特訓
アリステルの秘密を探る帝国技術開発局局長ネスティは王国を目指す。
その頃、アリステルは姫に心眼を伝授していた。
◇◇◇◇◇
帝国技術開発局長ネスティ視点
「くっ…計算外だったな…」
今、私はガタガタ揺れる馬車に乗っている。
「仕方ありません。ヴァリスは今療養中ですので」
エターシャ姫を同行者に選んだのは、ひとえにエターシャ姫のワイバーンで王国まで送って貰うためだった
だが、そのワイバーンは先日のアリステルの襲撃で翼を痛めたそうだ。
全く、使えない姫だ!
ランバード王国まで馬車で約一週間。
「姫、そろそろ野営の準備に入ります」
馬車の手綱を握る姫の近衛兵が告げる。
あ、ちなみに馬車は帝室用の豪華絢爛な馬車ではなく、豪商が使う比較的立派な馬車を使っている。
護衛の騎士達も一般的な傭兵装備だ。
これはアリステルを無用に刺激しないように配慮した結果だ。
私としては、アリステルに帝国兵をぶつけて、その戦いを見たいところだが。
「ぶつけるも何も…アリステルの攻撃範囲は2000メートルですよ。接近する前に此方が一方に殺させれてしまうわ」
S級の魔法使いでも500メートルが限界
しかも500メートル先から撃たれた魔法など、見てから余裕で回避できる。
しかし、アリステルともう一人の正体不明の魔法使いらしい少女が放った魔法は2000メートルの距離を目視不可能なスピードで飛んできたらしい。
これを躱せるのはワイバーンに乗った姫ぐらいだろう
あーーワクワクするーーー!!!
アリステル…どんな魔導人形なんだろう。
分解して隅々までまで視姦したい!!
◇◇◇◇◇
アルフレア姫視点
「えっ?ちょ?」
アリス様に連れられ訓練所まで来た私は目隠しをつけられた。
目が見えず、あたりを探る手に私の愛銃p9が渡される。
見えないにも関わらず、無意識にカートリッジを取り出し、弾が込められているか確認してしまう。
重さで15発装填されていると分かる。
「標的は用意した」
アリス様が耳元でで囁く。
「や、やめろ!!た、助けてくれ!!!」
聞きなれない男の人の声。
「安心しろ。あいつは帝国のスパイだ。気にせず射殺していいぞ」
アリス様がそう言うなら遠慮なく…
パンッ!
声の方に向かって引き金を引く。
「ふひゅ!」
吹けない口笛を吹くアリス様。
「ナイス、ヘッドショット!」
感覚で撃ったが、狙った所に命中したようだ。
「レイチェル!次の標的だ」
「こほっ!や、やめてください!!わ、私は脅されて仕方なく毒を盛っただけなんです!!」
この声は聞き覚えがある。
私付きのメイドの一人だ。
「あいつは金で姫さんを帝国に売った」
「なら、殺してもいいですね」
私はp9を構える。
「………」
目隠しされている私を見て、声を噛み殺すメイド。
声さえ出さなければ当たらないと思ったに違いない。
目を見開き、恐怖の眼差しで私を見ている事を感じる。
パンッ!
「あぐっ!!」
「惜しい!致命傷じゃない」
「ぐっ、ふぅっ!うっ」
悲鳴を上げないように歯をくいしばるメイド。
「どうだ姫?標的を感じられるか?」
「もう少し声を上げてくれれば…」
だいたいの方向が分かるだけで距離が分からない。
「そこを心眼でなんとか?」
「シンガン?てなんです?」
聞いたことがない単語だ。
「うーーん…アレだ。心の目で見るってやつ?」
「心に目はありませんよ?」
返答に困った様子のアリス様。
「センセ、こっちの世界にアニメのようなファンタジーはありませんよ?」
ネレイさんの声。
「いやいや、俺にとったらこっちの世界はアニメでファンタジーな世界なんだが…」
困り声なアリス様。
「こ〜なんて言うか〜額にある目で見る感じと言うか〜」
「三つ目の巨人…サイクロプスのようにですか?」
「ヒィィイィィ!!!」
撃たれた痛みと恐怖に耐えかねたのか、ついに悲鳴を上げてしまうメイド。
パンッ!
メイドの悲鳴が止まる。
「場所が分かれば百発百中か」
私は目隠しをとる。
うーーん、見覚えがあるようなないような体つきのメイドが30メートル先の柱に縛り付けられていた。
(顔は吹き飛んでいて誰だか判別がつかなかった)
◇◇◇◇
アリステル視点
「どう?姫さん?なんかこう…頭の中で種が割れたような感覚とかない?」
20人ほどの犯罪者や姫の政敵を標的にした訓練。
おそらくワイバーンの騎士は、敵対者の殺意を感じとって攻撃を避けている。
ならば、目をつぶってここかな〜的な感じで引き金を絞れば殺意は出ないはずだと思い、こんな訓練を姫にしてみたのだか…
「種?なんの種です?」
ダメだ。とあるアニメでは種が割れれば能力に開花したんだが…そう上手くいくものではなかった。
「いや、違う方法を考えよう…ネレイ、サラ!標的を焼却処分しておいてくれ」
「「はいセンセ!師匠!」」
「「ファイアーストーム!!」」
二人がかりのファイアストームがあたりを火の海に包む。
モルモットを無駄にしてしまったが仕方がない。
「気分転換にギルドで飯でも食おうぜ!」
こうして俺たちは少し遅い昼飯を食べる事になった。
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