スパイの手によってモーブの頸椎に刺突ナイフが突き立てられ絶命する。
「死体はハウンドウルフに」
姫の支持に頷き、モーブの遺体をトランクに詰め去っていくスパイ。
「何か分かりましたか?」
「えぇ、実証しないと分かりませんが、おそらく古代魔導人形は武器を持たない人間には警戒を払わないようです」
「実証する為にもアリステル本人を探さないといけませんね」
「まぁ、観光ついでにアリステルを探してみましょう」
かなり特徴的な容姿を持つアリステルだ。
王都に居るなら簡単に見つかるだろう。
…そう思っていた時がありました…
◇◇◇◇◇
帝国第六皇女エターシャ視点
「な、なんですの?これは?」
開発局局長のネスティと傭兵の姿にやつした騎士5人を連れ、アリステルを探しつつ王都観光に出た私の目に映った物は…
アリステルだらけだった。
あっちにもアリステル。こっちにもアリステル。
どこもかしこも、ウサ耳にエプロンドレスを着た女の子ばかりで溢れていた。
「姫、どうやらアリステルは王国の人気者らしく少年少女達がごぞってアリステルのマネをしているようです」
髪の色が違う者や性別が違う者も居るが…似ている者も大勢いる。
まぁ、第三王女の食客のアリステルがこんな庶民の街に出向く事はないだろうが…
「本物アリステルならアダマンタイトの両手剣を背負っているはずです。それを目印にして探しましょう」
服装は真似できても本物の両手剣を背負った子供はいない。
「これがアリステルの両手剣…」
私達は職人街にある観光スポットの一つ、アリスの剣広場に来ている。
希少金属のアダマンタイト鋼でできた両手剣を一度見てみたいとおもったからだ。
広場の中央に祭壇に飾られた折れた両手剣が二本があった。
「ほ、本物のアダマンタイト鋼だ…」
両手剣の材質に驚くネスティ。
「しかも…かなりの力で圧縮されてる!一体どうやって…あぁ、カケラ欲しいな…」
こんな人目のある所で盗みを働かれては困る。
「ネ、ネスティ…そろそろお昼にしましょう」
私はネスティの手を引き、広場を離れた。
◇◇◇◇◇
アリステル視点
「アリス様、モーブと言う神学生徒を知っていますか?」
離宮でマンガを読んでいると姫がそう尋ねてきた。
「モーブ?知らん」
脳内のデータベースを検索するがヒットしない。
「では、この件は無関係ですね。」
女官とやりとりをする姫。
「なんかあった?」
トラブルの予感にテンションが少し上がる。
「最近、国内にスパイがかなり潜り込んできてまして…」
「あらあら、大変だ」
ジト目で俺を見るアルフレア姫。
「捕らえたスパイは皆、アリス様を調査するよう言われてきたらしいですよ」
「さすが、俺!人気者は辛いなw」
ここ最近の俺の人気はかなり高い。
伝説級の活躍をし、さらにこの美貌!!
人気者にならない訳がない。
たまに俺のファンを名乗る女性を食ったりもしている。
今日も街に出かけてファンの女の子たちと戯れるのも悪くない。
「姫、外で飯食ってくる」
「私はスパイの案件で王と話してきます」
そっか…ネレイとドロシーは魔法省に行ったきりだし、サラは王城の厨房に篭ったままだ。
たまには街中を一人でぶらぶらするか。
読みかけのマンガをアイテムボックスに仕舞い、両手剣を取り出す。
…街をブラつくだけなら両手剣は出さなくていいか。
背中に担ぎかけた両手剣をアイテムボックスに戻すと、穏やかな昼下がりの中、俺は街に繰り出した。
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